[キャンベラ 19日 ロイター] - 豪通信大手テルストラは19日、太平洋地域の携帯通信最大手デジセル・グループの太平洋部門買収に向け交渉していると明らかにした。豪政府が買収資金の大半を拠出する方針を示しており、同地域における中国の影響力拡大を阻止するための政治的な動きとみられている。
デジセルはパプアニューギニアの携帯通信市場の支配的なシェアを持ち、パプアのデータサービス拡大に向け豪政府の資金で敷設された「コーラル・シー」海底ケーブルを活用する見通し。
デジセルの先行きを巡っては、この数カ月間、市場やメディアの関心が高まっていた。デジセルは昨年、中国国有の中国移動に太平洋部門を売却することを検討しているとした豪紙報道を否定した。
太平洋地域で米同盟国と中国との戦略的競争が激化する中、デジセルが中国企業に売却されれば、豪政府にとって大きな懸念要因となる。
豪シンクタンク、ロウイー研究所の太平洋諸島プログラム・ディレクター、ジョナサン・プライク氏は「デジセルは太平洋で最も重要なプレイヤーで、豪政府は中国の手に渡ることは認められない戦略的資産と捉えている」と分析した。
豪外務貿易省の報道官は「上場企業が進めている未完了の商業上の交渉」にコメントするのは適切ではないとしながらも、「インフラ開発での提携は太平洋ステップアップ構想の重要な柱だ」と発言。政府は太平洋のインフラに投資する企業を支援するとし、「通信インフラは地域全体の経済で重要な役割を果たす」と述べた。
ロイターは在豪の中国大使館にコメントを求めたが、現時点で返答は得られていない。業務時間外のため、デジセルからのコメントも得られていない。
テルストラは「商業的に魅力的な資産であり、域内の通信にとって極めて重要なデジセル・パシフィックを巡って、テクニカル的なアドバイスを提供する」との申し出が豪政府からあったと説明。「当社がこの取引を進めるとすれば、豪政府による財務支援や、戦略的なリスクマネジメントのサポートを得てのことになる」とした。
金額など詳細は明らかになっていないが、豪メディアによると、買収額は20億豪ドル(15億米ドル)になる見通しで、豪政府が約15億豪ドルを支払うとみられる。