[ソウル/台北 30日 ロイター] - 韓国の尹錫悦大統領は30日、米国の新しい半導体補助金の受給条件はサムスン電子やSKハイニックスなどの企業にとり懸念要因だと述べた。半導体受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)も同様な懸念を示した。
尹大統領はソウルを訪問した米国通商代表部(USTR)のタイ代表と会談。青瓦台(韓国大統領府)によると、「過剰な情報提供」を巡る企業の懸念を考慮するよう米政府に求めたという。
これに先立ち、産業通商資源省の安徳根通商交渉本部長もタイ代表との会談で、補助金の条件は韓国企業の重荷となる可能性があるとの認識を示した。
安氏は30日の声明で、米国の補助金規定は韓国企業に過度の負担を強いることのないように韓国政府と企業の意見を反映させるべきだとした。
TSMCの劉徳音会長は、米国の条件に懸念を示し「今も協議しているが、受け入れられない条件がいくつかある。それらが調整されマイナスの影響が出ないよう望む。米政府との協議を続けていく」と台湾で記者団に語った。
米商務省の高官は、商務省が事業の機密情報を保護するほか、超過利益の分配義務についてはプロジェクトがキャッシュフロー予想を大幅に上回る場合に限定される見通しと明らかにした。
米国では昨年、半導体の生産や研究開発を後押しするため527億ドルを投じることを盛り込んだ「CHIPS法」が成立した。ただ、企業が補助金を受ける条件として、当初合意した基準以上に利益を上げた場合にその一部を米政府と共有することが義務付けられている。
ただ、韓国の複数の業界関係者は、補助金申請には詳細なコスト構造情報に加え、ウエハーの歩留まり、稼働率、価格変動の予測が必要となる可能性があり、申請手続きで企業機密をさらすようなものだと警戒感を示している。
SKハイニックスの親会社SKグループは、最先端の半導体パッケージング工場の建設を含め、米国の半導体部門に150億ドルの投資を計画しており、補助金申請を検討中だと先に述べている。
サムスンは米テキサス州に総工費250億ドル超の半導体工場を建設中で、補助金申請のガイドラインを検討中としている。
韓国国会は30日、半導体など戦略的産業に対する大規模減税法案を可決した。