[東京 9日 ロイター] - 米大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領が、政権移行への準備を始めた。安倍晋三前首相がトランプ大統領と蜜月だった日本政府は、首脳間の新たな関係を構築するため、電話会談や訪米の早期実現に向けた調整を本格化させる構えだ。特に次期政権の対中政策を注視しており、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた結束を維持できるかも焦点となる。
<訪米は1月就任以降か>
菅義偉首相は9日、民主党のバイデン氏と副大統領に就任する予定のハリス上院議員への祝意をあらためて示すとともに「日米同盟をさらに強固なものにするため米国と取り組んでいきたい」との認識を示した。また、バイデン氏との電話会談や訪米時期について「現時点で何も決まっていないがタイミングをみて今後、調整したい」と語った。
トランプ氏が2017年に大統領に就任して以降、国際社会は孤立主義を深める米国の振る舞いに翻弄された。その中で日本は安倍前首相がトランプ氏と「シンゾー」、「ドナルド」と呼び合い、ゴルフをする関係を築いた。
日本の政府内には「トランプ氏との良好な関係を世界に先駆けて築いてきた安倍晋三前首相の功績は決して小さいものではない」(首相周辺)との声があり、バイデン次期政権とも引き続き、新たな日米首脳間の関係構築を急ぐ構えだ。
ただ、それまで政治の世界と無縁だったトランプ氏とは異なり、民主党のバイデン次期政権とのパイプ作りはゼロからではない。「トランプ氏のときにはアポ取りの窓口探しに腐心したが、民主党政権の関係者には知り合いが多い」と、菅政権の関係者は言う。
4年前はトランプ氏の大統領就任前に安倍氏が訪米するという異例の対応を取ったが、今回は「コロナの感染状況なども見極めながら大統領就任式の1月20日以降のタイミングで模索することになりそうだ」と、与党関係者の1人は指摘する。
<新しい大国関係>
日本側が特に注目していることの1つが、バイデン次期政権の対中政策だ。トランプ政権は、大国化する中国に経済・軍事両面で圧力をかけ続けてきた。
人権問題を重視する民主党政権に変わっても大きな路線変更はないとの見方がある一方で、「スーザン・ライス元国連大使が要職に就き、対中外交を優先され『ジャパン・パッシング』のような状況になっては困る」と話す与党関係者もいる。ライス氏はオバマ政権で安全保障担当の大統領補佐官などを務め、中国が米国に提案した「新しい大国関係」に理解を示した経緯がある。
巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げて存在感を高める中国に対する米国の外交姿勢が変質すれば、安倍政権以来の「自由で開かれたインド太平洋」実現に向けた結束が揺らぎかねないと、日本の政府関係者は懸念する。
(ポリシー取材チーム)