[東京 18日 ロイター] - セブン&アイ・ホールディングスは18日の取締役会で、米ファンドのバリューアクト・キャピタルが提案した4人の取締役選任議案に反対することを決議した。「食」を基軸に株主価値の最大化に取り組む中、米ファンドの提案は株主価値を毀損させると指摘した。
セブン&アイは、指名委員会の取締役3人が米ファンドが提案した4人を含めた候補者と面談。食品・小売り業界での経験なども踏まえて決めた、としている。
会社側提案の取締役候補としては、伊藤邦雄社外取締役が外れ、井阪隆一社長を含む13人の再任と2人の新任取締役候補を加えた新体制案を5月の株主総会に提示する。新任取締役候補は、日本瓦斯の和田眞治会長とJ─オイルミルズの八馬史尚顧問。
2014年の経済産業省の報告書「伊藤レポート」を座長としてまとめたことで知られる伊藤氏(一橋大名誉教授)は2014年5月の社外取締役就任から9年が経過しており、ガバナンス構築など一定の役割を終えたとの判断で退任する。
現在、セブン&アイの取締役は14人。そのうち6人が社内、8人が社外となっている。
同社は、バリューアクトの主張は「事実を著しく歪曲している」とし「変革を妨げ、長期的な企業価値・株主価値創造の機会を逸失させる可能性」との見解を示した。
バリューアクトは、同社のコングロマリット経営にも疑問を呈しており、コンビニエンス事業の分離(スピンオフ)も求めている。これに対し、セブン&アイは、これらを含む選択肢を戦略委員会で継続的に検討する意向を繰り返した。
ただ同社には、「食」へのフォーカスはセブンイレブンの競争の源泉であり、それにはイトーヨーカ堂とのシナジーは欠かせないとの認識がある。実際、セブンイレブンは、競合他社に比べて1日の売上高が高いが、それは食品の売り上げの差がもたらしている。セブン&アイは、バリューアクトの提案について「重要な商品開発力とサプライチェーンネットワークのシナジーを排除し、当社の競争力を損なわせる可能性」と指摘した。
これに対し、バリューアクトは「同社のステークホルダーが長年問い続けてきた基本的な戦略上の問いに対して、明確な答えを再び提示しなかった」とのコメントを発表した。
「低調な業績にもかかわらず、現状維持による経営陣の既得権益を守るという問題のある意思決定パターンが繰り返されている」と批判した。
そのうえで、セブン&アイの新たな取締役会が、戦略的選択肢を検討し、より優れた価値創出への新たな道を描く明確な委任を持ったワールドクラスの経営チームを構築するに際して、バリューアクトは支援していく、とした。
4.4%の株式を持つバリューアクトはセブン&アイに対し、コンビニ事業の分離や井阪社長、伊藤社外取を含む取締役4人の退任などを提案。さらに9項目の質問を送っていた。これに対し、井阪社長は4月に実施した決算会見の席上、4月中旬に改めて見解を出す考えを示したほか、取締役会の改革案を公表し、5月の株主総会に諮ることを明らかにしていた。