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ワコム Research Memo(9):利益重視経営への転換と経営判断の質の向上を目指す新たな取り組みを発表

発行済 2017-06-06 16:08
更新済 2017-06-06 16:33
ワコム Research Memo(9):利益重視経営への転換と経営判断の質の向上を目指す新たな取り組みを発表
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■中長期の成長戦略

1. 2018年3月期からの新たな取り組み
ワコム (T:6727)は2015年4月に「ワコム戦略経営計画 SBP-2019」(中期経営計画)を策定し、取り組んできた。
しかし、2016年3月期及び2017年3月期の業績がSBP-2019で掲げた業績計画から大きくかい離したことを受け、2017年3月14日に「当社グループの新たな取り組みについて~利益重視経営への転換による中期的な企業価値の成長を目指して~」(以下、“新たな取り組み”と略す)を発表し、SBP-2019の取り下げと、今後の対処方針を公表した。


同社は対処方針として大きく2つを挙げている。
1つは利益重視経営への転換を目指してのコスト構造の改善だ。
もう1つは経営判断の質の向上だ。


コスト構造の改善における具体的なアクションとして2つ取り上げられている。
グローバル業務基幹システム導入はSBP-2019の業績計画を前提にし、その収益で投資リターンを回収する立て付けであったため、SBP-2019の取り下げに連動して導入計画も中止された。


グローバル組織体制もまたSBP-2019の重要施策の1つであり、マーケティング、販売及びオペレーションという企業運営の骨格部分に関し、従来の地域別からビジネスユニット(事業部)別に変更した。
この基本的ビジネスモデルを維持しつつ、非効率な組織やコスト構造の最適化を進めるとしている。


経営判断の質の向上に向けた取り組みの2つの施策は、『取締役会の議論が建設的に進められることに加えて、経営陣の世代交代が健全に行われるように』するためのものだ。
指名委員会は役員等について候補者の選定基準を定め、選定に関する提言を取締役会に対して行うという役割を担うことになる。


取締役会議長の選任方法の見直しは、現状は、定款で取締役社長が議長を担当すると定めてある点を、取締役会の決議によって他の取締役を議長に選任できるよう変更するということだ。


また、上記の各取り組みや具体的アクションを積極的に進めるための土台として、経営トップの交代予定についても発表された。
現代表取締役社長兼CEOの山田正彦(やまだまさひこ)氏は、今期の業績見通しの達成を目指して経営に取り組むとともに、後任候補者に経営ビジョンと経験の引き継ぎ作業を進めていくことになる。
後任候補者は指名委員会によって、今期中(秋頃を目途)に選定される見通しだ。
SNP-2019の後継となる中期経営計画は後任代表取締役候補が中心となってとりまとめ、2018年5月の発表を目指すことになる。


2. “新たな取り組み”をどう考えるか
同社が“新たな取り組み”をリリースするに至った背景と、2017年3月期の業績面に関するいくつかの事象とをつなぎ合わせて考えると、以下のようなポイントが浮かび上がってくる。


(1) 新製品効果の伸び悩みとその対処について
前述のように2017年3月期の業績の不振は大きくは円高とブランド製品売上の伸び悩みの2つだ。
このうちブランド製品売上の伸び悩みの原因として、新製品投入タイミングの遅れや品質問題の発生が挙げられている。
こうした状況を引き起こした要因として想定されるのが、同社の人的・物的キャパシティを超えた新製品投入計画が行われたのではないかということだ。


前述の取締役会議長の選任方法変更という施策からは、次期代表取締役の時代にはトップダウン方式からチームの議論で経営判断を決定していく体制へと移行する可能性を感じ取ることができる。
チーム運営体制の方が質の高い判断ができるというエビデンスはないが、より多くの英知を集めて十分に議論を尽くすことにより業務効率の改善と質の向上を達成することで、将来的にオーバーキャパシティとなる状況を回避できる可能性が高まり、それが結果的にミスの少ない経営へとつながっていくと弊社では考えている。


(2) グローバル組織体制とその対処について
2017年3月期決算において、売上高が四半期ごとに期を追って計画を下回っていくなか、販管費は期初の見通しからほとんど削減が進まなかったとみられる。
この要因について弊社では、グローバル組織体制における地域別組織からビジネスユニット別組織への移行において、会社の想定通りに進んでいない部分があることが理由だと考えていたが、“新たな取り組み”のリリースの文面からもそれが裏付けられた。



その上で同社は、ビジネスユニット制の基本モデルは維持するとしている。
この点は妥当な判断だと弊社では考えている。
再度地域別組織に戻すのはかえって混乱とコストアップを招く可能性があると考える。
ただ、現に走り出したビジネスユニット制への移行をスムーズに完遂するための具体策などには言及されておらず、“非効率な組織やコスト構造の最適化を進める”としている。
グローバル組織体制の最適化は、来年度の新中期経営計画の策定を待つ必要はなく2018年3月期において着実に進めていくべき事項だけに、同社が今後どのようなアクションを取ってくるか見守りたい。


(3) グローバル基幹業務システムの導入計画見直しについて
これについては未完成のソフトウェア仮勘定分について2017年3月期において減損損失を計上しており、2018年3月期には引きずらないと考えられる。
ただし完工部分についての減価償却費については、2018年3月期はフル寄与となるため、前期比増加が見込まれる。
しかし、この分は前期に肥大した外注費の削減などで十分吸収可能だろう。


同社がリリースした“新たな取り組み”は、法律に当てはめて考えると、手続きやスケジュールを定めたプログラム法に相当するものであり、実体法に相当する中期経営計画の登場は2018年5月を待たなければならない。
したがって、“新たな取り組み”自体を評価するのは難しいが、経営トップの交代にまで踏み込んでいる点で、意義のあるプログラム法と言えると弊社では評価している。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

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