一部の気の早い投資家は、「サマーラリー」と囃し立てているようだ。空模様は、関東甲信越地方が、まだ梅雨入りさえしていないのに、相場模様では、カラ梅雨、早期の梅雨明けへの待望である。無理もない。5月相場では、日経平均株価が月初に一時、4月末比1159円安と急落して2万6000円台を割り、今年3月以来の安値と土砂降りとなったのに、そこから底上げし、月末には月間で431円高と反発した。前週末3日までの6月相場も、481円高となお上値を伸ばして引けており、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策に神経質に反応している米国市場を尻目に、東京市場は見切り発車をしようとしているのかもしれない。
しかしである。東京市場が閉じたあとに開いた前週末3日の米国市場で、ダウ工業株30種平均(NYダウ)が、348ドル安と反落して引けたことを突き付けられてみると、いくら気の早い投資家といえども、大きく振り上げた拳の落としところに苦慮するはずである。5月の米国の雇用統計で、非農業部門の雇用者数が市場予想を上回りFRBの積極的な金融政策への警戒感が再び強まったことが、カタリスト(材料)となった。
FRBのインフレ抑制策が行き過ぎて景気後退(リセッション)を招くとは以前から懸念されていた。6月14日から15日に開催予定のFOMC(公開市場委員会)、7月26日から27日に開催されるFOMCでの各0.5%の政策金利の引き上げはすでに株価に織り込み済みとされているが、9月のFOMCでは0.25%といったん引き締め策を緩めるのかそれともそこでも0・5%の引き上げを続けるのか揺れているということのようである。このカギは、世界の中央銀行の総裁が集まる8月開催のジャックホール会議での動向に掛かっているとされている。
しかしそれよりも何よりも、3日の米国市場で自動車業界の勝ち組・テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、経済悪化を先取りして新規採用の凍結と10%の人員削減を指示したと伝えられたことは、大きなネガティブ・サプライズとなった。急に相場上空に黒い梅雨雲が張り出し、線状降水帯に覆われた悪印象であり、土砂降り再現の悪い予感さえする。
ということであれば、東京市場でも手放しのカラ梅雨・早期梅雨明け待望論にはやや疑問符がつくことになる。そこでである。今週の当特集では、早めの「サマーラリー」があるのかないのかインカム・ゲイン銘柄を中心に小手調べをすることとした。このインカム・ゲイン銘柄をそう甘くみてはいけないのである。配当利回りが、仮に土砂降りやあるいはジメジメとした長雨に見舞われる梅雨寒相場になった場合でも下値抵抗力として働くのはもちろんである。さらに例えばパイオラックス<5988>(東証プライム)は、今年5月30日に配当政策の変更を発表し、3年間限定で連結配当性向を100%として今3月期配当も年間127円(前期実績45円)としたことでストップ高し、前週末3日も続伸し年初来高値を更新した。また日本郵船<9101>(東証プライム)も、株式分割と分割落ち後に今期配当の実質増配を発表して8%超の急伸を演じ、1万円の大々台での強調展開が続いている。
両社株の株価推移は、インカム・ゲインがキャピタル・ゲインの値幅効果とも両立することを示唆しているとも受け取れる。この前例の学習効果からは、配当利回りランキングの上位ランク銘柄は要注目となるはずである。そこでまず注目は、債券投資の所有期間利回り感覚で足元のこの6月末に配当権利取り期日が迫っている資金効率の良好な銘柄となる。6月期決算銘柄か、もしくは12月期決算会社で中間配当を実施予定にある銘柄となる。次いで浮上するのは、この6月末に株式分割の権利付き最終日を迎える銘柄で、増配予定の銘柄も含まれている。空模様と相場模様をウオッチしつつ、権利取りで小手調べすれば、値幅効果のオマケもフォローしてくることを期待したい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)