Noele Illien Oliver Hirt
[チューリヒ 31日 ロイター] - スイス金融大手UBSグループは31日、クレディ・スイス買収を受け、国内の人員3000人を削減すると発表した。100億ドル以上のコスト削減計画に向けた具体策で、12人に1人程度が対象になる形だ。
UBSはまた、クレディSの国内部門を吸収することも発表。スピンオフ(分離・独立)して上場させる可能性も検討したが、クレディSにとって国内銀行は堅実な利益を生み出しており、昨年は唯一の黒字部門だった。
セルジオ・エルモッティ最高経営責任者(CEO)は「われわれの分析では完全統合がUBS、そしてスイス経済にとって最良の結果であることは明らかだ」と説明。「2024年に予定される法的統合までは別々に運営され、顧客のUBSシステムへの段階的な移行は25年に完了する」とした。
同CEOが出した社内メモによると、クレディS完全統合に伴い1000人を削減するほか、クレディSの大幅な再編の必要性からさらに2000人の人員削減が予想される。このほかに自主退職も見込んでいるという。
一方、スイスの銀行労働組合は同日、影響を受ける3000人について、十分な社会的便益を受けることになると表明。ここ数カ月にわたってUBSと集中的に交渉し、この人員削減計画にメリットを見いだしたという。
その上で「統合プロセスにおいて、スイスの2つの金融機関の3万7000人の従業員が公平かつ平等に扱われることを要求する」とした。
UBSは26年末までに100億ドル以上の費用カットを見込む。従来は27年までに80億ドルと予測していた。人員削減の影響が大半となる見通しで、アナリストは世界的に3万─3万5000人の雇用がなくなる可能性があると予想している。
UBSの株価は午前の取引で5%上昇し、08年以来の高値を付けた。人員削減とともにクレディS買収後初のUBS決算が発表されたことを受けた。
アナリストは総じてUBSの発表内容を歓迎。ただJPモルガンは「さらなる詳細」が必要とした。ドイツ銀行のアナリストは「グループは依然として建設途上にある」と指摘した。
UBSによる買収成功の鍵はクレディSの富裕層顧客を維持することと見られている。
クレディSは第2・四半期に390億スイスフラン(444億ドル)の純資産流出を報告。しかしUBSによると、流出ペースは前の数四半期に比べ緩やかで、6月には流入に転じた。
UBSのグローバル・ウェルス・マネジメント部門には160億ドルの新規資金が流入。第2・四半期としては過去10年以上で最大となった。
UBSは第2・四半期に290億ドルの純利益を計上。クレディSの買収は6月に完了したばかりで、UBSグループ全体の業績にはクレディSの1カ月分の利益しか含まれていない。
巨額の利益は、買収費用がクレディSの価値をはるかに下回ったことによる一時的利益が要因。銀行側がまとめたコンセンサス予想334億5000万ドルを下回った。