[東京 4日 ロイター] - 三洋化成工業 (T:4471)子会社のAPB(東京都千代田区)は4日、世界初の次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」の量産化に向け、80億円の資金調達を実施したと発表した。福井県越前市に取得した工場用地で2021年に量産開始、23年頃には1ギガワット時の生産能力への引き上げを目指す。
資金は、JFEケミカル(東京都台東区)、JXTGホールディングス (T:5020)、帝人 (T:3401)など7社が出資した。三洋化成の安藤孝夫社長は「ほかにも出資を検討している企業がある」としたほか、政府からの支援にも期待を示した。
「全樹脂電池」は、リチウムイオン電池の集電体などの主要部材を、金属から樹脂に置き換えたもの。従来の電池に比べて大容量なほか、製造プロセスがシンプルなことなどから低コストで安全性も高い。大量生産時の製造コストは、既存電池の90%減にもなるという。
日産自動車 (T:7201)の電気自動車「リーフ」のリチウムイオン電池開発を担ったAPBの堀江英明CEOは「究極の電池の形」と述べ、太陽光発電や風力発電による電気をためるための定置用電池市場への参入を計画していることを明らかにした。電気自動車用については「技術的には可能」としながらも「強いて競争が激しい分野に入る必要はない」と述べ、当面は距離を置く考えだ。
「全樹脂電池」は、堀江氏と三洋化成が2012年に共同研究を開始。18年に要素技術を確立し、堀江氏がAPBを設立した。19年には三洋化成とAPBが資本・業務提携し、子会社となった。
(清水律子)