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城南進研 Research Memo(9):2026年3月期に営業利益率10%を目指す新中期経営計画を策定

発行済 2023-08-10 12:29
更新済 2023-08-10 12:45
© Reuters.
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*12:29JST 城南進研 Research Memo(9):2026年3月期に営業利益率10%を目指す新中期経営計画を策定 ■今後の見通し

2. 新中期経営計画
(1) 新中期経営計画の概要
城南進学研究社 (TYO:4720)は2024年3月期からスタートする3ヶ年の新中期経営計画を2023年6月に発表した。
企業ビジョンについては従来と変わりなく、「総合教育ソリューション企業として、たくましい知性・しなやかな感性を育む能力開発のLeading Companyとなる」ことを掲げ、新たに企業理念として「学びをアップデートせよ」を加え、経営理念である「生徒第一主義の実践」をベースに基本戦略と経営数値目標を策定し、企業ビジョンの実現と企業価値の向上を図っていく方針だ。


経営数値目標としては、最終年度となる2026年3月期に売上高で6,780百万円、営業利益率で10%を目指す。
売上高については年平均成長率で4%と堅実な成長を計画している。
2023年3月期からの増加額で見れば、売上高で約8億円の増加となるのに対して、営業利益は約7億円の増加を見込んでいることになる。
これは収益構造改革の継続により費用の抑制に取り組んでいくことに加えて、付加価値の高い教育ソリューション事業の拡大や、既存校での生徒数回復による固定費率の低下を見込んでいることなどが要因として挙げられる。
前回の中期経営計画の業績目標(2024年3月期に営業利益率10%目標)はコロナ禍の影響もあって未達となったが、以下に掲げる基本戦略が計画通りに進むかどうかが目標達成の鍵を握るものと思われる。


(2) 基本戦略
a) 学びの個別最適化と教室力の強化
個別指導部門の収益回復施策として、学びの個別最適化と教室力の強化を推進し、学力向上と志望校への合格という顧客目標を実現することでブランド力の向上を図り、生徒数の拡大を図っていく。
学びの個別最適化に向けては、2022年3月期より城南コベッツにおいて各生徒のニーズに合わせたオーダーメイド型の教育サービス「スタディ・フリープラン※」を導入した。
個々人に最適化した「本当の“個別指導”」を追求したことにより、学力の向上や志望校への合格実績が増えるなどその成果も見え始めている。
2021年に実施した生徒・保護者アンケートでは、「教室の指導に満足している、又は非常に満足している」と回答した比率が98.9%に達し、受講生の93.5%が成績をアップさせるなど高い結果が得られている。
顧客満足度の向上により退塾率も改善傾向となってきており、今後はこうした成果をアピールして生徒数の拡大に取り組んでいく方針だ。


※時間割を撤廃し、生徒一人ひとりのスケジュールに合わせて、通塾だけでなくオンラインでの受講も可能とした「定額・通い放題」プラン。



b) 付加価値の高い幼少教育事業の新展開
幼少教育事業では、STEAM※を中心とした複数の乳幼児教育サービスを提供する複合型スクール「城南ブレインパーク」のFC展開を2025年3月期以降に開始する。
個々のサービスを単独で運営するよりもパッケージ化することで多様なニーズを取り込むことができるため、収益化しやすいというメリットがある。
少子化の進行で学習塾や保育市場で顧客獲得競争が激化するなか、顧客獲得施策または新たな収益源として乳幼児教育サービス領域への進出を検討している企業も増えてきており、こうした需要を取り込んでいく戦略だ。


※STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の略語で、これらを統合的に学習する教育理念のことをSTEAM教育と呼んでいる。



2023年4月に業務提携を発表した明光ネットワークジャパンとも、同社の持つ質の高い乳幼児教育サービスのコンテンツを活用した協業を進めていく予定となっている。
明光ネットワークジャパンは全国に個別指導塾を1,700教室以上(FC含む)展開する大手企業で、今後の展開が注目される。


c) 教育格差を是正する教育ソリューション事業の積極的展開
同社では、BtoBのビジネスモデルとなる教育ソリューション事業を積極的に展開すべく、新たにLTV戦略プロジェクトを発足した。
教育の地域格差や経済格差を解消し、あらゆる人に教育機会を提供するというコンセプトの下、「安価」「オンライン」の要素を併せ持つ教育サービスを乳幼児から高校生向けに提供し、同事業の高成長を目指していく。


乳幼児向けでは、「りんご塾」や「城南ブレインパーク」のFC展開に加えて、「くぼた式育児法」の保育園・幼稚園等への導入を推進していく。
小中学生向けには、オンライン学習教材「デキタス」の学校、学習塾、スポーツクラブ等への導入推進や、オンライン英会話レッスン「Prime Talk」の提供拡大、高校生向けでは「城南コベッツ」のFC展開や「総合型選抜・学校推薦型選抜対策」の映像講座を提供拡大していく方針だ。


d) 攻めの収益構造改革
2021年3月期以降、不採算教場のてこ入れや整理、RPAツールの導入等による業務効率の改善等に取り組み、収益体質を筋肉質なものに変えてきたが、2024年3月期以降も攻めの収益構造改革を継続していく方針だ。
主な施策としては、LTV(社内・関連会社・業務提携先)及びシナジーを最大化する運営体制を構築すべく、業務提携戦略を推進していく。
前述した明光ネットワークジャパンとは、乳幼児教育ブランドの相互展開のほか、その他の共同開発等も進めていく予定だ。
また、2022年11月に業務資本提携を締結した学研ホールディングスとは、メタバースを用いた新たな学習サービスの協働開発・展開を検討していくほか、教室・学習塾の連携、英語学習コンテンツ・サービスの協働開発、学習アセスメントの共同開発・制作・普及、乳幼児教育サービスの連携、社会人を対象とした新たな教育サービスの開発・普及などを進めていく予定となっている。
そのほかにもシナジーが見込める案件であれば積極的に提携戦略を推進していく方針だ。


なお、学研ホールディングスとの提携のうち、メタバースを活用した学習サービス※については2023年6月に城南コベッツにおいて日曜日の自習学習用サービスとして検証実験を実施した。
2023年秋に再度検証実験を行い、事業化の可否を判断することにしている。
その他の事項についてはまだ具体的な進捗はなく、今後の検討項目となっているようだ。


※富士ソフト (TYO:9749)が開発した教育用メタバース「FAMcampus(ファムキャンパス)」を用いたバーチャル教育空間を活用した学習サービス。



また、2023年3月期までの3年間で取り組んできた不採算事業のてこ入れと生産性の高い本部組織の構築に向けた取り組みも継続していく。
不採算教場の整理統合のほか、小規模で今後の成長が見込み薄なプロダクトを整理し、主力サービスにリソースを集中していく。
そのほか、子会社の合併等も含めた管理業務の合理化やDX推進による間接コストの一段の絞り込みを進めていく予定にしている。


e) 理念経営を具現化する人財の育成
次世代リーダーの育成及び人的資本への投資戦略を策定すべく、2023年3月に「理念経営人財育成委員会」を発足した。
同委員会の発足により、経営者と従業員とのコミュニケーションの活性化を通して、次世代リーダーの育成を促進し、クレド(行動指針)を中心にステークホルダーの価値を高める活動を担える人財の育成を図っていく。
人的資本投資計画を策定し、人的資本を可視化するとともに人財戦略をブラッシュアップしながら企業価値の向上を目指す。
人財投資の一環として、アルバイト講師の人財育成を強化するための組織となる「iconet」も新たに発足しており、投資の成果が今後顕在化するものと期待される。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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