*13:05JST クリアル Research Memo(5):2025年3月期第2四半期は物件売却により「CREAL PRO」が大幅増収
■業績動向
1. 2025年3月期第2四半期の業績動向
クリアル (TYO:2998)の2025年3月期第2四半期の連結業績は、売上高21,672百万円(前年同期比132.2%増)、売上総利益2,651百万円(同52.5%増)、営業利益1,032百万円(同75.3%増)、経常利益973百万円(同71.8%増)、親会社株主に帰属する中間純利益741百万円(同112.1%増)と、売上高・各利益ともに大幅な増収増益を達成した。
売上面は、各サービスで前年同期比20%以上の増収を果たしたこと、「CREAL PRO」において大阪府大阪市のホテルの物件売却があったことによる。
特に後者については期初の業績予想でも織り込まれていたもので、第1四半期に計画どおりの売却が行われた結果、前年同期比918.5%増の売上高10,011百万円を計上した。
「CREAL」は9件の物件売却が進み、同46.4%増の売上高7,549百万円、「CREAL PB」は投資用区分レジデンスの売却数増加により、同28.3%増の売上高3,918百万円となった。
利益面では同社が最も重要視する利益指標である売上総利益が前年同期比52.5%増の2,651百万円となり、10.6ポイント拡大した。
「CREAL PRO」における売上総利益は同144.1%増の1,549百万円となったことから物件売却の効果によるところが大きく、全体を押し上げた形といえる。
費用面については、人件費は期初計画に基づく採用を実施したこと、広告宣伝費は投資家獲得や認知度向上策としてそれぞれ増加したが、販管費全体としての中間期における計上額は期初計画値である3,400百万円の47.6%にあたる1,618百万円とほぼ計画どおりだったことから、各利益の大幅な増加につながった。
2. サービス別業績動向
「CREAL」は、売上高7,549百万円(前年同期比46.4%増)、売上総利益641百万円(同12.5%減)となった。
2025年3月期第2四半期までに9物件を売却したことにより前年同期比で増収を確保したが、売上総利益は減益となった。
要因は、2024年3月期の高利益率物流案件売却の反動といった面もあるが、2025年3月期第1四半期において「CREAL PRO」に営業活動の中心をおいたことによりテイクレートの低い案件が多かったためだ。
第2四半期には想定よりも高いテイクレートを取れた案件が増加したことで盛り返したが、下期にかけてもこれを継続し、通期での計画値の達成を目指す。
2025年3月期第2四半期に売却した9物件はいずれも東京23区内に所在する一棟レジデンスであるが、このうち3物件をCREAL ASIAを通じて海外ファンドにバルク売却した。
同社はCREAL ASIAを通じてグローバル案件の仲介やシンガポールを中心に、日本の不動産投資に関心のある海外投資家や富裕層をターゲットに、物件購買者としての取り込みを進めている。
国内の不動産価格は原材料や人件費の高騰で上昇しているが、円安環境もあり、国内の不動産はまだまだ割安との判断から海外投資家の高い関心は今後も続きそうだ。
また国内では個人の相続税対策や、中小企業の新規事業の投資対象として不動産投資は注目されている。
同社は売却先を確保するために、これら購買層の開拓に注力していく。
「CREAL PRO」は、売上高10,011百万円(前年同期比918.5%増)、売上総利益1,549百万円(同144.1%増)となった。
大阪のホテル売却が寄与し、売上高は大幅な増収となった。
同ホテルについては売却後のアセットマネジメント業務を受託しており、その報酬も通期の売上高に寄与する。
大阪万博の開始を2025年4月に控えた時期でのホテル売却となったが、同社としては万博開始後よりも、万博開催の機運が高まっている現段階での売却が有利と判断したようだ。
下期に向けては大型案件の売却予定はなく、収益の中心はアセットマネジメント業務からのフィー収入となる見込みである。
「CREAL PB」は、売上高3,918百万円(前年同期比28.3%増)、売上総利益341百万円(同22.6%増)となった。
DXを活用した販売体制の強化に加え営業担当の人員増強を図った結果、投資用区分レジデンス物件の販売戸数が増加し、増収増益を確保した。
事業の利益指標である粗利率(売上総利益率)は8.7%となり、前年同期の9.1%を0.4ポイント下回った。
近年の不動産価格の上昇を背景に物件の仕入額が拡大傾向にあり、総利益率の低下を招いたと考えられるが、販売戸数の増加で補い増益を果たした。
同様の状況が予想される下期に向けて強化中の営業活動をさらに活発化し、ターゲットの個人投資家等へ商品提案を進める考えである。
3. KPIの動向
「CREAL」の売上総利益はGMV×テイクレートからなる。
このうちテイクレートは、案件組成手数料、ファンド運用期間手数料、償還手数料からなる確定フィーと、ファンドの外部売却時のキャピタルゲインのプロフィットシェアである変動フィーで構成され、これまでの実績から8~10%としている。
GMVは調達時点(ファンド成約時点)の数値で集計・公表される一方で、「CREAL」の売上高及び売上総利益への計上は取引決済時点(物件売却時点)で行われることから、GMVの成約から売上総利益の計上までに多くのファンドでおおむね1年前後のタイムラグが生じる。
このため、GMVは「CREAL」のサービスの事業規模を示すとともに、売上総利益の先行指標となるため、KPIのなかでも重要なものである。
一方で、「CREAL PB」の売上総利益は売上高×粗利率で算出される。
また、「CREAL PRO」はフィービジネスが主体であることから、売上の大部分が売上総利益となる。
主力の「CREAL」の売上総利益は全体の40.3%(2024年3月期)を占め、同社の利益成長に大きく貢献していることから、同社はGMVと投資家数を最重視し、リピート投資率、売上総利益等もKPIとして設定している。
GMVは2025年3月期第2四半期末時点で累計595.0億円(前年同期比57.7%増)と大きく成長した。
通期は期初計画において300.0億円を獲得することとしているが、2025年3月期第1四半期末時点で118.7億円(進捗率39.6%)と堅調であり、今後の利益成長への期待が高まる。
また、GMVの基盤となる重要な要素である累計投資家数も81,549人(前年同期比54.8%増)と大きく伸長した。
通期計画では30,000人を獲得することとしているが、2025年3月期第2四半期末時点で17,670人(進捗率58.9%)と堅調に推移している。
GMVに関する重要指標の1つである「CREAL」投資家のリピート投資率※は2025年3月期第2四半期で87.6%と前年同四半期比2.1ポイント上昇し、さらに高い水準へと推移した。
リピート投資率は新規投資家の投資割合にもよるため獲得施策等の状況によって上下するが、2025年3月期第2四半期単体でも施策が奏功し、高水準を維持した。
顧客の投資マインドの高まりで投資家獲得も堅調と言えるだろう。
※ 過去1年間に投資実績がある投資家の投資金額が該当四半期のGMVに占める割合。
なお「CREAL」は、ファンド運営終了後も償還された金額と同水準、もしくはそれ以上の金額を新ファンドへ再投資するロイヤリティの高いユーザー層を獲得していることから、SaaSに近い安定積み上げ型モデルの収益構造となっていることが窺える。
同社はSBIホールディングスとの提携強化が進んでいるほか、ファンドの拡充にも注力しており、今後もさらなるGMV及び累計投資家数の成長が想定され、再投資プラス新規投資のループも大きく拡大するものと予想される。
「CREAL」は成長性と安定性を内包し、同社事業全体の成長ドライバーとして、さらなる高い成長ポテンシャルを有するサービスになると弊社では見ている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
1. 2025年3月期第2四半期の業績動向
クリアル (TYO:2998)の2025年3月期第2四半期の連結業績は、売上高21,672百万円(前年同期比132.2%増)、売上総利益2,651百万円(同52.5%増)、営業利益1,032百万円(同75.3%増)、経常利益973百万円(同71.8%増)、親会社株主に帰属する中間純利益741百万円(同112.1%増)と、売上高・各利益ともに大幅な増収増益を達成した。
売上面は、各サービスで前年同期比20%以上の増収を果たしたこと、「CREAL PRO」において大阪府大阪市のホテルの物件売却があったことによる。
特に後者については期初の業績予想でも織り込まれていたもので、第1四半期に計画どおりの売却が行われた結果、前年同期比918.5%増の売上高10,011百万円を計上した。
「CREAL」は9件の物件売却が進み、同46.4%増の売上高7,549百万円、「CREAL PB」は投資用区分レジデンスの売却数増加により、同28.3%増の売上高3,918百万円となった。
利益面では同社が最も重要視する利益指標である売上総利益が前年同期比52.5%増の2,651百万円となり、10.6ポイント拡大した。
「CREAL PRO」における売上総利益は同144.1%増の1,549百万円となったことから物件売却の効果によるところが大きく、全体を押し上げた形といえる。
費用面については、人件費は期初計画に基づく採用を実施したこと、広告宣伝費は投資家獲得や認知度向上策としてそれぞれ増加したが、販管費全体としての中間期における計上額は期初計画値である3,400百万円の47.6%にあたる1,618百万円とほぼ計画どおりだったことから、各利益の大幅な増加につながった。
2. サービス別業績動向
「CREAL」は、売上高7,549百万円(前年同期比46.4%増)、売上総利益641百万円(同12.5%減)となった。
2025年3月期第2四半期までに9物件を売却したことにより前年同期比で増収を確保したが、売上総利益は減益となった。
要因は、2024年3月期の高利益率物流案件売却の反動といった面もあるが、2025年3月期第1四半期において「CREAL PRO」に営業活動の中心をおいたことによりテイクレートの低い案件が多かったためだ。
第2四半期には想定よりも高いテイクレートを取れた案件が増加したことで盛り返したが、下期にかけてもこれを継続し、通期での計画値の達成を目指す。
2025年3月期第2四半期に売却した9物件はいずれも東京23区内に所在する一棟レジデンスであるが、このうち3物件をCREAL ASIAを通じて海外ファンドにバルク売却した。
同社はCREAL ASIAを通じてグローバル案件の仲介やシンガポールを中心に、日本の不動産投資に関心のある海外投資家や富裕層をターゲットに、物件購買者としての取り込みを進めている。
国内の不動産価格は原材料や人件費の高騰で上昇しているが、円安環境もあり、国内の不動産はまだまだ割安との判断から海外投資家の高い関心は今後も続きそうだ。
また国内では個人の相続税対策や、中小企業の新規事業の投資対象として不動産投資は注目されている。
同社は売却先を確保するために、これら購買層の開拓に注力していく。
「CREAL PRO」は、売上高10,011百万円(前年同期比918.5%増)、売上総利益1,549百万円(同144.1%増)となった。
大阪のホテル売却が寄与し、売上高は大幅な増収となった。
同ホテルについては売却後のアセットマネジメント業務を受託しており、その報酬も通期の売上高に寄与する。
大阪万博の開始を2025年4月に控えた時期でのホテル売却となったが、同社としては万博開始後よりも、万博開催の機運が高まっている現段階での売却が有利と判断したようだ。
下期に向けては大型案件の売却予定はなく、収益の中心はアセットマネジメント業務からのフィー収入となる見込みである。
「CREAL PB」は、売上高3,918百万円(前年同期比28.3%増)、売上総利益341百万円(同22.6%増)となった。
DXを活用した販売体制の強化に加え営業担当の人員増強を図った結果、投資用区分レジデンス物件の販売戸数が増加し、増収増益を確保した。
事業の利益指標である粗利率(売上総利益率)は8.7%となり、前年同期の9.1%を0.4ポイント下回った。
近年の不動産価格の上昇を背景に物件の仕入額が拡大傾向にあり、総利益率の低下を招いたと考えられるが、販売戸数の増加で補い増益を果たした。
同様の状況が予想される下期に向けて強化中の営業活動をさらに活発化し、ターゲットの個人投資家等へ商品提案を進める考えである。
3. KPIの動向
「CREAL」の売上総利益はGMV×テイクレートからなる。
このうちテイクレートは、案件組成手数料、ファンド運用期間手数料、償還手数料からなる確定フィーと、ファンドの外部売却時のキャピタルゲインのプロフィットシェアである変動フィーで構成され、これまでの実績から8~10%としている。
GMVは調達時点(ファンド成約時点)の数値で集計・公表される一方で、「CREAL」の売上高及び売上総利益への計上は取引決済時点(物件売却時点)で行われることから、GMVの成約から売上総利益の計上までに多くのファンドでおおむね1年前後のタイムラグが生じる。
このため、GMVは「CREAL」のサービスの事業規模を示すとともに、売上総利益の先行指標となるため、KPIのなかでも重要なものである。
一方で、「CREAL PB」の売上総利益は売上高×粗利率で算出される。
また、「CREAL PRO」はフィービジネスが主体であることから、売上の大部分が売上総利益となる。
主力の「CREAL」の売上総利益は全体の40.3%(2024年3月期)を占め、同社の利益成長に大きく貢献していることから、同社はGMVと投資家数を最重視し、リピート投資率、売上総利益等もKPIとして設定している。
GMVは2025年3月期第2四半期末時点で累計595.0億円(前年同期比57.7%増)と大きく成長した。
通期は期初計画において300.0億円を獲得することとしているが、2025年3月期第1四半期末時点で118.7億円(進捗率39.6%)と堅調であり、今後の利益成長への期待が高まる。
また、GMVの基盤となる重要な要素である累計投資家数も81,549人(前年同期比54.8%増)と大きく伸長した。
通期計画では30,000人を獲得することとしているが、2025年3月期第2四半期末時点で17,670人(進捗率58.9%)と堅調に推移している。
GMVに関する重要指標の1つである「CREAL」投資家のリピート投資率※は2025年3月期第2四半期で87.6%と前年同四半期比2.1ポイント上昇し、さらに高い水準へと推移した。
リピート投資率は新規投資家の投資割合にもよるため獲得施策等の状況によって上下するが、2025年3月期第2四半期単体でも施策が奏功し、高水準を維持した。
顧客の投資マインドの高まりで投資家獲得も堅調と言えるだろう。
※ 過去1年間に投資実績がある投資家の投資金額が該当四半期のGMVに占める割合。
なお「CREAL」は、ファンド運営終了後も償還された金額と同水準、もしくはそれ以上の金額を新ファンドへ再投資するロイヤリティの高いユーザー層を獲得していることから、SaaSに近い安定積み上げ型モデルの収益構造となっていることが窺える。
同社はSBIホールディングスとの提携強化が進んでいるほか、ファンドの拡充にも注力しており、今後もさらなるGMV及び累計投資家数の成長が想定され、再投資プラス新規投資のループも大きく拡大するものと予想される。
「CREAL」は成長性と安定性を内包し、同社事業全体の成長ドライバーとして、さらなる高い成長ポテンシャルを有するサービスになると弊社では見ている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)