[台北 12日 ロイター] - 半導体受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が12日発表した第4・四半期決算は、純利益が78%増の2959億台湾ドル(97億2000万ドル)と、四半期ベースで過去最高だった。
業界全般が低迷し、より安価な半導体が打撃を受ける中、先進半導体の販売が好調だった。
前年同期は1662億台湾ドル。リフィニティブがまとめた市場予想は2894億4000万台湾ドルだった。
売上高は26.7%増の199億3000万ドル。同社は推定で199億─207億ドルになるとの見通しを示していた。
今年第1・四半期の売上高については、167億─175億ドルと、最大5%減少するとの見通しを示した。減収は4年ぶりとなる。前年同期は175億7000万ドルだった。
上半期の売上高は1桁台半ばから後半の減少率になるとみられている。
<設備投資減額>
高インフレや金利上昇、景気悪化を背景に消費者需要が減退、世界のハイテク産業が苦戦する中、TSMCは数少ない好調な企業だ。ライバルの韓国サムスン電子は、2022年第4・四半期の営業利益が69%減の4兆3000億ウォン(33億7000万ドル)と、8年ぶりの低水準になる見通しとしている。
TSMCは、米アップルなどハイエンド顧客向けの先進半導体製造で主導的な立場にあり、業界の低迷から守られてきた。ただ、TSMCも12日、23年の設備投資計画を前年比で減額とし、需要見通しの悪化が裏付けられた。
TSMCは、23年の設備投資を320億─360億ドルとし、22年の363億ドルからの減額を見込んだ。
魏哲家最高経営責任者(CEO)は12日、人工知能(AI)などの技術向けの製品の発売によって「下半期には好転すると確信している」としたほか、23年には「業界全体はやや低迷するが、当社は小幅ながら成長するだろう」と述べた。
バイスプレジデント兼最高財務責任者(CFO)のウェンデル・ファン氏は記者会見で、第4・四半期は「エンドマーケットの需要の弱さと顧客の在庫調整が足を引っ張った」とし、こうした状況は第1・四半期も続くと予想した。
「当面の不透明感を踏まえ、引き続き慎重な事業運営に努め、必要に応じて設備投資の抑制を図っていく」とし「設備投資と生産能力の計画は、長期的な市場の需要見通しに基づいている」と説明した。
TSMCは台湾以外での生産を拡大する方針を表明。28ナノメートル(ナノは10億分の1)と、より高度な製品の生産能力は、海外拠点が「5年程度のうちに」少なくとも5分の1を占める可能性があるとした。
魏氏は日本で2カ所目となる工場の建設を検討しており、欧州でも自動車部門向けに特化した工場の建設について調査を進めていると明らかにした。詳細な説明は控えた。
また自動車用半導体の不足は「すぐに緩和される」との見方を示した。
TSMCの株価は2022年、27.1%下落。今年はこれまでに8.5%上昇、時価総額は4127億8000万ドルとなっている。