[東京 9日 ロイター] - ANAホールディングスの新社長に4月1日付で就任する芝田浩二専務執行役員は9日、ロイターとのインタビューに応じ、ウクライナ危機による業績への影響は現状大きくないとの見方を明らかにした。ロシア上空の飛行回避に伴うコスト上昇は企業努力で吸収できない場合に限り、値上げを検討する意向だ。
芝田氏は「(ウクライナ危機が)いつまで続くかに尽きる」とした上で、現在は国際線の旅客需要が新型コロナウイルス感染拡大前の1割以下と小さく、「業績に影響を極端に大きく与えるような状況ではない」と述べた。
航空各社はロシア上空を避けて運航しており、傘下の全日本空輸も欧州線の飛行ルートを中央アジア上空を通る南回りに変更した。遠回りとなり燃料などのコストがかさむが、芝田氏は「できる限りの企業努力をして路線を維持する」とし、「どうしても耐え切れない場合は運賃で若干の(転嫁の)お願いをしないといけないという状況になるかもしれない」と語った。
南回りルートについては、全日空がコロナ前にイスタンブールへの就航を計画しており、知見があったため迅速に準備でき採用したが、「選択肢はもう少し研究してもいい」とも話した。日本航空は米アラスカ州上空を通る北回りルートに変更している。
一段と進む原油高の影響については、国際線は「燃油サーチャージ(燃料価格に追随する運賃とは別建ての料金)で一定程度のカバーが効く」と説明。国内線は「ヘッジを活用する」ことで影響を最小化するとした。原油高の状態が「極端にぶれたり極端に期間が長くなると話はまた違ってくるが、足元では相応のヘッジができており、「ヘッジは2022年度分を含めて一定程度進んでいる」と述べた。
コロナで激減した旅客需要回復の見通しは、国内線は「今夏には(流行前の水準に)戻るのでは」と期待。国際線については入国制限やウクライナ情勢の動向次第で「2年くらいのタームで見るほうがいい」との考えを示した。ウクライナ危機という新たな懸念材料はあるが、「需要が5割、1割なり戻ってくればしっかり黒字は出せる」とみている。
貨物需要もおう盛なまま高単価が続き、旅客需要の落ち込みなどを補い業績を支えているという。ルート変更で飛行時間が長くなり燃料が増えるため、1機当たりの貨物搭載量は減る傾向にあるが、便数や機材の調整などで「需要をしっかり取り切る」と述べた。
運賃は格安航空会社(LCC)並みで別途料金を支払えば全日空並みの機内サービスを受けられる新たな中距離国際線ブランド「AirJapan」に関しては、全日空と「互いに切磋琢磨」できるとし、全日空と同じ路線を飛ぶことも「あり得る」としたほか、発着時刻などでも「十分にすみ分けができる」と語った。
コロナ禍による需要縮小を乗り切るため事業規模をいったん小さくしてきたが、「需要が戻ってきた時には生産量をしっかり回復させる」と述べ、採算が取れるなら凍結している就航計画も個々に検討して復活させる考えを示した。
(白木真紀、杉山聡 編集:久保信博)
*内容を追加しました。