Andreas Rinke Sarah Marsh
[ベルリン 31日 ロイター] - ドイツのオラフ・ショルツ首相は1月、閣僚を集めて2時間休みなしの会議を開いた。テーマは、全国的な世論調査で第2位の支持率を獲得した極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に対抗する最善の戦略は何か、である。
AfDの好調は、ドイツの主要政党全てにとって急を要する懸念となっている。6月の市町村議会や欧州議会の選挙、9月の東部3州の州議会選挙で躍進する可能性があるからだ。
11年前に設立された反主流派政党のAfDは、かつては泡沫的な運動と軽視されていたが、複数の世論調査で、主要野党であるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)に次ぐ20%の支持率を得ている。ドイツ東部のテューリンゲン、ザクセン、ブランデンブルク各州では首位となっている。
ショルツ政権の考え方の変化を裏付けるように、首相の呼びかけで集まった閣僚らは、ぎくしゃくしている3党連立政権内部の公然たる対立がAfDの台頭に一役買っていると認めたという。政府関係者が明らかにした。
「実際には連立政権がきちんと機能しているという事実をもっと伝えていく必要があることを認識した」とこの関係者は語る。
もっとも、悩んでいるのは現政権だけではない。どの主要政党の会合でも、AfDへの対抗戦略という話題で持ちきりだ。議論の的になる選択肢は、AfDの非合法化から州政党交付金の停止、過激主義の政治家の被選挙権を停止する法的措置までさまざまである。
保守派の連邦議会議員マルコ・バンダービッツ氏はロイターに対し、「この国の基礎である自由で民主的な秩序を破壊したいと考える右翼過激主義の政党が再び生まれてしまった。私たちはこの10年間、その政党を政治的に抑制できずにいる」と語った。同氏はAfDの非合法化を求める動きの先頭に立っている。
「それどころか、(AfDは)ますます大きくなっている」
もう1つ勢いを増している戦略が、例えば選挙において統一候補を支持するなど、主流派の政党全てが対AfDで共闘することだ。市町村選挙のレベルでは、すでに成功した例もある。
<コンセンサスは得られず>
だがこれまでのところ、党内でも政党間でも、最善の戦略についてのコンセンサスは得られていない。
緑の党、リベラル派の自由民主党(FDP)と共に連立を組む社会民主党(SPD)を率いるショルツ首相は、論調を変えたように見える。かつてはAfD軽視と見られる発言もあったが、珍しく公の場で後悔を口にし、連立政権の不手際を認めている。
またショルツ政権は一部の移民問題について以前より厳しい姿勢を示し、1月には亡命に必要な法的権利を持たない移民の送還を容易にする法案を成立させた。
ショルツ首相は1月31日、ナチスの過去に言及しつつ、共に過激主義と戦い、AfDの実態を直視するよう国民に呼びかけた。
「沈黙を守る者も共犯になる」とショルツ首相は述べた。
AfDは、国家の支援するキャンペーンの被害者であると自称している。
ブランデンブルク州議会でAfDを率いるハンスクリストフ・ベルント氏は記者団に対し、「この国で今起きているのは巨大なスキャンダルだ。政治的に何の成果も挙げられない政府が、選挙でのAfDの勝利を恐れるあまり、自暴自棄になって最も恥ずべき手段に訴えつつある」と語った。
1月、右派過激政党「祖国」が反憲法的であるという理由で同党への公的資金の給付を停止することを認める画期的な判決が出たことにより、AfDに対しても同様の措置が可能かどうかという議論が盛り上がっている。
AfDは現在、反憲法的な活動に関して国家レベルで監視対象となっている。
テューリンゲン州では、裁判所がビョルン・ヘッケAfD州支部長を「ファシスト」と表現することは妥当であると判断した。同氏の被選挙権停止という前代未聞の司法手続きを求める請願には、100万人以上の署名が集まった。
だがこうした法律的な選択肢については、高いハードルがあって何年もかかる可能性があり、また最終的には裏目に出る恐れがある、と多くの政治家が慎重な姿勢を示す。
ザクセン・アンハルト州のCDUトップ、スベン・シュルツェ氏は、南ドイツ新聞の取材に「(AfDに)『殉教者』としての立場を与えることを避け、議論を通じて政治的に戦わなければならない」と語った。
すでにヘッケ氏は自身の被選挙権停止を求める請願を逆用している。フェイスブックに投稿した動画の中で、「これはもはや民主主義ではない。全体主義に近いものがある」と語っている。
<焦点となる政策>
全ての政党がAfDに対抗して共闘すべきだという発想を巡っては、AfDが「主流派の政党にはどこも実質的な違いはない」と主張し、自らが唯一の確かな選択肢であるかのように振る舞う余地を与えることで、同党をさらに増長させるリスクがある、という批判もある。
全ての主流派政党が同意していると思われる戦略が一つある。反欧州連合(EU)、反移民、そして人類の活動が気候変動の原因であることを否定するという、AfDの実際の政策を強調することだ。
欧州議会選挙でFDPの有力候補とされるマリーアグネス・ストラックツィンマーマン氏はロイターに対し、「AfDがドイツと欧州にとって危険な存在であることを人々に示すことで、彼らを選挙運動モードに引きずり込まなければならない」と語った。
多くの政治家が取り上げたのが、外国にルーツを持つ市民の大量追放についてAfDの政治家と右翼過激派の間で協議が行われたとする1月の報道だ。
AfDは、そうした計画は党の方針ではないとしている。だがこの提案は、ナチスが初期に構想した在欧ユダヤ人のマダガスカル大規模移住計画を連想させ、数万人規模の抗議デモを引き起こした。
こうした抗議にある程度の効果があったのか、1月30日に行われた世論調査では、昨年7月以降で初めてAfDの支持率が20%を割り込んだ。
(翻訳:エァクレーレン)