[ロンドン/フランクフルト 13日 ロイター] - 13日の取引でユーロが売られ、1ユーロ=1ドルの等価(パリティ)を約20年ぶりに下回った。米東部時間朝方に発表された6月の米消費者物価指数が約40年ぶりの大幅な伸びを示したことを受け、ユーロ売りが加速した。
ユーロはGMT1245(日本時間午後9時45分)に0.9998ドルと、パリティを割り込み、2002年12月以来の安値を付けた。年初からは10%を超えて下落している。
1999年に誕生したユーロがパリティを下回るのは極めてまれ。直近では1999─2002年にパリティを下回っていた。これまでの最安値は2000年10月に付けた0.82ドル。
ユーロ圏の景気後退懸念に加え、米連邦準備理事会(FRB)が示している積極的な金融引き締め姿勢がこれまでもユーロ売りにつながっていた。
米労働省発表の6月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前年同月比で9.1%上昇と5月の8.6%上昇から加速し、1981年11月以来40年超ぶりの大幅な伸びとなった。世界的に不確実性が高まっていることに加え、FRBの積極的な利上げ姿勢が安全資産と見なされるドルの買いにつながっている。
エクイティ・キャピタルのマクロエコノミスト、ステュアート・コール氏は「天然ガス問題のほか、スタグフレーションや景気後退懸念など全てがユーロに対する弱気要因になっている」と指摘。こうした要因により欧州中央銀行(ECB)の利上げが困難になり、米国との金利差がさらに拡大するとの見方を示した。
ユーロの下落を容認すればインフレが一段と加速する恐れがあるため、ユーロ安はECBにとって頭痛の種。ECB報道官はユーロがパリティを下回ったことを受け、インフレへの影響からユーロ相場を注視しているものの、ECBは特定の水準を目標としないとの見解を表明。電子メールで発表した声明で「ECBは特定の為替相場を目標にすることはない」とし、「物価安定を巡る責務に関連し、為替相場がインフレに及ぼす影響に常に注意を払っている」とした。
コメルツバンクのFXアナリスト、アンティエ・プレフケ氏は、ユーロが0.99ドル、もしくは0.98ドルまで下落する可能性があるとしつつも、「初動に過ぎない」とし、月末にガス供給停止といったニュースが伝われば0.95ドルまで下落する可能性もあると予想。「パリティ自体はさほど重要ではない。景気後退に陥るかどうかが最も重要な疑問」とし、ECBはガス供給を巡る状況を見極めながら、景気後退リスクを考慮した決定を下す必要があると述べた。
INGバンクのFXストラテジスト、フランチェスコ・ペソーレ氏もパリティについて「心理的に重要な水準だが、市場に衝撃を与えるような不測の事態ではない」と指摘。同時に「ECBが介入に動くのは困難だろう。口先介入によって、一段とタカ派となることは可能だ。世界景気後退を巡る懸念が市場を主導する中、ユーロ圏は他地域よりもリスクの高い状況に置かれている」という認識を示した。