[10日 ロイター] - 米労働省が10日発表した3月の消費者物価指数(CPI)は、ガソリンや住居費の上昇を受け、予想以上に上昇した。米連邦準備理事会(FRB)の6月利下げ観測がさらに後退する可能性がある。
市場関係者に見方を聞いた。
◎米金利高でハイテク株重しに、日本株は横ばい継続か
<三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩氏>
3月の米消費者物価指数(CPI)は市場予想を上回る結果で、改めて米国のインフレの根強さが確認された。マーケットは米金利上昇、ドル全面高、株安と、想定された反応をみせている。本来ならば円安はプラス材料ではあるが、足元の状況では日本株は米株安に反応しやすい地合いだろう。
米利下げ観測が後退したことで目先は米金利高が長期化する可能性があり、ハイテク株の重しとなりやすい。これまで株高をけん引してきたハイテク株の上値が重くなるため、日経平均はしばらく横ばい圏で推移するのではないか。ただ、長い目でみれば、米金利高の長期化でインフレが抑制されるとみられ、マーケットも落ち着いてくるだろう。
米CPIを通過して、しばらくは新規材料待ちとなりそうだ。次に株式市場が動意付くタイミングとしては、企業決算が本格化する大型連休明けではないか。東証による資本効率改善の要請で、(株主還元策など)投資家の評価を得られるような開示が企業側から確認されれば、株価は上向いてくるとみている。
◎ドルは当面上値試しか、介入警戒一段と
<上田東短フォレックス 営業企画室室長 阪井勇蔵氏>
予想を上回るCPIを受けて、円が歴史的な安値となる152円台へ下落しても円買い介入が行われなかったのは、発表前からドルは151円後半で、急変というほど値幅が出なかったこと、岸田文雄首相が訪米中で為替操作との批判を直接受けかねない状況だったことなどが要因だとみている。
今夜も米国では注目度の高い卸売物価指数(PPI)の発表があり、結果次第でドルはさらに1円程度上昇する可能性がある。毎日1円の円安が進むようなことになれば、介入が行われる可能性がある。
ドルがようやく151円後半の膠着を脱したことで、当面は上値を試す展開となりやすい。ドルが上がれば上がるほど、市場の介入警戒度は増してくる。効果の限られるレートチェックより、実弾介入をいきなり実施したほうが良いのではないか、との指摘も市場では聞かれる。けん制発言のトーンがより強まれば、円相場が反応する場面もあるだろう。
◎FRBのインフレ再燃懸念を裏付け
<ウェルススパイア・アドバイザーズのシニアバイスプレジデント、オリバー・パーシェ氏>
CPIは、予想以上に好調な経済で春から夏にかけてインフレが再燃する可能性があるという米連邦準備理事会(FRB)の懸念を確認するもので、利下げは間違いなく後ずれするだろう。
7月利下げの可能性はまだある。それまでに重要指標がいくつか発表される。だが、A)6月の利下げがあった場合、B)今年2回以上の利下げがあった場合は驚く。
◎FRB利下げ着手7月に後ずれ
<B・ライリー・ウェルス(ボストン)のチーフマーケットストラテジスト、アート・ホーガン氏>
予想されていた通りに事前の見通しを上回った。大きな違いではないが、米連邦準備理事会(FRB)が利下げを開始する時期を巡る議論を継続させるには十分だ。最初の利下げが実施される時期は少なくとも1カ月、7月に後ずれする。
◎利下げの根拠存在せず
<ラデンバーグ・サルマン・アセット・マネジメントのフィル・ブランカート最高経営責任者(CEO)>
残念ながらインフレがより粘り強くなっているため、利下げの根拠は存在しない。米連邦準備理事会(FRB)が望む責務が達成できていないことから、利上げを巡る議論や再利上げの可能性でさえ排除できないように思える。
*内容を追加しました