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アングル:中国メーカー台頭、欧米で低価格EV開発競争が加速

発行済 2023-12-12 07:02
更新済 2023-12-12 07:10
© Reuters.  12月8日、 安価な中国製電気自動車(EV)の台頭により、欧米の老舗自動車メーカーがコスト削減を迫られている。写真はイスラエルの新興企業アディオニクスが開発した、多孔質

Nick Carey Paul Lienert

[ロンドン/デトロイト 8日 ロイター] - 安価な中国製電気自動車(EV)の台頭により、欧米の老舗自動車メーカーがコスト削減を迫られている。各社は電池材料から半導体に至るまで、サプライヤーにコスト削減を求めることで、従来の計画よりも早く手ごろな価格のEVを開発しようと懸命だ。

EV電池管理システムの性能を高めるハード、ソフトウエアを開発した英新興企業ブリル・パワーのアンディ・パーマー会長は「自動車メーカーは安価なEVにしか目を向けなくなっている。そうしないと中国メーカーに負けると分かっているからだ」と語る。

パーマー氏によると、ブリル・パワーの製品はEVの航続距離を60%伸ばし、電池の小型化を可能にする。電池はEVで最もコストのかかる部品だ。

EVは値段の高さゆえに需要が鈍化することが懸念され、各社にとってコスト削減は喫緊の課題となっている。

切迫感は至るところで見られる。ルノーは先月、化石燃料モデルと同等の価格を実現するため、EVのコストを40%削減する計画だと発表した。

ステランティスは中国の電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL) と共同で、より安価なLFP電池(リン酸鉄リチウムイオン電池)を製造する欧州工場を建設中。最近では2万3300ユーロ(2万4540ドル)から購入できるシトロエンの電気SUV(スポーツ多目的車)「e-C3」を発表した。

フォルクスワーゲン(VW)とテスラは2万5000ユーロのEVを開発している。

米ワンD・バッテリー・サイエンシズのビンセント・プルビナージュ最高経営責任者(CEO)は、最近、欧州の自動車メーカーを訪問すると、どの会議も「今最も重要なのはコスト削減だ」という同じフレーズで始まると言う。

ワンDは、グラファイト製EV電池のアノードにシリコンナノワイヤーを加えて航続距離を伸ばし、充電時間を短縮することで、グラファイトのみを使用する場合に比べ、100キロワット時(kWh)の電池で281ドル(約50%)のコスト削減を実現している。

これによって、同じ航続距離でEV電池の重量を20%削減できるとプルビナージュ氏は述べた。ゼネラル・モーターズ(GM)はワンDの投資家であり顧客だ。

独ビーキムは、レアアース(希土類)の代わりにフェライトを使用したEV用モーターを開発した。

中国がレアアースの採掘と加工を独占しているため、老舗自動車メーカーは使用を削減したいと考えている。ビーキムのピーター・シーグルCEOによると、同社はフェライトと低コストの加工技術を使うことで、EVモーターの価格を20%削減することができた。

<コストが全て>

EVのコスト削減を追求しているのは新興企業だけではない。

オランダの半導体メーカーNXPは自動車メーカーと協力し、EVに搭載される電子制御ユニット(ミニコンピュータ)の数を減らしている。同社幹部が明らかにした。

独シーメンスは、高価なEVの開発期間を半減させるために、デジタルツインと呼ばれるソフトウエアシミュレーションを開発した。

欧州の自動車メーカーが中国製低価格EVへの対応を進める一方、中国メーカーはさらに安価なモデルを計画している。

例えば、中国EV大手BYD(比亜迪)のハッチバック「ドルフィン」は、英国では2万6000ポンド(約3万3000ドル)からで、VWのハッチバックのスタート価格を30%近く下回っている。

「インフレ抑制法」の補助金によって中国製EVの輸入から多少保護されている米国の自動車メーカーも、より安価なEVの開発に力を入れている。

GMは計画より2年早い2025年に発売する改良型「ボルト」EV向けに、LFP電池を使ったより安価な電池パックを開発することで、数十億ドルのコスト削減を実現したと発表した。

フォードは、電池やインバーターといった部品の「内部調達」を50%増やすことなどを通じ、コストを削減すると表明した。

高級自動車メーカーもEVのコスト削減を望んでいる。

米アワ・ネクスト・エナジー(ONE)は、より低コストのLFP技術を使った電池パック「アレス」を開発中だ。航続距離を保ったまま、EVの価格を従来の半分に抑えられるという。独BMWなどの顧客向けには、航続距離を伸ばしつつコストを現在の130ドル/kWhから75ドル/kWhに抑える電池パック「ジェミニ」を開発していると、ムジーブ・イジャズCEOは明かした。

サプライヤーによると、自動車メーカーは、安価なだけでなく自動車の生産コスト削減につながる部品を特に好んでいる。

米セルリンク社は、製造と取り付けに多くの人手を要するワイヤーハーネスに代わり、ロボットによる取り付けが可能なラミネートシートを開発した。

ケビン・コークリーCEOは、同社がテキサス工場の操業を開始して以来、「基本的に、ここを訪れた全ての大手自動車メーカーから何らかの形で発注を受けた」と語った。

イスラエルの新興企業アディオニクスは、光にかざすと薄手のシルクのスカーフのように見える、多孔質で立体的な銅・アルミニウム電極の電池素材を開発した。銅の使用量は従来製品より60%少ない。

モシエル・ビトンCEOによれば、この電極により充電が高速化し、航続距離は30%伸びる。しかし、自動車メーカーは、1kWh当たり最大7.50ドルのコスト削減が見込まれることに、より関心を寄せているという。

「今、自動車メーカーから聞こえてくるのは、『航続距離が伸びなくてもいいからコストを下げたい』 という声だ」とビトン氏は語った。

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