Takaya Yamaguchi
[東京 2日 ロイター] - 日銀は9月21、22両日開催した金融政策決定会合時の「主な意見」を2日、公表した。賃金上昇を伴う物価安定2%目標の持続的・安定的な実現について「来年1―3月ごろには見極められる可能性もある」との意見があった。
金融政策運営を巡り、9月会合時点では「賃金の上昇を伴う形で物価安定の目標の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、イールドカーブ・コントロール(YCC)のもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要がある」との意見が出された。
金融緩和の継続を通じ「賃上げのモメンタムを支え続けることが必要」との意見も出された。
先行きの物価見通しが上振れるかが不透明との理由から「運用を柔軟化した現行のYCCのもとで、物価動向を見極めることが重要」との指摘や、「長期金利は比較的安定しており、追加的な見直しを行う必要はない」との声もあった。
先行きの政策運営を巡り「YCCの枠組みの撤廃やマイナス金利の解除は、あくまで、2%実現との関係で、その成功とセットで論じられるべき」との指摘もあった。
物価安定目標の持続的な実現には、賃金上昇が定着し、価格転嫁を通じてサービス価格を中心とした物価上昇が定着することが必要との観点から「賃金上昇のモメンタムが中小企業を含めて着実に強まっていくのか、賃金上昇に伴う労働コストの価格転嫁が着実に進んでいくのかという点に注目している」との見方もあった。
9月会合では「予想物価上昇率に上昇の動きがみられ、やや距離はあるが、物価安定の目標の達成に近づきつつあるため、今年度後半は、来年に向けた賃上げ動向も含め、その見極めの重要な局面となる」との意見があった。
日本経済は今が正念場で、企業の改革意欲を後押しすることが求められる局面とし、「政策修正の時期や具体的な対応については、その時々の経済・物価情勢や見通しに依存するため、不確実性が大きい。現時点で決め打ちできる段階ではない」との声がある一方、来春にも目標達成の見極めが可能となる状況をにらみ、1)市場機能の改善、2)出口を見据えたコミュニケーション――などの環境整備を進めることが重要、との意見も出た。
仮にマイナス金利を解除しても「実質金利がマイナスであれば金融緩和の継続であると捉えられる。こうしたことを丁寧に発信していくことが重要」との意見や、将来の出口局面を念頭に「YCCのみならず、国債以外の資産買い入れの要否についても検討すべき」との指摘も出た。
<経済・物価の不確実性「きわめて高い」>
消費者物価に関しては「輸入物価の下落に遅行して、ようやく財価格の伸び率が低下しつつある。この点を踏まえると、先行きの物価上昇率は鈍化していく可能性が高いと考えられる」との声があった。
消費者物価上昇率は2%を上回る状況が続いているが、「依然として輸入物価上昇の価格転嫁が主因」とされ、今後も輸入物価上昇の価格転嫁が長引くことで「消費者物価上昇率が上振れた状況がしばらく続く可能性がある」との意見も出された。運送料や公共サービス料金の値上げが想定され、「来年度も上昇が続くと考えられる」との見方もあった。
企業の賃金・価格設定行動の一部に「従来よりも積極的な動きがみられ始めている」ことから、「賃金上昇を伴った物価上昇につながる好循環が生まれつつあると考えられる」との意見も出た。「来年の賃上げ率が本年を上回る可能性も十分にある」との指摘もあった。
経済・物価の不確実性に関しては「引き続き、きわめて高い」との見方が示された。為替円安や原油高を念頭に「物価が想定ほど下がらず上振れしていくリスクも相応にある」との意見もあった。