[日本インタビュ新聞社] - クリナップ<7955>(東証プライム)はシステムキッチンの大手で、システムバスルームや洗面化粧台も展開している。重点施策として、既存事業の需要開拓と低収益からの転換、新規事業による新たな顧客の創造、ESG/SDGs視点での経営基盤強化を掲げている。25年3月期は新設住宅着工戸数の低迷、水まわりリフォーム需要の伸び悩み、原材料・資材価格の高騰などの影響で減益予想としているが、積極的な事業展開で26年3月期の収益回復を期待したい。株価は安値圏で軟調だが、高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。
■システムキッチンの大手、システムバスルームも展開
厨房部門(システムキッチン)および浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)を展開している。24年10月5日に創業75周年を迎えた。
24年3月期の部門別売上高構成比は厨房部門82%、浴槽・洗面部門12%、その他6%、新築・リフォーム別売上高構成比は新築45%、リフォーム51%、その他5%だった。システムキッチンの大手で、同社資料によるとシステムキッチンの市場シェアは20年3月期が17.5%、21年3月期が18.5%、22年3月期が19.8%、23年3月期が20.9%、24年3月期が22.0%、25年3月期中間期が22.2%と上昇基調である。収益面では新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすい。
中高級品に強みを持ち、厨房部門は最高級ステンレスキッチンCENTRO(セントロ)、中高級価格帯のステンレスキャビネットキッチンSTEDIA(ステディア)、普及価格帯システムキッチンrakuera(ラクエラ)、コンパクトキッチンcolty(コルティ)、浴槽・洗面部門はバスルームAQULIA-BATH(アクリアバス)、yuasis(ユアシス)、洗面化粧台TIARIS(ティアリス)などを主力製品としている。
24年9月には普及価格帯システムキッチンrakueraをモデルチェンジして受注開始した。24年10月にはシステムバスルームSELEVIAにラインアップしたアイテム3品「ぐるもみジェット」「シルクベールシャワー」「乾動!優レールハンガー」が、公益財団法人日本デザイン振興会の2024年度グッドデザイン賞を受賞した。
競争力強化に向けてショールーム戦略も強化している。20年6月にはKITCHEN TOWN YOKOHAMA(横浜市みなとみらい)をオープンし、旗艦ショールーム全国4拠点(東京、横浜、名古屋、大阪)体制とした。24年7月には熊本ショールームを約30年ぶりに移転オープン、24年11月にはつくばショールームをリニューアルオープンした。
販売ルートは工務店の会員登録制組織「水まわり工房」加盟店を主力としている。22年10月にはタイ向けシステムキッチンの現地生産を開始した。物流面では首都圏の物流強化の一環として、24年4月には相模原プラットフォームをリニューアルして本格稼働した。
■サステナブルビジョンは「人と暮らしの未来を拓く」
長期ビジョンの「クリナップサステナブルビジョン2030」(CSV30)では、2030年度の目標として財務目標(連結)では売上高1500億円、営業利益95億円、ROE8.5%、非財務目標では2013年度比温室効果ガス50%削減、女性管理職比率15%、男性育児休暇取得率100%、有給休暇取得率60%を掲げている。
既存事業に関しては、水回り3品(キッチン、浴室、洗面)事業での安定した収益確保を目的として中高級品の販売力強化、システムバス販売の底上げ、リフォーム需要獲得、水回り3品で培ったノウハウを活かしたサービス・物流分野での外販ビジネスの拡大、生産変革による原価低減、間接業務の効率化などで利益改善を推進する。
なお福島県いわき市に生産拠点を構えている。東日本大震災の翌年の12年12月に公益財団法人クリナップ財団を設立し、福島県の復興支援を目的として活動している。そして24年7月には、クリナップ財団の24年度の奨学生50名を決定した。13年度に開始した奨学支援事業は震災復興支援に有用な人材育成を目指し、12年間で累計奨学生は510名となった。
23年2月には、CSV30の実現に向けて「未来キッチンプロジェクト」を始動した。武蔵野美術大学との産学共同で社会課題へ取り組む「未来キッチンラボ」の創設、過去に販売した「キッチンキャビリサイクルプログラム」の開始、未来を担う子供達からアイデアを公募する「未来キッチン イラストコンテスト」の開始、という3つのアクションを通じて、2030年までにシステムキッチンの枠を超えた新しいキッチンの事業化、より心豊かな食文化の創造を目指す方針としている。また「未来キッチンプロジェクト」の一環として、会員制リフォームネットワーク「水回り工房」にて、23年4月より「キッチンキャビリサイクルプログラム」を開始した。資源の有効活用を推進する。
23年9月には同社ホームページ上に「サステナビリティレポート2023」を公開した。CSV30実現に向けた取り組みの進捗をはじめ、CSR方針を見直して新たに策定した「サステナビリティ方針」や、23年に策定した「クリナップグループ環境ビジョン2050」および「クリナップグループ人権方針」も掲載した。23年12月には、グループの2030年度温室効果ガス削減目標においてSBT(Science Based Targets)イニシアチブからの認定を取得した。
24年3月には、23年2月に始動した「未来キッチンプロジェクト」を通じて研究している次世代キッチンの1つとして「モビリティキッチン」のプロトタイプを発表した。
■25年3月期減益予想
25年3月期の連結業績予想(10月31日付で下方修正)は、売上高が24年3月期比1.6%増の1300億円、営業利益が22.0%減の10億円、経常利益が17.1%減の15億円、親会社株主帰属当期純利益が35.3%減の9億50百万円としている。配当予想は24年3月期と同額の31円(第2四半期末13円、期末18円)としている。予想配当性向は117.7%となる。
第2四半期累計(中間期)の連結業績は、売上高が前年同期比0.0%減の635億31百万円、営業利益が63.8%減の3億79百万円、経常利益が53.7%減の6億16百万円、親会社株主帰属四半期(中間)純利益が66.1%減の2億56百万円だった。
価格改定を実施し、原価低減策も推進したが、需要の伸び悩み、原材料・資材価格の高騰、物流コストの増加、減価償却費の増加の影響で大幅減益だった。部門別の売上高は厨房部門が1.5%減の512億28百万円、浴槽・洗面部門が3.9%減の74億94百万円だった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が316億43百万円で営業利益が2億72百万円、第2四半期は売上高が318億88百万円で営業利益が1億07百万円だった。
通期はプロモーション強化による需要喚起や全社的な原価低減を推進するが、新設住宅着工戸数の低迷、水まわりリフォーム需要の伸び悩み、原材料・資材価格高騰の影響などをカバーできず、前回予想(5月8日付公表の期初計画、売上高1340億円、営業利益21億円、経常利益27億円、親会社株主帰属当期純利益16億円)に対して、売上高は40億円、営業利益は11億円、経常利益は12億円、親会社株主帰属当期純利益は6億50百万円それぞれ下回る見込みとした。なお24年12月にはコンパクトキッチンHIROMAの価格改定を実施した。積極的な事業展開で26年3月期の収益回復を期待したい。
■株価は調整一巡
株価は安値圏で軟調だが、高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。12月24日の終値は651円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS26円34銭で算出)は約25倍、今期予想配当利回り(会社予想の31円で算出)は約4.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1571円31銭で算出)は約0.4倍、そして時価総額は約244億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)