日経平均は5日続落。
78.70円安の16923.34円(出来高概算14億1000万株)で前場の取引を終えている。
16日の米株式市場でNYダウは大幅反落し、2997ドル安と過去最大の下げ幅を再び更新。
下落率は12.9%に達した。
連邦準備理事会(FRB)が緊急利下げしたものの、逆に投資家の恐怖感につながり、取引開始直後に「サーキットブレーカー」が発動されて取引が一時停止。
さらに、トランプ大統領が会見で新型コロナウイルスによる危機が7-8月頃まで継続する可能性があると警告すると、下げ幅を一段と広げ安値圏で引けた。
本日の日経平均もこうした流れを引き継いで275円安からスタートしたが、前日に日銀の黒田総裁が強調した上場投資信託(ETF)の買い入れ増額への期待から切り返し、一時17557.04円(555.00円高)まで上昇。
しかし、アジア株が軟調なことから再びマイナス転換するなど荒い値動きだった。
個別では、ソフトバンクG (T:9984)や武田薬 (T:4502)が2%超下落したほか、三菱UFJ (T:8306)、ファーストリテ (T:9983)、東エレク (T:8035)なども軟調。
コマツ (T:6301)は世界的な景気悪化による建設機械の落ち込みが警戒され、5%の下落となった。
前期業績を下方修正したJフロント (T:3086)、2月既存店売上高がネガティブ視されたイオンファン (T:4343)も売られ、ミサワ (T:3169)などが東証1部下落率上位に顔を出した。
一方、ソニー (T:6758)や任天堂 (T:7974)が大きく上昇。
外出手控えによるゲーム機需要の増加が意識されたようだ。
トヨタ自 (T:7203)やOLC (T:4661)も上げが目立った。
決算発表銘柄ではツルハHD (T:3391)が買い優勢で、エニグモ (T:3665)はストップ高を付けた。
セクターでは、保険業、鉱業、不動産業などが下落率上位。
半面、電気・ガス業、水産・農林業、パルプ・紙などが上昇率上位だった。
東証1部の値下がり銘柄数は1055、対する値上がり銘柄数は1043とほぼ拮抗した。
本日の日経平均はここまでで既に上下の値幅1178.10円と荒い値動きになっている。
前日に日銀は前倒しで開いた金融政策決定会合でETF購入額を年12兆円に倍増することなどを決め、黒田総裁も会見で買い入れを強化する姿勢を打ち出した。
日経平均の朝安後の強い切り返しに、市場では「前場から買い入れを実施している可能性がある」との声も聞かれた。
なお、東証株価指数(TOPIX)は0.37%の上昇で前場を折り返しており、取引終了後の日銀発表でETF買い実施が確認されれば、従来の姿勢を大きく変更したとして注目されるだろう。
ただ、前日もモルガン・スタンレーMUFG証券やJPモルガン証券といった外資系証券がTOPIX先物を大きく売り越していた。
先週末の当欄でも指摘したが、依然として海外投資家の売り圧力が強いことが窺える。
3月第1週(2-6日)の外国人投資家の現物株と株価指数先物を合わせた売り越し額が1兆1000億円超に上ったことを踏まえると、日銀のETF買い増額でも相場を大きく押し上げるまでに至るかは不透明だ。
米国ではNYダウが3000ドル近い大幅下落となったが、金融市場では既にマーケットメーク機能に支障が出ているもようで、買い持ち高を抱え動けないファンドもあるようだ。
解約停止などの動きが出てくれば、市場の不安心理はさらに増大する可能性がある。
トランプ氏が夏場まで新型コロナ危機が続く可能性を示唆したことも金融市場や実体経済に重くのしかかる。
世界的に金融緩和の動きが相次ぐが、従前より述べているとおり市場が安定を取り戻すのは遠いと考えざるを得ない。
(小林大純)