執筆 Sam Boughedda
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、インフレのリスクが高まっており、景気回復を支えるために債券購入の縮小ペースを早める可能性があると発言したことを受けて、火曜日の株価は暴落した。
パウエル議長は上院銀行委員会で、FRBのインフレに関する発言から「一過性」という言葉を削除する時期に来ていると述べたが、物価上昇は一時的なものであり、いずれは緩和されるとの見解は撤回していない。
モデルナ社のCEOはフィナンシャル・タイムズ紙の取材に対し、「既存のコロナ・ワクチンは、新型のオミクロン株に対する有効性はかなり低い」との見方を示したことにより、火曜日の金融市場のリスク・センチメントは悪化の一途を辿った。
米国株式市場が引けるまで残り30分だが、ダウ平均株価は600ポイント以上下落している。
米国経済の回復を示す兆候があったにもかかわらず、オミクロン株の出現は市場に水を差す形となった。世界各地で渡航制限が行われているが、今のところ対象となっているのはオミクロン株が確認されたアフリカの一部の国からの渡航者に限られている。
しかし、渡航制限の長期化を懸念して、旅行・レジャー関連企業の株価は低迷したままだ。
また、11月の米国消費者信頼感指数は、生活費の高騰やパンデミックへの懸念から低下した。
水曜日の市場に影響を与える可能性のある3つの事柄を紹介する。
1. パウエル議長の言葉
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、債券のテーパリング(量的緩和策の縮小)を前倒しし、より速い縮小ペースで資産購入を完了させることを示唆したことで、火曜日には米ドルが他の主要通貨に対して大きく上昇した。水曜日に入れば同氏の声明が市場にもたらす影響について投資家はより知ることになるだろう。
パウエル議長は上院銀行委員会で、「現時点で経済は非常に好調であるが、インフレ圧力も高まっており、資産購入の縮小ペースを、現行よりもおそらく数ヶ月早く終えることを検討するのが適切であると考えている』 と述べた。
FRBは11月の会合で、債券購入額を毎月150億ドルずつ削減すると発表している。
さらにパウエル議長は、長期に渡ってインフレ・リスクが高まっているとし、この状況は来年までは続くと予想している。しかし、引き続き基本シナリオとしては2022年にかけて下降に転じるとしている。
2. 原油価格
主要産油国は今週、1月の生産量計画について会合を開く予定である。米国や他の国々がガソリン価格を下げるために国家備蓄から石油を放出することに対抗して、生産量を下げるのではないかと予想されている。しかし、ここ数日のオミクロン株の発生によって、原油価格の低下はすでに起きている。
先週新たに発見されたオミクロン株の発表以来、原油価格は急落し、世界的に経済成長への懸念が高まっている。原油は火曜日にさらに6%下落し、1バレル70ドルを下回った。
3. 話題の医薬品
モデルナ社 (NASDAQ:MRNA)は、CEOのStephane Bancel氏がFinancial Timesの取材に対し、既存のコロナワクチンはオミクロン株への有効性に乏しく、その効果が「著しく低い」と予測したことで、火曜日に同社株価は3.5%の下落を記録した。
他の製薬会社も苦戦を強いられている。Regeneron Pharmaceuticals Inc (NASDAQ:REGN)は、火曜日に声明を発表し、同社のコロナ抗体カクテルのオミクロン株に対する有効性が低いことを示唆する分析結果をアナリストが示した後、1%以上下落した。メルク・アンド・カンパニー・インク社(NYSE:MRK)の株価は、同社の抗ウイルス剤の認証を検討している米国食品医薬品局での諮問委員会の開催を控え、様子見姿勢となっており、0.6%の下落に留まった。