■ベネフィット・ワン (T:2412)の事業概要2. 会員数の推移ユーザー課金型ストックビジネスモデルであることから、会員数が積み上がるにつれて業績も拡大する。
累計会員数は、多角化の効果もあり順調に会員数を拡大してきた。
2019年9月の総会員数は781万人。
その内訳は、福利厚生会員が522万人、CRM会員が118万人、パーソナル会員が141万人であった。
総会員数は、2020年4月以降の拡大加速を予想している。
大幅増加を予想する背景には、働き方改革がある。
働き方改革法により、同一労働同一賃金が大企業において2020年4月から、中小企業は2021年4月から適用される。
同一労働同一賃金は、賃金だけでなく、福利厚生、キャリア形成・能力開発などが対象となり、非正規労働者に対しても従業員並みの福利厚生を提供することが求められる。
大企業の一部は先取りして、2020年3月期中に導入するだろうが、多くは2020年4月からのスタートとなるだろう。
3. 事業概要同社は、国内において福利厚生事業、パーソナル事業、CRM事業、インセンティブ事業、ヘルスケア事業、購買・精算代行事業、ペイロール事業を手掛ける。
このうち、福利厚生事業、パーソナル事業及びCRM事業が、ユーザー課金型サービスマッチングサイトである「ベネフィット・ステーション」を共通した経営資源とする。
ユーザー課金制であるため、サービス提供企業から他サイトのように広告料を徴収せず、その分を割引価格という形でユーザーに還元する。
そのため、ユーザーは利用すればするほど、割引メリットを得られることになる。
2019年3月期の連結売上高34,461百万円の事業別構成比は、福利厚生事業が47.8%、パーソナル事業が8.5%、インセンティブ事業が10.1%、CRM事業が1.4%、ヘルスケア事業が27.3%、購買・精算代行事業が2.0%、海外事業が1.0%であった。
2019年3月期までの3期間の年平均成長率は、福利厚生事業が5.8%の安定成長を遂げ、インセンティブ事業が12.5%、ヘルスケア事業が30.3%の高伸長を見せた。
パーソナル事業は、大口協業先の営業方針変更等が響き、-6.1%となった。
ヘルスケア事業は、健康経営・予防医療を後押しする国策が追い風となった。
営業利益は、BtoBの福利厚生事業、BtoCのパーソナル事業とCRM事業が、「ベネフィット・ステーション」を共有していることから、合算された区分となる。
同区分は、2019年3月期の営業利益7,641百万円の90%弱を占め、売上高営業利益率は全体の22.2%を上回る34.1%を達成している。
法人会員増による会費収入の増加と、経費コントロールの徹底により、収益改善に成功している。
インセンティブ事業は、主要顧客のポイント付与・交換が減少したことにより減益となったが、顧客基盤は拡大した。
ヘルスケア事業は、大型受注案件を順調に消化し、オペレーションの改善も図られたことから増益、利益率も改善した。
健康診断料が売上高に含まれることもあり、売上高営業利益率は平均より低い7.1%にとどまる。
CRM事業、購買・精算代行事業の構成比率は相対的に低く、システムの開発負担等もあり収益への寄与はまだ小さい。
海外事業は先行投資期にあるが、シンガポールや中国において取引が伸びてきおり、北米でも大型受注に成功している。
4. 各事業の内容(1) 福利厚生事業主力の福利厚生事業は、会員優待サービスが140万件以上あり、2019年9月時点で導入団体数は1万団体を超え、利用者数は522万人に上る。
少人数から利用できるため、中小企業の利用も多い。
同社のサービスは、企業と従業員の双方にメリットがある。
会員企業は、多種多様な福利厚生制度の構築や運用にかかる面倒な事務作業の手間を軽減することができる。
複数拠点で事業を運営する企業の地域間格差や世代間格差を縮小できる。
従業員が人生のあらゆるシーンで利用できる、豊富なサービスメニューをそろえている。
ユーザー課金型サービスのため、常にユーザー側に立った、ユーザーの課題を解決するサービスを提供するようにしている。
(2) パーソナル事業パーソナル事業は、主に協業企業の顧客向けに「ベネフィット・ステーション」を提供しており、協業先とのレベニューシェアになる。
BtoCを実現するためには、月額固定の会費を徴収する機能が必要であるため、そのような機能を有する企業とアライアンスしている。
協業先は、携帯キャリアやフィットネスクラブ、不動産仲介会社等になる。
パーソナル事業の会員数は、2016年4月に227万人と3年間で3.3倍に増加した。
ただ、大口協業先が営業方針を変更したこと等により会員数の減少が継続し、2019年4月の会員数は136万人となった。
2019年9月に141万人に持ち直し、新規協業等により底打ち感が出てきた。
シニア層、子育て層、若年層を重点ターゲットとした既存協業先との施策テコ入れや新規協業開始により、上昇トレンドへの復帰を見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)