[東京 6日 ロイター] - 東芝再建を巡り、現経営陣の処遇が焦点の1つになっている。買い手候補として連合を組んでいた日本産業パートナーズ(JIP)と産業革新投資機構(JIC)が、買収後に現経営陣を残すかどうかで意見が食い違ったのに加え、金融機関の一部からは経営陣を維持する案に懸念の声が出ている。
事情を知る複数の関係者が明らかにした。いずれの関係者も、非公開の情報だとして匿名を条件に語った。
日本の民間ファンドのJIPと官民ファンドのJICは、東芝再建の1次提案に連合を組んで参加したものの、企業査定を経て9月に出した2次提案は別々だった。関係者2人によると、買収後の経営方針を巡って方針が合わなかったためで、島田太郎社長ら現経営陣を残すとしたJIP側の案も摩擦の一因となった。
さらに関係者3人によると、金融機関の一部も経営陣を温存することに懸念を示している。時価総額2兆円超の東芝を買収するには銀行からの融資が欠かせない。
こうした懸念の背景には、これまでかじ取りをしてきた経営陣のもとで、大胆な事業再編など企業価値向上に向けた施策が実行できるのか懐疑的な見方があるためだ。
東芝の島田社長は国内外のメディアとのインタビューで、技術革新を進めるためとして、同社を1つの組織として維持することを買い手候補に求める考えを示していた。
東芝はロイターの取材に対し、「公正なプロセス運営を損なう懸念があるため、共同投資家を含む候補者に関する情報は原則として回答できない」と回答。JIPのコメントは現時点で得られていない。JICはコメントを控えた。
東芝再建に向けた作業は10月上旬、JIPが優先交渉権を得た。JIPは買収資金を企業からの出資と金融機関からの融資で賄う計画で、オリックスや中部電力など複数の企業に出資を打診している。
しかし、関係者らによると企業からの資金集めは難航。十分に資金を確保できない中、金融機関も融資に慎重で、関係者らによるとJIPは東芝が要請している「コミットメントレター」(銀行が融資する意思を示したことを証明する書類)を期限の11月7日までに提出できない見通しだ。
一方、ベイン・キャピタルやMBKパートナーズの海外ファンドと組む方向で協議しているJICも準備を進めてはいるものの、関係者2人によると、7日までに法的拘束力のある再建案を提出しない見込み。
関係者1人によると、JICはさらに詳細な企業査定を行いたい考え。東芝が4割の株式を持つキオクシア・ホールディングスが、半導体需要の落ち込みの影響をどの程度受けそうかなどを精査したいという。
JICは10月下旬、大型案件向けの投資枠を従来の2000億円から9000億円に拡大した。関係者2人によると、東芝の非公開化だけでなく、他の案件も念頭に入れた決定だという。
(佐古田麻優、山崎牧子、山口貴也 編集:久保信博、David Dolan)