■今後の見通し
1. 2019年3月期の業績見通し
明豊ファシリティワークス (T:1717)の2019年3月期の業績は、売上高が前期比18.3%減の4,960百万円、営業利益が同2.3%増の620百万円、経常利益が同1.5%増の620百万円、当期純利益が同0.1%増の432百万円となる見通し。
売上高で減収を見込んでいるのは、前期と同様に既に契約形態が決まっている案件を除いて、ピュアCM契約をベースに計画を策定しているためだ。
上期はほぼ想定どおりに推移したが、下期にアットリスクCM契約での売上が増えれば、利益への影響はないものの増収要因となる。
社内で管理する売上粗利益ベースでは前期比1ケタ台の増収を見込んでいるが、学校空調設備の受注案件などが今後増える可能性があり上振れする可能性はある。
ただ、一方で人員採用が第2四半期までで年度計画(前期末比で10名前後の増加)を既に達成しており、下期も優秀な人材に関しては採用していく方向であることから、人件費が想定よりも増加する可能性がある。
このため、通期の業績計画については期初計画を据え置いた格好となっている。
なお、当期純利益については所得拡大促進税制の適用を前提としていないため、伸び率は微増にとどまる見通しとなっている。
公共、民間分野ともにCMの普及率上昇が見込まれ、業績は2020年以降も安定成長が続く見通し
2. 中期見通し
同社は今後も、「顧客の側に立つプロフェッショナル」として「フェアネス」と「透明性」を貫き、サービス品質の維持向上を最優先に取り組みながら、安定した収益成長を続けていくことを目指している。
同社がCM事業者の先駆者として、独立系でありながら多くの大企業を顧客として獲得し、また、公共分野でも受注実績を広げてきたのも、こうした経営理念を社員一人ひとりが実践してきた積み重ねであると言える。
国内の建設投資は東京オリンピック・パラリンピックまで高水準が続き、その後に減少局面に入るとの見方も出ているが、同社が対象とする建設投資(住宅・土木除く)に占めるCMの普及率はまだ1~2割程度と低く、今後は公共分野を含めて普及率の上昇が見込まれることから、2020年以降も成長が続くものと予想される。
特に、公共分野では国や地方公共団体の財政が厳しいなかで、老朽化設備の維持・更新あるいは改築といった案件が多くあり、費用の最適化が図れるCM方式を導入するメリットは大きい。
国交省でもCMの普及促進に向けた取り組み※を推進しており、5年連続でモデル事業の支援事業者に選定されている同社の認知度とブランド力は向上していると見られる。
※2018年2月22日付の日刊建設工業新聞の報道によると、国交省において2018年度にCM方式の普及拡大を図るための制度化に向けた検討を始め、発注者が利用しやすい仕組みの創設を目指していくとされている。
具体的にはCMr.(コンストラクションマネージャー)の資格・実務要件や関係者間の役割分担を整理していくほか、業務報酬の基本的な考え方、CM契約標準約款なども論点としていく。
今後、CM市場が拡大するなかで新規事業者の参入により、受注競争が激化するリスクはあるものの、CM業務にとって最も重要となる「サービス品質」や「顧客からの信頼」は一朝一夕で構築できるものではなく、今後もサービス品質の維持向上が続く限り、同社の優位性は揺るがないものと弊社では見ている。
実際、既存顧客からの受注比率が毎期、6割以上で推移していることや、公共分野で高い落札率を維持※していることからも、同社の競争力の高さがうかがえる。
※同社は公共分野ではプロポーザル方式の案件に限定して入札している。
プロポーザル方式とは、発注者が業務の委託先を選定する際に、入札を希望する事業者に対して目的物に対する企画を提案してもらい、その中から優れた提案を評価項目別にポイント化し、総合点数が最も高かった事業者を選定する入札方式。
なお、ここ数年の業績推移を見ると、売上高は2014年3月期をピークに落ち込み、業績が伸びていないように見られがちだが、これはCMの契約方式が変化してきたことによるもので(アットリスクCM契約の比率が低下)、実際には2018年3月期まで4期連続で過去最高経常利益を更新するなど着実に成長を続けている。
こうした売上高の契約方式の違いについては、有価証券報告書で完成工事高、マネジメントサービス料収入、その他売上高に分けて記載されており、その推移を見ると解かりやすい。
完成工事高がアットリスクCM契約、マネジメントサービス料収入がピュアCM契約に相当する。
全体の売上に占める完成工事高の比率は2014年3月期の73.4%から2018年3月期は45.8%に低下しており、これが売上高の減収要因となっていることがわかる。
全体に占める比率はまだ40%以上と高いため、今後もアットリスクCM契約の案件が減少すれば、見かけ上の売上高が減る可能性がある。
ただ、売上総利益で見ると様相は一変する。
完成工事高総利益の構成比は、2014年3月期の40.5%から2018年3月期は5.6%まで低下しており、全体に与える影響は既に軽微となっている。
今後、アットリスクCM契約の案件が減ったとしても、ピュアCM契約の案件が増え続ける限り全体の利益は拡大し、また、利益率も上昇していくことになる。
2018年3月期の売上高営業利益率は10.0%であったが、売上高が全てピュアCM契約であったと仮定した場合、営業利益率は16〜17%の水準だったと試算される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
1. 2019年3月期の業績見通し
明豊ファシリティワークス (T:1717)の2019年3月期の業績は、売上高が前期比18.3%減の4,960百万円、営業利益が同2.3%増の620百万円、経常利益が同1.5%増の620百万円、当期純利益が同0.1%増の432百万円となる見通し。
売上高で減収を見込んでいるのは、前期と同様に既に契約形態が決まっている案件を除いて、ピュアCM契約をベースに計画を策定しているためだ。
上期はほぼ想定どおりに推移したが、下期にアットリスクCM契約での売上が増えれば、利益への影響はないものの増収要因となる。
社内で管理する売上粗利益ベースでは前期比1ケタ台の増収を見込んでいるが、学校空調設備の受注案件などが今後増える可能性があり上振れする可能性はある。
ただ、一方で人員採用が第2四半期までで年度計画(前期末比で10名前後の増加)を既に達成しており、下期も優秀な人材に関しては採用していく方向であることから、人件費が想定よりも増加する可能性がある。
このため、通期の業績計画については期初計画を据え置いた格好となっている。
なお、当期純利益については所得拡大促進税制の適用を前提としていないため、伸び率は微増にとどまる見通しとなっている。
公共、民間分野ともにCMの普及率上昇が見込まれ、業績は2020年以降も安定成長が続く見通し
2. 中期見通し
同社は今後も、「顧客の側に立つプロフェッショナル」として「フェアネス」と「透明性」を貫き、サービス品質の維持向上を最優先に取り組みながら、安定した収益成長を続けていくことを目指している。
同社がCM事業者の先駆者として、独立系でありながら多くの大企業を顧客として獲得し、また、公共分野でも受注実績を広げてきたのも、こうした経営理念を社員一人ひとりが実践してきた積み重ねであると言える。
国内の建設投資は東京オリンピック・パラリンピックまで高水準が続き、その後に減少局面に入るとの見方も出ているが、同社が対象とする建設投資(住宅・土木除く)に占めるCMの普及率はまだ1~2割程度と低く、今後は公共分野を含めて普及率の上昇が見込まれることから、2020年以降も成長が続くものと予想される。
特に、公共分野では国や地方公共団体の財政が厳しいなかで、老朽化設備の維持・更新あるいは改築といった案件が多くあり、費用の最適化が図れるCM方式を導入するメリットは大きい。
国交省でもCMの普及促進に向けた取り組み※を推進しており、5年連続でモデル事業の支援事業者に選定されている同社の認知度とブランド力は向上していると見られる。
※2018年2月22日付の日刊建設工業新聞の報道によると、国交省において2018年度にCM方式の普及拡大を図るための制度化に向けた検討を始め、発注者が利用しやすい仕組みの創設を目指していくとされている。
具体的にはCMr.(コンストラクションマネージャー)の資格・実務要件や関係者間の役割分担を整理していくほか、業務報酬の基本的な考え方、CM契約標準約款なども論点としていく。
今後、CM市場が拡大するなかで新規事業者の参入により、受注競争が激化するリスクはあるものの、CM業務にとって最も重要となる「サービス品質」や「顧客からの信頼」は一朝一夕で構築できるものではなく、今後もサービス品質の維持向上が続く限り、同社の優位性は揺るがないものと弊社では見ている。
実際、既存顧客からの受注比率が毎期、6割以上で推移していることや、公共分野で高い落札率を維持※していることからも、同社の競争力の高さがうかがえる。
※同社は公共分野ではプロポーザル方式の案件に限定して入札している。
プロポーザル方式とは、発注者が業務の委託先を選定する際に、入札を希望する事業者に対して目的物に対する企画を提案してもらい、その中から優れた提案を評価項目別にポイント化し、総合点数が最も高かった事業者を選定する入札方式。
なお、ここ数年の業績推移を見ると、売上高は2014年3月期をピークに落ち込み、業績が伸びていないように見られがちだが、これはCMの契約方式が変化してきたことによるもので(アットリスクCM契約の比率が低下)、実際には2018年3月期まで4期連続で過去最高経常利益を更新するなど着実に成長を続けている。
こうした売上高の契約方式の違いについては、有価証券報告書で完成工事高、マネジメントサービス料収入、その他売上高に分けて記載されており、その推移を見ると解かりやすい。
完成工事高がアットリスクCM契約、マネジメントサービス料収入がピュアCM契約に相当する。
全体の売上に占める完成工事高の比率は2014年3月期の73.4%から2018年3月期は45.8%に低下しており、これが売上高の減収要因となっていることがわかる。
全体に占める比率はまだ40%以上と高いため、今後もアットリスクCM契約の案件が減少すれば、見かけ上の売上高が減る可能性がある。
ただ、売上総利益で見ると様相は一変する。
完成工事高総利益の構成比は、2014年3月期の40.5%から2018年3月期は5.6%まで低下しており、全体に与える影響は既に軽微となっている。
今後、アットリスクCM契約の案件が減ったとしても、ピュアCM契約の案件が増え続ける限り全体の利益は拡大し、また、利益率も上昇していくことになる。
2018年3月期の売上高営業利益率は10.0%であったが、売上高が全てピュアCM契約であったと仮定した場合、営業利益率は16〜17%の水準だったと試算される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)