■業績動向
1. 2022年3月期の業績動向
i-plug (TYO:4177)の2022年3月期の連結業績は、売上高3,041百万円(前期比41.4%増)、営業利益367百万円(同17.0%増)、経常利益370百万円(同27.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益253百万円(同9.2%増)となった。
国内経済は、コロナ禍に加え原燃料高や円安などの影響から不透明な状況が続いた一方、同社が属するダイレクトリクルーティングサービス市場はコロナ禍でも企業の採用意欲が高く、順調に拡大している。
コロナ禍を契機として新卒採用のオンライン化が進み、1to1コミュニケーションの重要性が増していることから、ダイレクトリクルーティングが選択されやすい環境になりつつある。
この背景もあり、「OfferBox」の企業登録数は2021年12月末に1万社を突破した。
また、2022年卒学生は19万人が「OfferBox」に登録し、民間就職を希望する学生の約3人に1人が登録するサービスとなっている。
これらが寄与し、売上高は高成長を継続した。
利益面では、開発人員の採用に苦戦したものの、外部委託の活用など体制変更した結果、売上原価は微増にとどまった。
「OfferBox」の成長をさらに加速させるため、利用企業フォローのために営業人員を採用したほか、サービス規模拡大に向けてプロモーション投資を積極化した結果、販管費は前期比55.7%増となった。
なお、親会社株主に帰属する当期純利益の伸びがやや低いのは、留保金課税などで法人税率が例年より大きくなったためである。
サービス別の動向は以下のとおりである。
(1) OfferBox(早期定額型)
売上高は前期比52.2%増の2,066百万円となった。
2023年卒を対象に2021年3月期から取り組んできた営業部門の顧客フォロー体制を強化したことで採用成功に至る企業が増加し、早期定額型のリピート受注や平均受注単価の上昇につながった。
また、採用決定が好調に推移したことから、成功報酬型からのシフトも含め新規受注も好調であった。
(2) OfferBox(成功報酬型)
売上高は前期比42.3%増の673百万円となった。
2022年卒を対象とした新卒採用を取り巻く様々な環境から新規登録企業が増加した。
また、企業の採用意欲が高まったことから活動量が増加し、学生の内定決定も好調に推移した。
(3) eF-1G(適正検査)
売上高は前期比3.2%増の262百万円となった。
企業の採用意欲が高まっていることから、適性検査の受検数は回復基調にある。
対面を前提とした適性検査結果を用いた企業内研修は依然として厳しい状況が続いているが、適性検査結果の個別帳票生成システムを搭載するなど対策を講じている。
(4) その他
売上高は前期比41.2%減の38百万円となった。
専門学校向けに提供しているマーク式の適性検査や他社向けにカスタマイズした適性検査のロイヤリティ収入は堅調に推移した。
しかしながら、一部サービスの契約形態を変更し、売上計上方法が総額から純額へとなったことが影響し、減収となった。
2023年3月期は、中期成長につながる積極的な先行投資を実施
2. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の連結業績見通しについて同社は、売上高4,366百万円(前期比43.5%増)、営業損失293百万円(前期は367百万円の利益)、経常損失299百万円(同370百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失384百万円(同253百万円の利益)を見込んでいる。
コロナ禍やウクライナ情勢等の影響により、日本経済だけでなく世界経済の先行き不透明感が高まっているが、日本国内の新卒採用市場は、2023年卒業予定者の大卒求人倍率が1.58倍と前年比0.08ポイント上昇し、企業の新卒採用意欲は回復傾向にある。
また、企業の採用競争の加熱化と選考活動の早期化も窺える。
コロナ禍における就職活動も3年目となり、部分的に対面での選考も再開されているが、学生にとってはオンラインでのインターンシップや選考が就職活動の中心となってきているようだ。
企業はこのような就職活動スタイルの変化への適応が求められており、従来型の大量に集めて絞り込むといった対面重視の選考の見直しが進み、オンラインの活用やそれに伴う募集時点で絞り込み、1対1のコミュニケーションを重視した選考への移行が進んでいる。
以上から、同社への需要は今後もさらに高まることが予想される。
このような環境のなかで同社は、積極的な先行投資を行って競争優位性を高めることにより、2026年卒業予定者において「OfferBox」のサービスを通じて2万人の採用決定を目指している。
具体的には、この先行投資によって、全方位かつアクティブな登録学生数を増やすとともに、企業に対しても利用を促進し採用決定に導くカスタマーサクセスの取り組みを強化し、採用成功率や成功報酬型から早期定額型への転換率、早期定額型の継続率の向上を実現し、より強固な顧客基盤を構築していく考えである。
また、地方企業や大手企業の開拓も推進する。
このほか、学生プロフィール情報や企業情報で利用者の魅力がより伝わる情報が掲載できる機能開発や、「OfferBox」上で様々な出会いを創出させる機能開発を進めることで、オファー承認件数の増加を図る。
また、学生や企業の行動データを活用し、マッチング効率のさらなる向上にも取り組んでいく。
「eF-1G」では、プロダクト開発やオペレーションの効率化、営業マーケティング機能のさらなる強化に取り組む。
新規事業の「PaceBox」では、先行投資によって垂直立ち上げを実現する方針だ。
これらの結果、2023年3月期の売上高は高水準の伸びが継続する見込みだが、新規事業である「PaceBox」への投資、「OfferBox」の営業・開発・管理体制の強化、M&Aを含む新規投資の可能性など、積極的な先行投資により営業損失となる予想だ。
ただし、先行投資が主因であることから、2024年3月期以降はV字回復し、成長期に入ることが期待できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
1. 2022年3月期の業績動向
i-plug (TYO:4177)の2022年3月期の連結業績は、売上高3,041百万円(前期比41.4%増)、営業利益367百万円(同17.0%増)、経常利益370百万円(同27.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益253百万円(同9.2%増)となった。
国内経済は、コロナ禍に加え原燃料高や円安などの影響から不透明な状況が続いた一方、同社が属するダイレクトリクルーティングサービス市場はコロナ禍でも企業の採用意欲が高く、順調に拡大している。
コロナ禍を契機として新卒採用のオンライン化が進み、1to1コミュニケーションの重要性が増していることから、ダイレクトリクルーティングが選択されやすい環境になりつつある。
この背景もあり、「OfferBox」の企業登録数は2021年12月末に1万社を突破した。
また、2022年卒学生は19万人が「OfferBox」に登録し、民間就職を希望する学生の約3人に1人が登録するサービスとなっている。
これらが寄与し、売上高は高成長を継続した。
利益面では、開発人員の採用に苦戦したものの、外部委託の活用など体制変更した結果、売上原価は微増にとどまった。
「OfferBox」の成長をさらに加速させるため、利用企業フォローのために営業人員を採用したほか、サービス規模拡大に向けてプロモーション投資を積極化した結果、販管費は前期比55.7%増となった。
なお、親会社株主に帰属する当期純利益の伸びがやや低いのは、留保金課税などで法人税率が例年より大きくなったためである。
サービス別の動向は以下のとおりである。
(1) OfferBox(早期定額型)
売上高は前期比52.2%増の2,066百万円となった。
2023年卒を対象に2021年3月期から取り組んできた営業部門の顧客フォロー体制を強化したことで採用成功に至る企業が増加し、早期定額型のリピート受注や平均受注単価の上昇につながった。
また、採用決定が好調に推移したことから、成功報酬型からのシフトも含め新規受注も好調であった。
(2) OfferBox(成功報酬型)
売上高は前期比42.3%増の673百万円となった。
2022年卒を対象とした新卒採用を取り巻く様々な環境から新規登録企業が増加した。
また、企業の採用意欲が高まったことから活動量が増加し、学生の内定決定も好調に推移した。
(3) eF-1G(適正検査)
売上高は前期比3.2%増の262百万円となった。
企業の採用意欲が高まっていることから、適性検査の受検数は回復基調にある。
対面を前提とした適性検査結果を用いた企業内研修は依然として厳しい状況が続いているが、適性検査結果の個別帳票生成システムを搭載するなど対策を講じている。
(4) その他
売上高は前期比41.2%減の38百万円となった。
専門学校向けに提供しているマーク式の適性検査や他社向けにカスタマイズした適性検査のロイヤリティ収入は堅調に推移した。
しかしながら、一部サービスの契約形態を変更し、売上計上方法が総額から純額へとなったことが影響し、減収となった。
2023年3月期は、中期成長につながる積極的な先行投資を実施
2. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の連結業績見通しについて同社は、売上高4,366百万円(前期比43.5%増)、営業損失293百万円(前期は367百万円の利益)、経常損失299百万円(同370百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失384百万円(同253百万円の利益)を見込んでいる。
コロナ禍やウクライナ情勢等の影響により、日本経済だけでなく世界経済の先行き不透明感が高まっているが、日本国内の新卒採用市場は、2023年卒業予定者の大卒求人倍率が1.58倍と前年比0.08ポイント上昇し、企業の新卒採用意欲は回復傾向にある。
また、企業の採用競争の加熱化と選考活動の早期化も窺える。
コロナ禍における就職活動も3年目となり、部分的に対面での選考も再開されているが、学生にとってはオンラインでのインターンシップや選考が就職活動の中心となってきているようだ。
企業はこのような就職活動スタイルの変化への適応が求められており、従来型の大量に集めて絞り込むといった対面重視の選考の見直しが進み、オンラインの活用やそれに伴う募集時点で絞り込み、1対1のコミュニケーションを重視した選考への移行が進んでいる。
以上から、同社への需要は今後もさらに高まることが予想される。
このような環境のなかで同社は、積極的な先行投資を行って競争優位性を高めることにより、2026年卒業予定者において「OfferBox」のサービスを通じて2万人の採用決定を目指している。
具体的には、この先行投資によって、全方位かつアクティブな登録学生数を増やすとともに、企業に対しても利用を促進し採用決定に導くカスタマーサクセスの取り組みを強化し、採用成功率や成功報酬型から早期定額型への転換率、早期定額型の継続率の向上を実現し、より強固な顧客基盤を構築していく考えである。
また、地方企業や大手企業の開拓も推進する。
このほか、学生プロフィール情報や企業情報で利用者の魅力がより伝わる情報が掲載できる機能開発や、「OfferBox」上で様々な出会いを創出させる機能開発を進めることで、オファー承認件数の増加を図る。
また、学生や企業の行動データを活用し、マッチング効率のさらなる向上にも取り組んでいく。
「eF-1G」では、プロダクト開発やオペレーションの効率化、営業マーケティング機能のさらなる強化に取り組む。
新規事業の「PaceBox」では、先行投資によって垂直立ち上げを実現する方針だ。
これらの結果、2023年3月期の売上高は高水準の伸びが継続する見込みだが、新規事業である「PaceBox」への投資、「OfferBox」の営業・開発・管理体制の強化、M&Aを含む新規投資の可能性など、積極的な先行投資により営業損失となる予想だ。
ただし、先行投資が主因であることから、2024年3月期以降はV字回復し、成長期に入ることが期待できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)