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【小倉正男の経済コラム】マイナス金利・円安・補助金、保護はアニマルスピリット(野生)を殺す

発行済 2022-06-16 08:37
更新済 2022-06-16 09:05
© Reuters. 【小倉正男の経済コラム】マイナス金利・円安・補助金、保護はアニマルスピリット(野生)を殺す

■何故、日本は補助金行政になるのか

 日本の失業率だが2・5%(4月)と、一見すると凄まじい優等生ぶりである。金融ではマイナス金利、為替は超円安である。それでは株価は上昇しているのかといえば、その反対で極端な低下となっている。

 ある音響関連機械企業の事例だが、この企業は雇用調整助成金4億円を計上している。雇用調整助成金という補助金が経常利益の25%を占めている(2021年度)。

 コロナ禍の極端な事例とはいえるが、補助金が失業率の低さを裏側で支えている。「社内失業」、仕事がない社員を企業内に置いている。異様な失業率の低さは維持されている。もっとも企業サイドは、「コロナ禍に直撃されており、補助金でも何でももらえるものはもらって生き残るのが先決」と必死である。

 役人OBの同級生と一杯やった時に「何故、日本は補助金行政ばかりをやるのか」という話になった。「それは政治家にとっても役人にしても何かと都合がよいからだ」。それがアンサーだった。なるほど補助金なら選挙で票につながるかもしれない。業界団体などに再就職(天下り)の地ならしになる可能性もありうる。そういえば身近にも「GoToイート」、「県民割」そして「GoToトラベル」(7月再開意向)と飲食、旅行などにも継続的に補助金が出ている。石油元売りへの「ガソリン補助金」もある。

■保護からアニマルスピリット企業は生まれない

 市場経済による競争原理を基本とする「新自由主義」を是正するというのが岸田文雄首相の「新しい資本主義」と思われる。しかし、証券印刷機で国債、紙幣を刷りまくって補助金をバラまいていれば、市場経済による競争原理など機能しない。問題は市場経済を阻害すれば、日本の資本主義がさらに衰退していくのではないかという一点に絞られる。

 金利安、円安も「隠れ補助金」のような側面があるが、さらに雇用調整助成金などといった重宝な支援があれば、企業経営者など安泰である。「倒産」するという危機感が薄いからイノベーションなど「アニマルスピリット」(野心的な意欲・野生)は湧いてこない。反対に減殺される。動物園で飼われている動物のようなもので“3食昼寝付き”だから、アニマルであったとしてもアニマルスピリットはない。

 高度成長期のパナソニック(旧松下電器産業)、ソニー、その後のトヨタ自動車、本田技研工業のようなアニマルスピリット企業は出てこない。これらの企業は、過酷な市場競争に生死を賭けて生き残ってきた。政府(国家)の保護で成功したわけではない。むしろ、その逆で倒産(死)と隣り合わせだったからこそ生き残ったといえる。

■言われている「新しい資本主義」は「昭和の資本主義」

 岸田首相の「新しい資本主義」とは、依然として中身が曖昧というか説得力を欠いているが、どうやらその骨格は「公益資本主義」のイメージらしい。「株主資本主義」とは対極にあるコンセプトである。 (*「株主資本主義」では、企業は私益をひたすら追求すべき存在であり、結果的にはそれが公益になるという考え方だ。)

 日本企業の場合は、どちらかといえば以前から「公益資本主義」ベースでやってきたというのが事実といえる。だが、このところは急速に「株主資本主義」に転換しているのもまた事実である。いまは多くの企業が配当重視、自社株買いなどに踏み切っている。いまの産業界各社にとっては、「株主資本主義」こそが「新しい資本主義」にほかならない。

 岸田首相の思い描く「公益資本主義」は、日本ではむしろ「以前の資本主義」「昭和の資本主義」ということになる。多数の企業サイドに聞いてみたが「もう以前のような株主軽視の経営には戻れない」という意見が一般的だ。これだけ政府と産業界各社の考え方が対極にあるのもかなり珍しい。

 「新しい資本主義」の中身は曖昧さが残されたままで、立ち位置も方向性もはっきりしない。企業でいえば、ディスクローズ(情報開示)が充分なされていない。ところが突然、「インベストメント・イン・キシダです」(資産所得倍増計画)と“吹く力”が発揮されている。唐突すぎて身をのけぞらせるしかない。現状では日本資本主義の洋々たる前途はなかなか見えてこない。(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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