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アングル:内需株にフォローの賃上げ、中小への広がり懸念 上値に不透明感も

発行済 2024-03-15 19:02
更新済 2024-03-16 08:09
© Reuters.  3月15日、春闘の強い内容を受け、株式市場では国内消費への期待で内需株物色が強まるとの見方が出ている。写真は東京証券取引所の建物で、2020年10月に撮影(2024年 

Hiroko Hamada

[東京 15日 ロイター] - 春闘の強い内容を受け、株式市場では国内消費への期待で内需株物色が強まるとの見方が出ている。一方、今後の焦点となる中小企業には、賃上げを続ける余力がないところもあるとみられるほか、賃上げと消費の連動性は限られるとの見方もあり、上値余地は見通し難い。

<33年ぶり賃上げ、内需に恩恵か>

連合が15日発表した2024年の春季労使交渉(春闘)の1次集計によると、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた平均賃上げ率は5.28%となり、91年以来、33年ぶりの高水準となった。

物価の影響を考慮した実質賃金は足元、22カ月連続でマイナスとなっているが、賃上げを通じてプラスに転じてくれば、消費回復の思惑で小売やサービス関連の株価に物色が向かうのではないか、との指摘がある。

足元では、ホテル事業を手掛けるや共立メンテナンスやJ.フロント リテイリングなどの百貨店株が堅調に推移しており、「消費回復をじわじわ織り込む動きがみられている」(国内証券・ストラテジスト)という。

デフレ下とは異なり、インフレ下では原材料コストの上昇を販売価格に転嫁しやすくなるとみられている。安売り・賃金低下の悪循環に陥るリスクが小さいとして「デフレ脱却の期待が企業の業績改善期待にもつながり、内需セクターの下支えになりそうだ」と野村証券のストラテジスト・澤田麻希氏は話す。

とりわけ、株価の上昇期待が強いのが、人流回復の恩恵を受けてきたインバウンド(訪日客)関連株だ。コロナ禍で落ち込んだ訪日外国人客数は1月に268万8100人と、コロナ禍前の19年1月とほぼ同水準に戻ってきた。先行き、中国からの訪日客が本格回復するとの期待も根強い。

auカブコム証券・チーフストラテジスト、河合達憲氏は「円安基調が続いたにもかかわらず、しっかり利益を上げてきた企業が多い」と指摘。賃上げによる国内消費の拡大が加われば「特にサービス、鉄道関連など、既にインバウンド回復の恩恵を受けていた銘柄は、さらなる業績改善期待につながるのではないか」とみている。

大和証券のシニアアナリスト・関根哲氏は「昔に比べて今の若年層は入社直後から比較的高い給料を受け取り、賃上げの恩恵を受けやすい層」だと指摘。若年層の利用が多いラウンドワン、サンリオなどの上昇期待が強いと見込む。こうした企業は、すでに客足が回復しているオリエンタルランドに比べて、集客に余裕があるという。

旅行などのいわゆる「コト消費」だけでなく、モノの消費も増えるのではないか、との声もある。フィリップ証券のアナリスト、笹木和弘氏は「家電製品や耐久財などの購買意欲が上がるとみられ、関連銘柄は上値トライが期待できそうだ」とみる。

<二極化する賃上げ、高齢者も節約志向>

もっとも、大幅な賃上げは大企業が中心で、中小企業への広がりや持続力は現時点では見通しにくい。

東京商工リサーチが企業向けに実施したアンケートによると、24年度に賃上げ予定の企業は85.6%となり、統計開始の16年以降、過去最高の高水準となった。一方、企業規模別の実施率では大企業が93.1%だったのに対し中小企業では84.9%と、8.2ポイントの差がある。「23年度は大企業と中小企業の差は5.7ポイントだったが、格差が広がってきている印象」と情報本部の原田三寛氏は指摘する。

賃上げを捻出する体力や収益力の差で二極化が鮮明になっており、中小企業の中には「去年の賃上げが負担となり、『賃上げ疲れ』が生じているのが現状」(原田氏)だという。

「足元では、まだまだ生活を切り詰めていかなければならない消費者は多い」とSBI証券のストラテジスト・北野一氏はみている。このため、消費関連ではパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、ブックオフグループホールディングスといった、ディスカウントやセカンドハンドショップ関連の銘柄の物色が継続するとみている。

賃上げが直接的には消費につながりにくいとの見方もある。日本では高齢化に伴って無職世帯が3割超となっており「賃金と消費の連動性が低下している」と、第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは指摘する。

消費者のデフレマインドは根強い上、子ども・子育て支援金の負担増もあるとして、賃上げ分は「節約に回され得る。物価と賃金の好循環が消費にまで及ぶのは限定的ではないか」と、永浜氏は話している。

●消費関連銘柄の年初来パフォーマンス

企業名 上昇率

日経平均 16%

東証株価指数 13%

J.フロント リテイリング 20%

三越伊勢丹ホールディングス 44%

高島屋 20%

松屋 4%

エイチ・ツー・オー リテイリング 25%

東武鉄道 1%

阪急阪神ホールディングス -3%

東日本旅客鉄道 9%

東海旅客鉄道 9%

西武ホールディングス 11%

日本航空 -1%

ANAホールディングス 4%

リゾートトラスト 3%

エイチ・アイ・エス -3%

藤田観光 18%

KNT─CTホールディングス -1%

帝国ホテル 109%

ロイヤルホテル 6%

共立メンテナンス 7%

ビックカメラ -5%

エディオン 0%

ケーズホールディングス 1%

ヤマダホールディングス 2%

パン・パシフィック・インターナショナルホ 10%

ールディングス

ブックオフグループホールディングス 19%

トレジャー・ファクトリー 9%

ゲオHD -10%

ラウンドワン 47%

オリエンタルランド -7%

サンリオ 48%

(15日の終値で算出)

*システムの都合で再送します。

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