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カナミックネットワーク (T:3939)は、医療・介護・子育て関連情報サービスをクラウドで提供する会社である。
経営理念は「超高齢社会の地域包括ケアをクラウドで支える」。
そのサービスの特徴は、特定地域の中で、医療と介護の枠を越え、法人や職種の枠を越えて情報共有できるプラットフォームを提供している点にあり、国が推進する地域包括ケアの具現化に不可欠なものである。
現在477地域※で導入されており、地域全体のプラットフォーム導入数では圧倒的な業界No.1である。
2016年9月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場した。
※自治体や医師会単位での導入。
1. 事業概要
同社が手掛けるサービスは、「カナミッククラウドサービス」と「コンテンツサービス」と「その他サービス」の3つに分類され、主力のクラウドサービスが売上の8割以上を占める。
同社のクラウドサービスは「情報共有プラットフォーム」と「介護業務管理システム」の2階層から構成され、相互に連携して地域内での医療・介護連携を支援する点に特長がある。
東京大学との共同研究により開発され、千葉県柏市の地域包括ケアで実証されたモデル(柏モデル)の中で磨かれてきたという点、特許「介護支援システム及び介護支援プログラム(特許番号4658225号)」を取得している点で、この仕組みにおける実効性及び独創性は折り紙付きだ。
クラウドサービスは、典型的なストックビジネスであり、売上が安定して積み上がり、損益分岐点を超えた現在、収益性が非常に高いのが特徴である。
2. 業績動向
2017年9月期第2四半期の業績は、売上高が前年同期比9.3%増の630百万円、営業利益が同23.1%増の170百万円、経常利益が同23.2%増の170百万円、四半期純利益が同21.1%増の106百万円と増収増益となった。
売上高が前年同期比で9.3%増加したのは、主力のクラウド事業が順調に拡大していることが大きい。
その他事業において行政関連の受注案件の期ずれにより減収が発生していたが、それをカバーして増収を確保した。
経常利益が170百万円(前年同期比23.2%増)と増加し、期初予想の139百万円を大きく上回ったのは、収益性の高いクラウド事業の比率が高まったことが要因である。
経常利益率27.0%は特筆すべき高水準である。
2017年9月期通期の業績は、売上高が前期比12.5%増の1,270百万円、営業利益が同6.0%増の280百万円、経常利益が同11.0%増の280百万円、当期純利益が同3.0%増の170百万円と期初の予想を据え置いた。
売上高に関しては、主力のクラウド事業が順調に導入地域を増やしており、全社業績を力強くけん引する。
通期売上高予想に対する第2四半期進捗率が49.6%となっており、ストック型ビジネスであることを加味すれば予想を超えてくる可能性が高い。
一方、各利益に関しては、第2四半期進捗率が60%を超えているにもかかわらず、下期も成長のための投資(主に人件費)を継続するために、期初予想を変えていない。
3. 成長戦略
主力のカナミッククラウドサービスのユーザー数の拡大は、コンテンツ広告収入の拡大につながる。
また将来的には、ユーザーを増やすことでビッグデータの価値を上げ、それを活用することで関係者にとってのプラットフォームの価値を高め、さらにクラウドサービスを拡販する、という好循環を生み出したい考えだ。
同社は、2017年2月に、総務省が実施する「IoTサービス創出支援事業」に係る介護分野での委託先候補に選定された。
目的は、介護施設において多様な医療・介護センサデータを日々蓄積し、効果的に活用することで、利用者一人ひとりにとっての質の高い介護及び介護スタッフの負担を軽減する業務モデルを実証することである。
具体的には、IoT機器(オムツセンサー、ベッドセンサー、トイレセンサー、エアコンセンサーなど)からのバイタルデータなどを取得し、ビッグデータ化し、AIを活用して解析することによりサービスを個別化・高度化するという流れを構想している。
ここでの成果は全国におけるスタンダードとなる可能性が高く、同社にとって大きな機会になる。
■Key Points
・東京大学との共同研究で誕生した“柏モデル”の情報共有プラットフォームが強み
・クラウドサービスがけん引し増収増益、経常利益率は27%の高水準
・クラウドユーザーの拡大、広告拡大、ビッグデータ活用の相乗効果を狙う
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)