■事業環境
2022年3月期はコロナ禍の影響を受けて引き続き厳しい状況ながら、原料穀物相場の高騰が最大の課題となった。
昭和産業 (TYO:2004)においては、過去をさかのぼっても食用油の年4回の価格改定はほとんど例がないと言う。
為替は円安で推移しており、海上運賃も高止まりしている状況だ。
海外物流問題による懸念や原油高の高騰も重荷となっている。
直近では、菜種の油分低下によるコスト増も重荷となっている。
「業務用小麦粉」は2021年6月と12月、2022年6月と合わせて3回の価格改定を実施した。
「家庭用小麦粉・プレミックス・パスタ」は2021年7月と2022年1月、7~8月の3回である。
「家庭用/業務用油脂製品」については、2021年3月、6月、8月、11月、2022年3月と5度にわたる価格改定を実施してきたが、2022年7月には6度目の価格改定を実施する予定である。
そのほか、「業務用大豆たん白」は2021年7月と2022年の4月、「業務用コーンスターチ・糖化製品」は2021年4月と9月、2022年4月に実施し、2022年7月にも価格改定を行うなど、全事業において価格改定を実施している。
なお、原料価格は世界的に旺盛な需要による需給のひっ迫等により急騰し、依然として高値で推移している。
特に菜種は史上最高値を更新しており、原料価格アップと価格改定のタイムラグとのギャップの影響が残っている。
現段階においても急激な原料相場の上昇分を全てカバーするには至っていない状況である。
そのため、引き続き適正価格での販売向けた価格改定が行われることになるだろう。
また、ロシアが世界最大の肥料輸出国であることから、肥料価格が高騰した。
21/22年産の米国大豆は、過去10年間で16/17年産に続く2番目に高い平均単収(ある一定面積当たりの収量)と最高となる生産高が示された。
しかし、在庫の減少を補いきれず、前年からはやや需給の引き締まる見通しとなった。
なお、21/22年産の期初在庫数は20/21年産に比べて半減した。
菜種については、輸出国・輸出シェアで6割近くを占めるカナダの穀倉地帯は、記録的な熱波に見舞われ乾燥した状態が続いた。
結果として、カナダの菜種は前期から35%減と大幅減産となった。
価格高騰によるレーショニング(値段が高いため需要が減退)が見られたものの、需給は極度にひっ迫した状況に陥った。
これにより菜種相場は、2008年につけた史上最高値を13年ぶりに更新した。
同社は、多様化の観点から仕入先を豪州にもシフトするなど、仕入先の拡大を進めている。
トウモロコシの需要を見るうえで、エタノールの動向も重要となる。
エタノールの生産動向は高止まりしており、米国政府がガソリン価格抑制のため、「E15」(エタノール15%の混合ガソリン、もともと混合率は10%までに制限されていた)の夏場販売を解禁したことから、エタノール需要は引き続き堅調に推移すると見られている。
世界的に供給不安が高まるなか、米国の新規供給に対して注目が集まるところだ。
また、肥料を使わない作物への作付けシフトが顕著になっているようであり、北米ではトウモロコシから大豆へ、菜種から小麦への作付けのシフトが進んでいると言われている。
輸入小麦の政府売り渡し価格の推移では、主要5銘柄加重平均で2021年10月には19.0%、2022年4月には17.3%と大幅な麦価引き上げが続いた。
しかし、現在の小麦相場を考慮すると、2022年10月の麦価改訂もさらに大幅な引き上げになると同社では予想している。
ロシアとウクライナは小麦輸出国だが、ロシアによる海上封鎖でウクライナは小麦の輸出が滞っている。
足下の小麦価格の高騰と円安基調が続くようだと、2022年10月の価格改定時に4割以上の値上げの可能性が高いと見られる。
海上運賃高騰の影響も重荷となる。
海上運賃市況は、コロナ禍からの経済回復で荷動きが活発化するなか、ロシア・ウクライナ情勢の影響を受けて資源や食料供給ルートが代替地域に移り、輸送距離が長くなっていることが挙げられる。
また、欧州やインド等がエネルギー資源を求めて石炭輸入を急増させていることも海上運賃の高騰に繋がっている。
加えて、EUによるロシア産原油の輸入停止措置やOPECプラスによる大幅増産の見送りなどで高止まりする原油価格も、燃料となるバンカーオイルの高騰に拍車をかけている。
なお、OPECプラスは2022年7月、8月の増産幅をそれぞれ日量64万8千バレルとすることを同年6月に合意した。
ただし、ロシアのウクライナ侵攻による制裁で落ち込んだロシアの生産減を補うには十分ではないと見られており、原油先物相場は依然として高い価格で推移している。
このようにロシア・ウクライナ情勢に起因して、原料穀物相場や海上運賃市況などは非常に混乱した状況だ。
また、米国における新穀の生育もまだまだ不透明な状況にある。
このため、先々の原料価格を見通すことが非常に困難な状況となっている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
2022年3月期はコロナ禍の影響を受けて引き続き厳しい状況ながら、原料穀物相場の高騰が最大の課題となった。
昭和産業 (TYO:2004)においては、過去をさかのぼっても食用油の年4回の価格改定はほとんど例がないと言う。
為替は円安で推移しており、海上運賃も高止まりしている状況だ。
海外物流問題による懸念や原油高の高騰も重荷となっている。
直近では、菜種の油分低下によるコスト増も重荷となっている。
「業務用小麦粉」は2021年6月と12月、2022年6月と合わせて3回の価格改定を実施した。
「家庭用小麦粉・プレミックス・パスタ」は2021年7月と2022年1月、7~8月の3回である。
「家庭用/業務用油脂製品」については、2021年3月、6月、8月、11月、2022年3月と5度にわたる価格改定を実施してきたが、2022年7月には6度目の価格改定を実施する予定である。
そのほか、「業務用大豆たん白」は2021年7月と2022年の4月、「業務用コーンスターチ・糖化製品」は2021年4月と9月、2022年4月に実施し、2022年7月にも価格改定を行うなど、全事業において価格改定を実施している。
なお、原料価格は世界的に旺盛な需要による需給のひっ迫等により急騰し、依然として高値で推移している。
特に菜種は史上最高値を更新しており、原料価格アップと価格改定のタイムラグとのギャップの影響が残っている。
現段階においても急激な原料相場の上昇分を全てカバーするには至っていない状況である。
そのため、引き続き適正価格での販売向けた価格改定が行われることになるだろう。
また、ロシアが世界最大の肥料輸出国であることから、肥料価格が高騰した。
21/22年産の米国大豆は、過去10年間で16/17年産に続く2番目に高い平均単収(ある一定面積当たりの収量)と最高となる生産高が示された。
しかし、在庫の減少を補いきれず、前年からはやや需給の引き締まる見通しとなった。
なお、21/22年産の期初在庫数は20/21年産に比べて半減した。
菜種については、輸出国・輸出シェアで6割近くを占めるカナダの穀倉地帯は、記録的な熱波に見舞われ乾燥した状態が続いた。
結果として、カナダの菜種は前期から35%減と大幅減産となった。
価格高騰によるレーショニング(値段が高いため需要が減退)が見られたものの、需給は極度にひっ迫した状況に陥った。
これにより菜種相場は、2008年につけた史上最高値を13年ぶりに更新した。
同社は、多様化の観点から仕入先を豪州にもシフトするなど、仕入先の拡大を進めている。
トウモロコシの需要を見るうえで、エタノールの動向も重要となる。
エタノールの生産動向は高止まりしており、米国政府がガソリン価格抑制のため、「E15」(エタノール15%の混合ガソリン、もともと混合率は10%までに制限されていた)の夏場販売を解禁したことから、エタノール需要は引き続き堅調に推移すると見られている。
世界的に供給不安が高まるなか、米国の新規供給に対して注目が集まるところだ。
また、肥料を使わない作物への作付けシフトが顕著になっているようであり、北米ではトウモロコシから大豆へ、菜種から小麦への作付けのシフトが進んでいると言われている。
輸入小麦の政府売り渡し価格の推移では、主要5銘柄加重平均で2021年10月には19.0%、2022年4月には17.3%と大幅な麦価引き上げが続いた。
しかし、現在の小麦相場を考慮すると、2022年10月の麦価改訂もさらに大幅な引き上げになると同社では予想している。
ロシアとウクライナは小麦輸出国だが、ロシアによる海上封鎖でウクライナは小麦の輸出が滞っている。
足下の小麦価格の高騰と円安基調が続くようだと、2022年10月の価格改定時に4割以上の値上げの可能性が高いと見られる。
海上運賃高騰の影響も重荷となる。
海上運賃市況は、コロナ禍からの経済回復で荷動きが活発化するなか、ロシア・ウクライナ情勢の影響を受けて資源や食料供給ルートが代替地域に移り、輸送距離が長くなっていることが挙げられる。
また、欧州やインド等がエネルギー資源を求めて石炭輸入を急増させていることも海上運賃の高騰に繋がっている。
加えて、EUによるロシア産原油の輸入停止措置やOPECプラスによる大幅増産の見送りなどで高止まりする原油価格も、燃料となるバンカーオイルの高騰に拍車をかけている。
なお、OPECプラスは2022年7月、8月の増産幅をそれぞれ日量64万8千バレルとすることを同年6月に合意した。
ただし、ロシアのウクライナ侵攻による制裁で落ち込んだロシアの生産減を補うには十分ではないと見られており、原油先物相場は依然として高い価格で推移している。
このようにロシア・ウクライナ情勢に起因して、原料穀物相場や海上運賃市況などは非常に混乱した状況だ。
また、米国における新穀の生育もまだまだ不透明な状況にある。
このため、先々の原料価格を見通すことが非常に困難な状況となっている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)