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米『中国軍事力報告書』の「汚職摘発で中国軍事力向上」指摘は国防費獲得のため(1)【中国問題グローバル研究所】

発行済 2024-12-25 10:58
更新済 2024-12-25 11:15
© Reuters.
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*10:58JST 米『中国軍事力報告書』の「汚職摘発で中国軍事力向上」指摘は国防費獲得のため(1)【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。


米・国防総省が12月18日に『中国軍事力報告書』を発表し、「(中国の)汚職摘発が進んだためにロケット軍の作戦能力が向上する可能性がある」と指摘した。
したがって「台湾武力攻撃で失敗したら、中国は核兵器の先制使用をするだろう」とも予測している。


トランプ第二次政権(トランプ2.0)で「政府効率化省」を担当することになっているイーロン・マスク氏が「国防費の無駄と非効率化」を盛んに表明しているので、そのことに対する警戒感からか、米・国防総省は国防費獲得のために「中国の脅威」を誇張しているものと思われる。


しかし、そのようなことに利用された中国はたまったものではないにちがいない。
激しい抗議と批判と、中には冷笑も中国のネットに溢れている。



◆米・国防総省が発表した『中国軍事力報告書』の内容
12月18日、アメリカの国防総省は、毎年発表している『中国軍事力報告書』の2024年版を発表した。
正確にはMilitary and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2024(※2)(中華人民共和国に関わる軍事・安全保障の動向 2024)というタイトルだ。
ここでは中国で用いている通称『中国軍事力報告書』(以下、「報告書」)で話を進める。
180ページにも及ぶ長編の「報告書」なので、ザックリとしたポイントだけを並べると、以下のようになる。


1.2023年、中国人民解放軍は汚職関連の調査と上級幹部の解任の新たな波を経験し、2027年の近代化目標に向けた進捗を妨げた可能性がある。


2.一方、汚職事件は中国のミサイル産業が急成長していた時期に起きた弾道ミサイル用地下サイロ建設に関する詐欺事件と関係があるようなので、その摘発は中国指導者に対する信頼を高め、核任務が特に重要であることを軍に認識させた。
その結果、サイロを拠点とする部隊の全体的な作戦即応性が向上したと考えられる(筆者注:ここで言う「サイロ」とはミサイルサイロのことで、大陸間弾道ミサイルなどの大型ミサイルを格納する建築物のことである。
今ではそれが地下に建設されていることが多い)。


3.その結果、中国が保有する運用可能な核弾頭は去年より100発ほど増え、今年半ばで600発以上所有していると推定される。
4年間で3倍になっている。
2030年までには1000発を超えるだろう。
新型大陸間弾道ミサイルが開発され運用可能になれば、中国は米国本土、ハワイ、アラスカの標的に対して通常攻撃を行うことができるようになる。


4.中国が台湾に対する武力攻撃に失敗した場合は、中国は核兵器の先制使用をする可能性がある。
(主要概略は以上)

思うに、米・国防総省が毎年発表している「中国軍事力」に関する年次報告は、米議会へのアピールで、「これだけ中国軍の脅威が差し迫っているのだから、もっと軍事予算を増やせ」と、米議会予算委員会に対して主張することが主要な目的だと考えていいだろう。



◆イーロン・マスクの米・国防費に対する批判
テスラCEOのイーロン・マスク氏はトランプ2.0で「政府効率化省(DOGE:Department of Government Efficiency)」を率いることになると、トランプ次期大統領は今年11月12日に発表している。
DOGE(ドージ)という名称はイーロン・マスクが支持する仮想通貨ドージ・コイン(Doge Coin)の「Doge」から取ったものだと言われている。


イーロン・マスクは、年間5,000億ドルの無駄な政府予算の削減を計画していると何度も表明し、11月17日には(※7)とした上で「8,860億ドルの予算を抱える国防総省は、7回連続で監査に失敗した。
何十億ドルもの金額を把握できていない。
昨年、軍産複合体と無駄と詐欺に満ちた国防予算に反対票を投じた上院議員はわずか13人だった。
これは変えなければならない」とXに投稿している。


これに対してイーロン・マスクはアメリカ国旗のマークを2つ貼り付けて返信した(※8)。


このように、国防総省にとっては、そうでなくとも増加しなかった国防予算を、トランプ2.0になったら、イーロン・マスクが徹底して削減することへの危機感がある。
だから、「中国軍はこんなに強くなった」と米議会に対して訴えるために「報告書」を発表しているわけだが、中国としては、そんなことに利用されるのは我慢ならないといったところだろう。



「米『中国軍事力報告書』の「汚職摘発で中国軍事力向上」指摘は国防費獲得のため(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。



この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。



写真: 米・国防総省が発表した年次報告2024『中国軍事力報告書』のカバー

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://media.defense.gov/2024/Dec/18/2003615520/-1/-1/0/MILITARY-AND-SECURITY-DEVELOPMENTS-INVOLVING-THE-PEOPLES-REPUBLIC-OF-CHINA-2024.PDF
(※3)https://x.com/elonmusk/status/1857924169393975482
(※4)https://x.com/elonmusk/status/1859996677316510131
(※5)https://x.com/elonmusk/status/1860574377013838033
(※6)https://thehill.com/homenews/house/5008598-elon-musk-department-efficiency-defense-budget/
(※7)https://x.com/SenSanders/status/1863268770371772863
(※8)https://x.com/elonmusk/status/1863297860651069586
(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/937e0f78070679355f75b0cfea4625e69c145fc8



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