By Maki Shiraki
[東京 20日 ロイター] - トヨタ自動車傘下のダイハツ工業は20日、国内外で販売する全車種の出荷を一時停止すると発表した。トヨタも一部車種の出荷を停止した。車両の安全性を確認する試験不正問題を巡り、不正対象が64車種に拡大するため。出荷再開時期は未定。同日、外部弁護士らによる第三者委員会の調査結果を国土交通省に報告。同省は21日にダイハツ本社へ立ち入り検査する。
ダイハツの奥平総一郎社長は会見で経営陣に責任があると謝罪し「まず足元の問題に対応したい。再発防止に向けた道筋をつけることに力を発揮し、責任としたい」と述べ、即時辞任は否定した。
同席したトヨタの中嶋裕樹副社長は「2014年以降、小型車を中心に海外展開車種が増え、(トヨタへの)供給が増えたことが現場の負担を大きくした可能性があることを認識できていなかった。深く反省している」と話した。
同委員会は不正の真因として、トヨタのものづくりの根幹の1つ「現地現物」が管理職に徹底されていなかったことを問題視。中嶋氏は今回の不正で現地現物が不足していたことを再認識し、「原点を見つめ直したい」と語った。
完全子会社のダイハツが一端を担ってきたトヨタの小型車戦略について中嶋氏は、まずは不正に伴う顧客の不安払拭を最優先し、「今後どのような体制で進めていくべきか別途伝える」とした。ダイハツとの関係解消は「現時点で考えていない」と述べた。
両氏とも詳細は控えたが、ダイハツの星加宏昌副社長は、収益に「かなり大きな影響はある」と話した。仕入先への補償も各社と相談して検討する。星加氏によれば、国内の仕入先は423社で、このうちダイハツへの売り上げ依存度10%以上の企業は47社(うち34社は中小企業)あるという。
調査結果によると、新たに25の試験項目で174個の不正行為が判明。不正対象は生産・開発中と生産終了の両方合計で64車種・3エンジンで、OEM(相手先ブランドによる生産)供給したトヨタ、マツダ、SUBARUの各ブランドによる車種も含まれる。現時点で事故の情報は把握していない。
同委員会の貝阿彌誠委員長は、問題の真因は過度な「短期開発の推進」にあり、不正の責任は「経営陣にある」と指摘。不正は1989年から行われていたが、その数が特に「14年以降、増えている」と言及。11年発売の軽自動車「ミライ―ス」が従来に比べ短い期間で開発に成功して以降、短期間開発の車種が増えたことが背景にあるとした。
また、管理職が指示・黙認するなどの関与はなく「現場任せになっていた」、「チェック体制が構築されておらず、不正やごまかしを行っても見つからない状況だった」とした。一方、トヨタに「責任があるとは考えていない」と話した。
ダイハツは今年4月、海外市場向け4車種で不正があったと発表。一部の車種はトヨタブランドで販売されていた。前席のドア部品に本来の仕様にはない切り込み加工を施し、側面衝突試験を実施していたことが発覚。5月には国内で販売する2車種でも衝突試験での認証手続きに不正があったことを公表した。