■事業概要
カドカワ (T:9468)は出版事業を展開するKADOKAWAと日本最大級の動画サービス「niconico」を運営するドワンゴが2014年10月に経営統合して設立した持株会社となる。
事業セグメントは、「niconico」を中心とするWebサービス事業、出版事業、映画・ゲーム事業と、グッズ販売や教育事業などからなるその他事業に区分されている。
2018年3月期のセグメント別売上構成比は、Webサービス事業13.8%、出版事業53.7%、映像・ゲーム事業22.6%、その他事業9.9%となっており、営業利益構成比ではWebサービス事業とその他事業が損失計上となっており、出版事業と映像・ゲーム事業でカバーする格好となっている。
現在は出版事業が売上高、営業利益ともに過半を占めている。
今後は映像・ゲーム事業では、IP戦略に基づきトップラインを伸長させ、収益性も改善させていくことが期待される。
また、Webサービスで事業では、都度課金、オリジナルゲームの投入で定額制課金サービスに依存しない収益構成の確立を目指していくことが予想される。
1. Webサービス事業
Webサービス事業は、ポータル事業(ドワンゴの動画サービス「niconico」)を中核ビジネスとして、その広告宣伝の色彩が濃い各種イベントの企画・運営やイベント会場の賃貸等を行うライブ事業、携帯電話向けの音楽配信を行うモバイル事業から成る。
主力のポータル事業では、ニコニコ動画、ニコニコ生放送、ニコニコチャンネルなどの様々なサービスを提供する。
売上は、ニコニコ動画や生放送を快適に視聴できるプレミアム会員収入、Webサイト上のバナーや動画などの広告収入、有料動画などの視聴に利用するポイント収入などから成る。
2018年3月末時点におけるID発行数は7,222万人(前期比792万件増)と増加しているが、プレミアム会員数は207万人(同36万人減)、2018年1月-3月における利用状況はログインMAU(月間アクティブユーザー)で881万人(前年同期比32万人減)、ログインDAU(1日当たりアクティブユーザー)で298万人(同32万人減)とそれぞれ2017年3月期第2四半期をピークに減少傾向が続いている。
ただ、2018年2月末に「会員登録・ログイン無し視聴」に対応したことで、3月の利用状況は大きく増加している。
具体的には、非ログイン視聴UU数も合わせたMAUは1,754万人、DAUは328万人となっている。
また、企業・団体・ユーザーが動画や生放送を配信できるプラットフォームである「ニコニコチャンネル」に関しては、全チャンネル数が2018年3月末時点で8,182チャンネル(前期末比319チャンネル増)、月額有料チャンネル数1,305(同158チャンネル増)、月額有料会員数68万人(同9万人増)といずれも増加している。
ライブ事業では、「ニコニコ超会議」※1、「闘会議」※2、「アニメロサマーライブ」、「ニコニコ超パーティー」※3などのライブイベントの企画・運営を手掛けるほか、「ネットとリアルの融合」を実現した新しいエンタテインメントの形を創出するライブハウス「ニコファーレ」の運営、2014年10月にリニューアル、グランドオープンした「niconico」のアンテナショップ「ニコニコ本社」(池袋)※4で期間限定コラボカフェやゲーム実況イベントなどの運営も行っている。
※1 「ニコニコのすべてを地上で再現する」をコンセプトに幕張メッセで行われるニコニコ最大のイベント。
参加するユーザーが「全員主役」となり、ネットとリアルが融合した様々な企画を展開する。
2018年4月29日、30日に開催された「ニコニコ超会議2018」では、来場者数約16.1万人、ネット総来場者数約612万人を記録した。
※2 デジタルからアナログまで古今東西のゲームが集まる、日本最大級の“ユーザー参加型”ゲームイベント。
2018年2月10日、11日に幕張メッセで開催された「闘会議2018」では会場来場者数約7.2万人、ネット総来場者数約513万人を記録し、日本のゲーム市場拡大に貢献している。
また、今回開催されたeスポーツ大会の結果、ジャパン・eスポーツ・プロライセンスを新たに15人に発行するなどeスポーツ市場の発展に向けた取り組みも推進している。
※3 日本最大級の動画サービス「niconico」の大規模ステージイベントで、niconico内の「歌ってみた」、「踊ってみた」ジャンルなどで活躍するユーザーや、有名アーティストが一堂に会し行われるniconico最大のライブイベント。
開催6回目の2017年は11月3日にさいたまスーパーアリーナで開催され、約1.5万人が来場した。
※4 「niconico」のアンテナショップで、nicocafe、イベントスペース、ニコぶくろスタジオ、ニコニコショップのある複合施設。
2011年4月に原宿でグランドオープンし、池袋に移転・リニューアルした。
音楽配信事業は音楽関連の市場全体の環境変化により会員数が減少傾向にあるものの、依然として利益率の高いビジネスのひとつであり、「シングル楽曲/着うた®」などの配信を行う「ドワンゴジェイピー」やアニメ総合情報サイトの「animelo」の運営を行っている。
2. 出版事業
KADOKAWAの主力事業で、紙媒体の単行本、文庫、ライトノベル、コミックスなどの書籍のほか、電子書籍の出版・販売等を行う。
加えて、「ザテレビジョン」、「Walkerシリーズ」、「ファミ通」、「レタスクラブ」など雑誌やムック誌のほか、「Highway Walker」などのカスタムメディア、雑誌及びWeb広告の販売などを手掛ける。
紙媒体の書籍販売はメディアミックスによる作品展開で数多くの実績があるほか、ライトノベルは業界トップの地位を確立している。
長年にわたりマーケティングに基づいた製作・出荷の適正化に取り組んでおり、2018年3月期の書籍返品率は30%台前半の水準で、業界平均(30%台後半)を下回る水準となっている。
一方、電子書籍では直営の電子書籍配信プラットフォーム「BOOK☆WALKER」にて自社、他社の作品を販売し、Amazon、楽天など他社の電子書籍ストアへの取次も行うほか、電子雑誌では(株)NTTドコモが運営する雑誌読み放題サービス「dマガジン」へのコンテンツ提供と運営を行っている。
なお、ドワンゴが運営していた「ニコニコ漫画」「ニコニコ書籍」「読書メーター」は、「BOOK☆WALKER」を運営する(株)ブックウォーカーの下に一体化され、KADOKAWAのマンガ総合サイト「ComicWalker」との連携とあわせて電子書籍・電子雑誌事業の強化が図られている。
なお、雑誌、ムック誌に関しては、デジタル化の進展に伴って収益源となる紙媒体の広告収入の減少が続いており、現在は厳しい収益状況となっている。
このため、合理化を行うと同時に、紙媒体からデジタルメディアへの移行に積極的に取り組んでいる。
3. 映像・ゲーム事業
映像事業では、パッケージソフト販売や映画の企画・製作・配給、アニメの海外版権販売、映像配信などを手掛けているほか、(株)角川大映スタジオ、グロービジョン(株)がスタジオ事業を展開している。
出版事業や映像・ゲーム事業から生み出されるグループIP の映像化、実写映画及びアニメ作品の製作配給に注力している。
ゲーム事業では、(株)フロム・ソフトウェア、(株)スパイク・チュンソフト、(株)角川ゲームス、(株)MAGES.(メージス)、(株)KADOKAWAの5社がパッケージゲームソフト及びネットワークゲーム、アプリゲームの企画・開発・販売を行っている。
ヒットタイトルには「DARK SOULS」「Bloodborne」(フロム・ソフトウェア)、「GOD WARS」(角川ゲームス)、「喧嘩番長」「ダンガンロンパ」「ARK:Survival Evolved」(スパイク・チュンソフト)、「STEINS;GATE」(MAGES.)などがある。
4. その他事業
その他事業は、キャラクター商品やアイドルCDのeコマース、アニメや「niconico」から生まれたコンテンツのCD販売や著作権利用事業に加えて、クリエイティブ分野で活躍する人材を国内外で育成するスクール「バンタン」や「KADOKAWA Contents Academy」の運営のほか、高校卒業資格をオンラインで取得できるN高等学校といった教育事業、インバウンド事業の企画・運営等で構成されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
カドカワ (T:9468)は出版事業を展開するKADOKAWAと日本最大級の動画サービス「niconico」を運営するドワンゴが2014年10月に経営統合して設立した持株会社となる。
事業セグメントは、「niconico」を中心とするWebサービス事業、出版事業、映画・ゲーム事業と、グッズ販売や教育事業などからなるその他事業に区分されている。
2018年3月期のセグメント別売上構成比は、Webサービス事業13.8%、出版事業53.7%、映像・ゲーム事業22.6%、その他事業9.9%となっており、営業利益構成比ではWebサービス事業とその他事業が損失計上となっており、出版事業と映像・ゲーム事業でカバーする格好となっている。
現在は出版事業が売上高、営業利益ともに過半を占めている。
今後は映像・ゲーム事業では、IP戦略に基づきトップラインを伸長させ、収益性も改善させていくことが期待される。
また、Webサービスで事業では、都度課金、オリジナルゲームの投入で定額制課金サービスに依存しない収益構成の確立を目指していくことが予想される。
1. Webサービス事業
Webサービス事業は、ポータル事業(ドワンゴの動画サービス「niconico」)を中核ビジネスとして、その広告宣伝の色彩が濃い各種イベントの企画・運営やイベント会場の賃貸等を行うライブ事業、携帯電話向けの音楽配信を行うモバイル事業から成る。
主力のポータル事業では、ニコニコ動画、ニコニコ生放送、ニコニコチャンネルなどの様々なサービスを提供する。
売上は、ニコニコ動画や生放送を快適に視聴できるプレミアム会員収入、Webサイト上のバナーや動画などの広告収入、有料動画などの視聴に利用するポイント収入などから成る。
2018年3月末時点におけるID発行数は7,222万人(前期比792万件増)と増加しているが、プレミアム会員数は207万人(同36万人減)、2018年1月-3月における利用状況はログインMAU(月間アクティブユーザー)で881万人(前年同期比32万人減)、ログインDAU(1日当たりアクティブユーザー)で298万人(同32万人減)とそれぞれ2017年3月期第2四半期をピークに減少傾向が続いている。
ただ、2018年2月末に「会員登録・ログイン無し視聴」に対応したことで、3月の利用状況は大きく増加している。
具体的には、非ログイン視聴UU数も合わせたMAUは1,754万人、DAUは328万人となっている。
また、企業・団体・ユーザーが動画や生放送を配信できるプラットフォームである「ニコニコチャンネル」に関しては、全チャンネル数が2018年3月末時点で8,182チャンネル(前期末比319チャンネル増)、月額有料チャンネル数1,305(同158チャンネル増)、月額有料会員数68万人(同9万人増)といずれも増加している。
ライブ事業では、「ニコニコ超会議」※1、「闘会議」※2、「アニメロサマーライブ」、「ニコニコ超パーティー」※3などのライブイベントの企画・運営を手掛けるほか、「ネットとリアルの融合」を実現した新しいエンタテインメントの形を創出するライブハウス「ニコファーレ」の運営、2014年10月にリニューアル、グランドオープンした「niconico」のアンテナショップ「ニコニコ本社」(池袋)※4で期間限定コラボカフェやゲーム実況イベントなどの運営も行っている。
※1 「ニコニコのすべてを地上で再現する」をコンセプトに幕張メッセで行われるニコニコ最大のイベント。
参加するユーザーが「全員主役」となり、ネットとリアルが融合した様々な企画を展開する。
2018年4月29日、30日に開催された「ニコニコ超会議2018」では、来場者数約16.1万人、ネット総来場者数約612万人を記録した。
※2 デジタルからアナログまで古今東西のゲームが集まる、日本最大級の“ユーザー参加型”ゲームイベント。
2018年2月10日、11日に幕張メッセで開催された「闘会議2018」では会場来場者数約7.2万人、ネット総来場者数約513万人を記録し、日本のゲーム市場拡大に貢献している。
また、今回開催されたeスポーツ大会の結果、ジャパン・eスポーツ・プロライセンスを新たに15人に発行するなどeスポーツ市場の発展に向けた取り組みも推進している。
※3 日本最大級の動画サービス「niconico」の大規模ステージイベントで、niconico内の「歌ってみた」、「踊ってみた」ジャンルなどで活躍するユーザーや、有名アーティストが一堂に会し行われるniconico最大のライブイベント。
開催6回目の2017年は11月3日にさいたまスーパーアリーナで開催され、約1.5万人が来場した。
※4 「niconico」のアンテナショップで、nicocafe、イベントスペース、ニコぶくろスタジオ、ニコニコショップのある複合施設。
2011年4月に原宿でグランドオープンし、池袋に移転・リニューアルした。
音楽配信事業は音楽関連の市場全体の環境変化により会員数が減少傾向にあるものの、依然として利益率の高いビジネスのひとつであり、「シングル楽曲/着うた®」などの配信を行う「ドワンゴジェイピー」やアニメ総合情報サイトの「animelo」の運営を行っている。
2. 出版事業
KADOKAWAの主力事業で、紙媒体の単行本、文庫、ライトノベル、コミックスなどの書籍のほか、電子書籍の出版・販売等を行う。
加えて、「ザテレビジョン」、「Walkerシリーズ」、「ファミ通」、「レタスクラブ」など雑誌やムック誌のほか、「Highway Walker」などのカスタムメディア、雑誌及びWeb広告の販売などを手掛ける。
紙媒体の書籍販売はメディアミックスによる作品展開で数多くの実績があるほか、ライトノベルは業界トップの地位を確立している。
長年にわたりマーケティングに基づいた製作・出荷の適正化に取り組んでおり、2018年3月期の書籍返品率は30%台前半の水準で、業界平均(30%台後半)を下回る水準となっている。
一方、電子書籍では直営の電子書籍配信プラットフォーム「BOOK☆WALKER」にて自社、他社の作品を販売し、Amazon、楽天など他社の電子書籍ストアへの取次も行うほか、電子雑誌では(株)NTTドコモが運営する雑誌読み放題サービス「dマガジン」へのコンテンツ提供と運営を行っている。
なお、ドワンゴが運営していた「ニコニコ漫画」「ニコニコ書籍」「読書メーター」は、「BOOK☆WALKER」を運営する(株)ブックウォーカーの下に一体化され、KADOKAWAのマンガ総合サイト「ComicWalker」との連携とあわせて電子書籍・電子雑誌事業の強化が図られている。
なお、雑誌、ムック誌に関しては、デジタル化の進展に伴って収益源となる紙媒体の広告収入の減少が続いており、現在は厳しい収益状況となっている。
このため、合理化を行うと同時に、紙媒体からデジタルメディアへの移行に積極的に取り組んでいる。
3. 映像・ゲーム事業
映像事業では、パッケージソフト販売や映画の企画・製作・配給、アニメの海外版権販売、映像配信などを手掛けているほか、(株)角川大映スタジオ、グロービジョン(株)がスタジオ事業を展開している。
出版事業や映像・ゲーム事業から生み出されるグループIP の映像化、実写映画及びアニメ作品の製作配給に注力している。
ゲーム事業では、(株)フロム・ソフトウェア、(株)スパイク・チュンソフト、(株)角川ゲームス、(株)MAGES.(メージス)、(株)KADOKAWAの5社がパッケージゲームソフト及びネットワークゲーム、アプリゲームの企画・開発・販売を行っている。
ヒットタイトルには「DARK SOULS」「Bloodborne」(フロム・ソフトウェア)、「GOD WARS」(角川ゲームス)、「喧嘩番長」「ダンガンロンパ」「ARK:Survival Evolved」(スパイク・チュンソフト)、「STEINS;GATE」(MAGES.)などがある。
4. その他事業
その他事業は、キャラクター商品やアイドルCDのeコマース、アニメや「niconico」から生まれたコンテンツのCD販売や著作権利用事業に加えて、クリエイティブ分野で活躍する人材を国内外で育成するスクール「バンタン」や「KADOKAWA Contents Academy」の運営のほか、高校卒業資格をオンラインで取得できるN高等学校といった教育事業、インバウンド事業の企画・運営等で構成されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)