■日本動物高度医療センター (T:6039)の中長期成長戦略
1. ペット産業全体で見れば伸び悩みでも、動物高度医療分野は市場拡大余地が大きい
市場環境として、ペット産業全体で見れば伸び悩み感や成熟感が否めないものの、このうち動物高度医療分野及び保険分野に関しては市場拡大余地が大きいと考えられる。
一般社団法人ペットフード協会「2017年全国犬猫飼育実態調査」によると、2017年の全国犬・猫飼育頭数は推計1,844万頭で、2013年の1,963万頭から119万頭(6.1%)減少した。
このうち猫飼育頭数は2013年の937万頭から2017年の953万頭に増加した。
この5年間で見ると「猫ブーム」でおおむね930万頭~950万頭の水準を維持している。
しかし犬飼育頭数は2013年の1,026万頭から2017年の892万頭まで134万頭(2013年比13.1%)減少した。
飼い主の高齢化なども要因として犬飼育頭数は減少傾向に歯止めがかからず、2017年には調査開始以来、初めて猫飼育頭数が犬飼育頭数を上回った。
ただし飼育頭数が減少する一方で、ペットに対する支出金額は増加傾向を強めている。
ペットの家族化や高齢化などに伴い、ペットとの生活を楽しむためのトリミングなどサービス関連の支出、ペットを終生飼養するための健康管理・医療・保険関連の支出、さらに葬儀・霊園関連の支出などが増加しているためだ。
ペットフード協会「2017年全国犬猫飼育実態調査」によると、医療費を含む2017年の1ヶ月当たり平均支出総額は、犬が10,818円で前年比2,739円(33.9%)増加、猫が7,475円で同2,072円(38.3%)増加した。
また総務省の家計調査によると、2017年の1世帯当たりの動物病院代の年間支出額は7,125円で前年比487円(7.3%)増加した。
さらに富士経済「2017ペット関連市場マーケティング総覧」によると、2017年のペット保険契約件数は147万件、普及率(犬・猫飼育頭数に対するペット保険契約件数の割合)は8.0%となり、2014年の契約件数94万件、普及率4.9%から増加基調である。
ペット医療の分野では、飼い主の住居に近い「かかりつけの動物病院」で診療(一次診療)を受けるのが一般的だが、飼い主の間に「動物にも人間と同じように高度な医療を受けさせたい」として、高度医療(二次診療)に対するニーズが一段と高まっている。
獣医師の診療報酬は自由診療であり、それぞれの動物病院が個々に設定しているが、高度医療では検査・診療・手術費が高額になることが多いため、高度医療に対するニーズの高まりととともに、ペット保険に対するニーズも高まっている状況だ。
ペット保険の普及率は2017年で8.0%に過ぎず、今後の上昇余地が大きい。
同社の場合、現在は来院数の約25%が保険契約者となっているようだが、ペット保険の契約件数増加や普及率上昇が一次診療施設からの紹介件数の増加につながる可能性が高いだろう。
2. 動物医療業界の総合的企業を目指す
成長戦略としては、拠点の拡大、対外活動の強化、人材の確保・育成、新規事業の拡大を掲げている。
拠点の拡大に関しては、全国主要都市への施設展開を推進して紹介受入体制を強化する。
2018年1月の東京病院開業で首都圏東部・北部からの紹介受入を強化した。
2020年春以降には大阪病院(仮称)の開業を計画(総投資額約17億円の計画で土地取得済み)している。
その後は東名阪の拠点を中心に、連携病院数や紹介件数の増加を加速させる方針だ。
なお大阪病院(仮称)開業によって大型の設備投資が完了し、その後の拠点展開に要する設備投資額はやや小型化する見込みだ。
対外活動の強化に関しては、学会発表やセミナー開催などの学術活動、地域の動物病院との連携を継続的に推進し、連携病院数や紹介件数の増加を加速させる方針だ。
2019年3月期の初診件数は、2018年1月開業した東京病院の受入強化も寄与して前期比22%増を目標としている。
人材の確保・育成に関しては、大学・専門学校・各種団体との関係強化や人脈形成に尽力し、採用活動を積極的に実施する。
新規事業に関しては、動物医療における診療以外の領域で、患者動物・飼い主・一次診療施設をサポートする新規事業の拡大を推進する。
このうち機器販売では、呼吸・脈拍などを非接触型センサーで自動測定して異常を検知する病院向け患者動物見守りシステム「CLAIRVO(クリアボ)」や、首輪に装着して健康状態を測定する飼い主向け動物用活動量計「プラスサイクル」などの開発・拡販を推進する。
こうした戦略の積極推進によって、動物医療業界の総合的企業を目指す方針だ。
3. 中長期的に成長期待
動物高度医療の市場拡大余地は大きく、高度医療サービスを提供できる総合動物病院の強みを生かしながら、拠点拡大など積極的な事業展開で中長期的に成長が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)
1. ペット産業全体で見れば伸び悩みでも、動物高度医療分野は市場拡大余地が大きい
市場環境として、ペット産業全体で見れば伸び悩み感や成熟感が否めないものの、このうち動物高度医療分野及び保険分野に関しては市場拡大余地が大きいと考えられる。
一般社団法人ペットフード協会「2017年全国犬猫飼育実態調査」によると、2017年の全国犬・猫飼育頭数は推計1,844万頭で、2013年の1,963万頭から119万頭(6.1%)減少した。
このうち猫飼育頭数は2013年の937万頭から2017年の953万頭に増加した。
この5年間で見ると「猫ブーム」でおおむね930万頭~950万頭の水準を維持している。
しかし犬飼育頭数は2013年の1,026万頭から2017年の892万頭まで134万頭(2013年比13.1%)減少した。
飼い主の高齢化なども要因として犬飼育頭数は減少傾向に歯止めがかからず、2017年には調査開始以来、初めて猫飼育頭数が犬飼育頭数を上回った。
ただし飼育頭数が減少する一方で、ペットに対する支出金額は増加傾向を強めている。
ペットの家族化や高齢化などに伴い、ペットとの生活を楽しむためのトリミングなどサービス関連の支出、ペットを終生飼養するための健康管理・医療・保険関連の支出、さらに葬儀・霊園関連の支出などが増加しているためだ。
ペットフード協会「2017年全国犬猫飼育実態調査」によると、医療費を含む2017年の1ヶ月当たり平均支出総額は、犬が10,818円で前年比2,739円(33.9%)増加、猫が7,475円で同2,072円(38.3%)増加した。
また総務省の家計調査によると、2017年の1世帯当たりの動物病院代の年間支出額は7,125円で前年比487円(7.3%)増加した。
さらに富士経済「2017ペット関連市場マーケティング総覧」によると、2017年のペット保険契約件数は147万件、普及率(犬・猫飼育頭数に対するペット保険契約件数の割合)は8.0%となり、2014年の契約件数94万件、普及率4.9%から増加基調である。
ペット医療の分野では、飼い主の住居に近い「かかりつけの動物病院」で診療(一次診療)を受けるのが一般的だが、飼い主の間に「動物にも人間と同じように高度な医療を受けさせたい」として、高度医療(二次診療)に対するニーズが一段と高まっている。
獣医師の診療報酬は自由診療であり、それぞれの動物病院が個々に設定しているが、高度医療では検査・診療・手術費が高額になることが多いため、高度医療に対するニーズの高まりととともに、ペット保険に対するニーズも高まっている状況だ。
ペット保険の普及率は2017年で8.0%に過ぎず、今後の上昇余地が大きい。
同社の場合、現在は来院数の約25%が保険契約者となっているようだが、ペット保険の契約件数増加や普及率上昇が一次診療施設からの紹介件数の増加につながる可能性が高いだろう。
2. 動物医療業界の総合的企業を目指す
成長戦略としては、拠点の拡大、対外活動の強化、人材の確保・育成、新規事業の拡大を掲げている。
拠点の拡大に関しては、全国主要都市への施設展開を推進して紹介受入体制を強化する。
2018年1月の東京病院開業で首都圏東部・北部からの紹介受入を強化した。
2020年春以降には大阪病院(仮称)の開業を計画(総投資額約17億円の計画で土地取得済み)している。
その後は東名阪の拠点を中心に、連携病院数や紹介件数の増加を加速させる方針だ。
なお大阪病院(仮称)開業によって大型の設備投資が完了し、その後の拠点展開に要する設備投資額はやや小型化する見込みだ。
対外活動の強化に関しては、学会発表やセミナー開催などの学術活動、地域の動物病院との連携を継続的に推進し、連携病院数や紹介件数の増加を加速させる方針だ。
2019年3月期の初診件数は、2018年1月開業した東京病院の受入強化も寄与して前期比22%増を目標としている。
人材の確保・育成に関しては、大学・専門学校・各種団体との関係強化や人脈形成に尽力し、採用活動を積極的に実施する。
新規事業に関しては、動物医療における診療以外の領域で、患者動物・飼い主・一次診療施設をサポートする新規事業の拡大を推進する。
このうち機器販売では、呼吸・脈拍などを非接触型センサーで自動測定して異常を検知する病院向け患者動物見守りシステム「CLAIRVO(クリアボ)」や、首輪に装着して健康状態を測定する飼い主向け動物用活動量計「プラスサイクル」などの開発・拡販を推進する。
こうした戦略の積極推進によって、動物医療業界の総合的企業を目指す方針だ。
3. 中長期的に成長期待
動物高度医療の市場拡大余地は大きく、高度医療サービスを提供できる総合動物病院の強みを生かしながら、拠点拡大など積極的な事業展開で中長期的に成長が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)