[チューリヒ/ロンドン 30日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が深刻なリセッション(景気後退)に陥るリスクにさらされる中、ユーロ圏の銀行は当局の指示に従って相次いで株主への利益還元を停止している。
一方、スイスや米国の銀行は配当支払いを実施する姿勢を崩していない。
欧州中央銀行(ECB)は前週、ユーロ圏の金融機関に対し、新型ウイルスによる損失に備え、少なくとも10月までは配当支払いや自社株買いを停止して資本を温存するよう指示。この措置で300億ユーロ相当の資本が節減できるとした。
イタリアのウニクレディト (MI:CRDI)は29日、2019年配当の支払いと自社株買いを停止すると発表。
オランダのABNアムロ (AS:ABNd)やING (AS:INGA)は、少なくとも10月1日まで配当を停止する方針を示した。
オランダのラボバンクやベルギーのKBC (BR:KBC)も同様の措置を発表した。
ドイツのコメルツ銀行 (DE:CBKG)は19年配当に関する提案を行わない方針を示した。
金融危機の際に国際支援を受けたアイルランドでは、バンク・オブ・アイルランド (I:BIRG)とアライド・アイリッシュ銀行
フランスのクレディ・アグリコル (PA:CAGR)とナティクシス (PA:CNAT)は数日中に取締役会を開き、この問題を協議する。BNPパリバ (PA:BNPP)とソシエテ・ジェネラル (PA:SOGN)は、ECBの声明を精査しているとした。
国際決済銀行(BIS)のカルステンス総支配人は29日、新型ウイルスの感染が広がる中で「世界的に銀行の配当・自社株買いを凍結」する必要があると訴えた。
しかし、一部の金融機関は株主還元計画を続行する意向だ。スイスの銀行は当局の指示に反して配当を支払う方針を示した。英金融機関は現時点で方針を明らかにしていない。米国では大手8行が自社株買いを停止したものの、配当を削減する動きは出ていない。
スイスのUBS (S:UBSG)は30日、19年の配当を支払う方針を明らかにした。クレディ・スイス (S:CSGN)も配当計画を変更する予定はないとした。連邦金融市場監督機構(FINMA)やスイス政府は金融機関に配当を制限するよう指導している。
イングランド銀行(中央銀行)は金融機関に対し、景気刺激策で得た資金を株主のために使わないよう警告しているが、現時点で配当について指針は示していない。
バークレイズ (L:BARC)は4月3日に総額約10億ポンドの配当支払いを控えている。HSBC (L:HSBA)は4月14日に、政府が現在も60%以上の株式を保有するロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)も5月4日に、それぞれ配当支払いを予定している。