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クオールHD Research Memo(9):マンツーマン薬局と親和性の高い「地域連携薬局」認定取得を進める方針(1)

発行済 2019-12-13 16:11
更新済 2019-12-13 16:21
© Reuters.  クオールHD Research Memo(9):マンツーマン薬局と親和性の高い「地域連携薬局」認定取得を進める方針(1)
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■中長期の成長戦略と進捗状況2. 保険薬局事業の成長戦略と進捗状況調剤薬局ビジネスをめぐっては、薬機法改正が今まさに進行している。

これは各社の成長戦略や競争優位性に影響を与える可能性があり、将来のある時点で振り返った時に、「2019年の薬機法改正が業界再編本格化のトリガーだった」と言われるような、それだけのインパクトのある法改正だと弊社では考えている。

以下では、薬機法改正のポイントと、それに対するクオールホールディングス (T:3034)の成長戦略や優位性について考えてみたい。

(1) 薬機法改正のポイント今回の薬機法改正案では薬剤師・薬局のあり方の見直しが行われたが、その前置きとして「住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための」という表現で見直す理由が明確に示されている。

ここに至った背景には、医薬分業が進んだ(処方箋受取率が2018年度で74.0%と70%を超えている)ものの、患者本位の医薬分業とはなっていない、本来の医薬分業の効果・機能として期待されたものが発揮されていない、などの現状認識が成されていることがある。

薬局・薬剤師に関わる具体的な法律改正の内容としては、1)機能別薬局として「地域連携薬局」及び「専門医療機関連携薬局」の導入、2)薬剤師による継続的な服薬状況の把握及び服薬指導の義務の法制化、3)テレビ電話等による服薬指導の導入、4)薬局における法令順守体制の整備、の大きく4点が挙げられる。

いずれも重要であるが、特に重要かつ、調剤薬局事業者に影響が大きいと考えられるのは1)の2つの機能別薬局類型の導入だ。

厚労省は2015年に「患者のための薬局ビジョン」を策定・公表している。

その中で薬局に求められる機能の具体的な在り方として、「かかりつけ薬剤師・薬局」並びに「高度薬学管理機能」が示されており、今回の薬機法改正はそれを制度化したものと言える。

その意味では、今回の2類型の導入は既定路線という見方もできるが調剤事業者の影響は決して少なくない。

第1に懸念されるのは、2類型のどちらかに認定された薬局(以下では便宜上、“認定薬局”と表現する)と非認定薬局(当初は大多数の薬局は非認定薬局になると弊社ではみている)との間で、ランク付け(あるいは“格差”の発生)が生じ、集客・売上の面で大きな差が生じる可能性があることだ。

そもそも、2類型導入の目的が“患者が自身に適した薬局を選択できるようにする”というところにあるため、認定薬局の特長や機能について、国が率先して広報活動を行う可能性すらある。

その結果、患者が認定薬局を志向する傾向が強まった場合には認定か否かで大きな差が出る可能性がある。

典型例としては、ある病院の前に軒を連ねる門前薬局の中で、認定薬局か否かで淘汰が進むというケースが考えられる。

第2は、その認定の取得のハードルが想定以上に高くなる可能性だ。

認定基準は厚労省令で定められることとなっている(認定自体はそれに基づき都道府県知事が行う)。

その詳細は明らかになっていないが、「患者のための薬局ビジョン」が掲げる健康サポート薬局やかかりつけ薬局はそのまま残る方向のようだ。

そうなると、それらと新規導入の認定薬局との関係性や役割・メリットの違い等を明確にする必要が出てくるだろう。

それが認定条件の厳しさという形で現れると、調剤薬局事業者の負担は増し、認定薬局の数がなかなか増えないということになる。

一例として、既に法改正の議論のなかでも、「病院勤務を経験せず重篤な副作用の症状を経験したことのないような薬局の薬剤師が高度薬学管理機能の看板を掲げることはいかがなものか」という指摘が出ている。

こうした流れを素直に読み解くならば、認定薬局で勤務する薬剤師には相当の経験・スキルや資格などが要求されるのではないかと考えられる。

これら以外にも改正法の施行に伴い様々なハードルが浮上してくる可能性がある。

他方、テレビ電話等による服薬指導の導入などは新たな収益機会や業務の効率化につながると考えられ、プラス方向の改正となる可能性がある。

今回の薬機法改正を受けて投資家の視点から考えるべきポイントは、様々な薬局(大手チェーン・中小規模の法人・個人経営の別、大型店・小規模店の別、門前薬局・面対応薬局の別、調剤薬局・ドラッグストアの別、など切り口は多面的)の中で、最初にふるい落とされていくのはどういう薬局かということだ。

弊社ではかつて、単純に経営体力の弱い個人経営の店舗から消滅していくとみていた。

しかし調剤報酬改定を通じた厚労省の政策誘導の経緯やこれまでの実績などを見ると、生き残りという点では個人薬局は決して脆弱な存在でもないと見方が変わりつつある。

一方、今般の薬機法改正を見ると、それへの対応を進めることが個々の店舗の負担増大につながることが想定される。

個人薬局はそうした対応を最初から切り捨てることも可能だが、大手チェーンを始め、一定規模以上の法人は、その“看板”ゆえに無理をしてでも対応しようとする(認定薬局を目指そうとする)ことが想像される。

これはかなり経営リスクをはらんだ取り組みだと弊社では考えている。

コンビニエンスストアの経営が大きな転機を迎えている現状と重ねれば理解しやすいだろう。

店づくりの理念や他社と差別化がしっかりできていない事業者はこうした制度や環境の変化に振り回されて疲弊し、退場を迫られることになる可能性は大いにあると弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)

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