Noriyuki Hirata
[東京 9日 ロイター] - ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長の同社株保有比率が低下したことが、9日提出の報告書で分かった。日経平均算出の定期見直しの基準日となった31日に同社株のウエート(構成比率)がキャップ(上限)の11%を上回るリスクが意識された中での一部売却で、次回基準日にも同様の売りが出るのではないかとの思惑を呼んでいる。
売却によって、柳井氏の保有比率は従来は19.23%から、18.20%に約1%低下した。親族など共同保有者と合計した保有比率は前回の43.32%から42.30%に下がった。
市場内で処分していた期間は1月15日から2月2日まで。年初からの上昇相場では大型株の物色が強まり、同社株のウエートが11%に接近していたタイミングに重なっている。超過していれば、日経平均算出時に用いられる株価換算係数にキャップ調整比率0.9が設定されて指数に対するウエートが低下。パッシブ連動資金によるリバランス売りの圧力が高まると警戒されていた。
今回の期間中の売却株数と前日8日の終値に基づいて単純計算すると、売却総額は700億円規模。日経平均をベンチマークとするパッシブ連動資金のリバランスの売りは約3000億円と、フィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッドは試算していた。株価は、柳井氏の売りによる下押しを受けたが、より大きな下押し圧力は回避されたことになる。
柳井氏による売却の理由は明らかになっておらず、会社側は「コメントする立場にない」(広報)としている。ただ、昨年7月末の基準日前にもキャップ超過のリスクが意識されながら最終的には回避され、その後、基準日前に柳井氏による株売却があったことが明らかになった経緯がある。
次回基準日は7月末となり、キャップは10%に引き下げられるため超過回避のハードルは高まる。基準日が近づけば「同様の売りが再びあり得るとの思惑につながるのではないか」(フィリップ証券の増沢氏)との見方が出ている。