[キャンベラ 6日 ロイター] - オーストラリアのモリソン首相は総選挙まで半年を切った現在、世論調査で野党に及ばず、党内抗争で法案成立が遅れるといった混乱にも見舞われて、態勢立て直しに躍起となっている。
モリソン氏は今年最後の国会会期を利用し、野党労働党との違いを際立たせる法案を成立させるもくろみだった。同性婚の合法化後に約束し、物議を醸している信教の自由に関する法案などが含まれる。
しかし、会期末まで2週間の時点で連立与党の足並みが乱れ、自身が率いる自由党の議員が政府への反対票を投じる事態となった。このため信教の自由その他の法案の成立が遅れ、選挙後にずれ込む可能性も出てきた。
フラインダース大学の政治科学教授、ヘイドン・マニング氏は「過去数日間の出来事を見ると、次の選挙まで政権運営を続けることは実質的に不可能かもしれない」と語る。
同教授は「法案を通すことができておらず、首相は待つべきか、それとも選挙を前倒し実施するかの決断を迫られるだろう」という。
総選挙は来年5月までに実施する必要があり、情勢転換のために残された時間は乏しい。このため首相は、一連の非公式な選挙キャンペーンに打って出た。
モリソン氏がこうした状況を経験するのは、初めてではない。3年前の党首選でターンブル前首相が敗れ、首相になったばかりのモリソン氏は、世論調査で野党にリードされていた。だが、2019年5月の総選挙で予想に反して勝利を奪った。
6日公表されたニューズポールの世論調査では、モリソン氏率いる連立政権は野党労働党に敗れるとの見通しが示された。3月末には予算も控えていることから、モリソン氏は19年のように、ぎりぎりまで選挙を引っ張りそうだ。
<信頼性に疑問符>
モリソン氏は結束を呼びかけているが、政権は信教の自由法案や気候変動政策を巡って対立している。
モリソン氏は先週、分断は選挙に響くと与党議員らに警告した。自由党の会合におけるモリソン氏の発言を知る人物が明かした。
世論調査によると、モリソン氏は女性有権者からの支持獲得にも苦戦している。政権は今年、国会議事堂内での性的暴行疑惑で打撃を受け、ベテラン議員による問題への対応も批判を浴びた。
国民の怒りに答え、モリソン氏は国会議事堂における職場文化についての報告書作成を委託。先週公表された報告書では、議事堂で働く人の3人に1人がセクハラを経験していたことが示された。
加えて先週は、教育相がスタッフとの不倫中に虐待行為を行ったとの疑惑で調査を受け、辞任した。教育相は疑惑を強く否定している。
モリソン氏は、フランスとの潜水艦建造契約の破棄についてうそをついていたと同国のマクロン大統領から攻撃され、信頼性の点でも傷を負っている。
労働党側は国会で繰り返しモリソン氏の信頼性に疑問を投げかけており、この問題は有権者からも一定の関心を得ているようだ。
モリソン氏は選挙での劣勢を認めているが、2019年のような「奇跡の勝利」の再現に自信を抱いていると複数の政府筋は言う。
シドニー大学の政治科学教授、ピーター・チェン氏は「彼は選挙がうまい。親しみやすい雰囲気を持っており、国の主要地域で人気がある。必ずや情勢をひっくり返せる」と語った。
(Colin Packham記者)