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アングル:日本の半導体に台湾勢が商機、「脱・中国」で事業拡大

発行済 2024-02-22 08:23
更新済 2024-02-22 08:27
© Reuters.  2月22日、米中対立を背景に半導体ブームに沸く日本で、台湾の半導体関連企業が事業を広げつつある。台湾新竹市で2022年撮影(2024年 ロイター/Ann Wang)

Miho Uranaka Sam Nussey Fanny Potkin

[東京 22日 ロイター] - 米中対立を背景に半導体ブームに沸く日本で、台湾の半導体関連企業が事業を広げつつある。受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に新設する工場にだけでなく、再興を目指す日本の半導体産業全体に商機があるとみて、過去2年間に少なくとも9社が日本に進出、あるいは既存拠点を拡充したことがロイターの取材で明らかになった。

用途ごとに異なるカスタム半導体の設計を手掛けるアルチップ・テクノロジーズはその1社。同社は2003年10月に日本支社を開設し、自動車用半導体を製造するルネサスエレクトロニクスなどと取り引きをしてきたが、ここへ来て日本で人員の増強を進めている。

事情に詳しい関係者によると、アルチップは22年時点で大半の技術者を中国に置いていたが、中国国外へ移し始めており、異動先の多くが日本だという。同社はロイターの問い合わせに対し、日本と北米、台湾で採用活動を行っているとしたが、人事に関するこれ以上のコメントを控えた。

取材に応じたアルチップ・ジャパンの古園博幸ゼネラルマネージャーは、日本政府がポスト5G、AI(人工知能)などを積極的に支援しており、「新しいプロジェクトが次々と生まれている」と説明した。古園氏は「日本の半導体市場は成長が期待できる」とした上で、「すでにいくつかの優良なプロジェクトに参画している」と語った。

ロイターの取材によると、22年以降に日本へ進出したり事業を拡大した台湾の半導体関連企業は、TSMCが約35%の株式を持つ設計会社のグローバル・ユニチップ・コーポレーション(GUC)など少なくとも9社あった。GUCは日本に注目する理由として、能力の高い技術者と商機の広がりを挙げている。

メモリー半導体回路の設計開発を支援するイーメモリー・テクノロジーは22年4月、イーメモリージャパンを設立し、神奈川県のJR新横浜駅近くにオフィスを構えた。TSMCの技術者だった何明洲(マイケル・ホー)社長は、「オフィスを開設してから顧客との会話が増えた」と話す。今は設計と営業部隊11人を抱える。

業界関係者によると、9社以外にもさらに多くの台湾企業が日本での事業開始に向けて検討中だという。

<人材供給が追い付かず>

日本の半導体産業の世界シェアは最盛期の50%以上から2019年に10%程度まで落ち込んだが、米中の緊張が高まり、西側諸国が経済安全保障に関わる重要産業の供給網を見直す中、日本政府は半導体を「戦略物資」と位置づけて国内生産の強化に巨額の補助金を投じている。

米国も最先端の半導体技術を持つ台湾企業を自国にも誘致しようとしているが、円安でコストが相対的に安く、政府支援が充実し、素材や製造装置など世界的に強みを持つ半導体の産業基盤が整っていることが日本の追い風となっている。 「日の丸半導体」再興の流れに弾みをつけたのはTSMCの誘致成功で、同社が熊本県菊陽町に建設を進めてきた工場は2月24日に開所式を迎える。同工場に製造装置を納めるフィネステクノロジーは九州に自社工場を建設しており、受託材料分析サービスのマテリアル・アナリシス・テクノロジーは昨年末に九州に新研究所を開設した。

複数の関係者によると、半導体設計のマーケテック・インターナショナルもTSMCの生産能力拡張と足並みをそろえる。マーケテックはコメントを控えた。TSMCは第2工場の建設も計画。さらに日本の官民で最先端半導体の量産を目指すラピダスが北海道千歳市に、金融大手SBIホールディングスは台湾の力晶積成電子製造と組んで宮城県大衡村に工場を新設する予定で、いちど失った半導体産業が日本に再び集積しつつある。

大和証券やドイツ証券で半導体や電機産業などを分析してきた武者リサーチの武者稜司代表は、米国が中国との「デカップリング」を模索していたところに円安が進み、半導体産業を中心に受け皿としての日本の重要性が高まったとみる。「産業力から見て中国の生産を代替できる国は日本しかない」と語る。

日本貿易振興機構(JETRO)によると、台湾の対中直接投資は23年に前年比39.8%減少し、30億3681万ドル(4557億円、1ドル=150円換算)だった。一方、日本の財務省によると、対日投資は2697億円と同46.9%増加した。

丸紅中国の鈴木貴元・経済研究チーム長は、台湾企業の日本市場の取り組み強化について「(米中の)デカップリングの一環で当面続く」との見方だ。一方で、「ゆっくり吸収されていくとはいえ、日本の若い理系労働力がそんなに十分に供給されているとは思えない」と人材不足に懸念も示す。

経済産業省によると、1999年に23万人だった半導体関連産業の従業員数は約20年間で2割程度減った。一方で、電子情報技術産業協会(JEITA)は、半導体需要の拡大を受け、国内の主要8社だけで今後約10年間の半導体人材の必要数を4万人と試算している。TSMCを始めとする台湾企業は含まれていないため、必要な人材はさらに膨れ上がる。

経産省は産官学で連携しながら人材育成に取り組んでいるが、鈴木氏は「技術人材や経営者も海外から誘致しなければならないので移民政策やビザ政策なども考える必要がある」とし、「日本の受け入れ能力」の向上が必要との考えを示す。

(浦中美穂、Sam Nussey、Fanny Potkin 編集:久保信博)

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