[ロンドン 20日 ロイター] - 英最高裁は20日、人工知能(AI)システムが考案した発明品の特許登録を認めない判断を示した。発明者は人間か企業でなければならないという知的財産庁の見解を支持し、AIシステムを開発した原告の米科学者の敗訴となった。
原告である米国のコンピューター科学者スティーブン・ターラー氏は、自身のAIシステム「DABUS」が考え出した発明について英国で2件の特許を申請したが、英国の知的財産庁(IPO)は、発明者は機械ではなく、人間か企業でなければならないとして申請を拒否。これを受け、ターラー氏が訴訟を起こしていた。
最高裁は全会一致で同氏の訴えを退け、英国の特許法では「発明者は自然人でなければならない」との判断を示した。
判決文は「この上訴は、AIによって自律的に行動する機械から生み出された技術的進歩が特許に相当するかという広範な問題とは関連しない」と表明。「発明者」の定義を拡大しAIを搭載した機械も含むべきかという問題にも関連しないとの見解を示した。
ターラー氏の弁護士は声明で「今回の判決は、AIによって自律的に生み出される発明の保護という点で英国の特許法が現在のところ全く適していないことを立証するものだ」と述べた。
IPOの広報担当者は、今回の判断とAIによる発明品に対する特許に関連した法律の明確化を歓迎。「特許制度、さらに広範な知的財産がそのような発明品をどのように扱うべきかという正当な疑問」があり、英政府はこの分野の法律を引き続き検討していくとした。
ターラー氏は米国でも、AIシステムが考案した発明品の特許申請を特許商標庁に拒否され、訴訟を起こしたが、米最高裁が今年、同氏の訴えを退けている。
パウエル・ギルバート法律事務所の知的財産担当パートナー、ラジビンダー・ジャグデフ氏は、今回の判決は米欧豪の裁判所による同様の判決を踏襲しており、「発明者は自然人でなければならないという確信を与えた」と指摘。ただ「この判決は、ある人が発明を考え出すためにAIを使用することを妨げるものではない。そのようなシナリオでは、その人が発明者であると特定されれば、特許を申請することは可能だ」とした。