2019年に入り、銅に救いはあるだろうか?答えは「そんなに期待できない」というところだ。
銅は電線からタービンにまで使用される汎用性が高い原材料であり、世界経済の健康を測るバロメーターと考えられ「ドクターコーパー」とさえ呼ばれる。しかし、その銅は現在ではだんだんと活気を失っている。
2019年が幕を開けてから、1%だけの上昇である。
銅はテクニカル的に売り
8日のニューヨーク商品取引所(COMEX)の銅先物の終値は1ポンドあたり2.6560ドルであった。20日の移動平均線のあたりを推移しており、3ドルまで程遠い。Investing.comのテクニカルでは、50日の移動平均線の2.725ドルの水準から200日の移動平均線の2.85ドルで「売り」シグナルである。
一方で、原油は、クリスマスイブにつけた安値から約20%回復し、50ドル台に回復することに成功している。
ゴールドマンは短期的な下落を予測
ブルームバーグが伝えるところによると、ゴールドマン・サックスは、ロンドン金属取引所(LME)の銅先物は3ヶ月で1メートルトンあたり6100ドルになり、6ヶ月後には6400ドル、12ヶ月後に7000ドルになるとみている。これは、当初の3ヶ月後に6500ドル、6ヶ月後に7000ドルの予想を下方修正している。
ゴールドマン・サックスは中国経済を「著しい減速」であると評価し、中国政府は今年前半で経済刺激策をこうじると考えている。これによって、銅と アルミニウムや他の卑金属価格が上昇する可能性はある。
2018年では銅価格は約20%下落し、これは過去3年間ではじめての年次マイナスとなった。中国と米国との休戦合意に至ったが、昨年ロンドン金属取引所とニューヨーク商品取引所において2018年の卑金属の殆どは2ケタの下落となっている。
貿易協議は銅価格を支えない.
米国と中国の貿易協議は今週に再開しているが、銅は上昇を続けることはできないだろう。
現在の銅価格の弱さの理由の一部に昨年の過剰生産の影響がある。これには最大の銅生産国であるチリが11月には7%増の54万720トンであったことなどである。この水準は2005年ぶりの高水準である。これは鉱石の品位が上がり、採掘効率が上がったためである。
しかし、フィッチ・レーティングス社の調査によると、銅の需給は今後に2年間にかけて改善されるという。
2年間で需要は加速し、生産は減少する
世界の銅の需要は2018年においては2360万トンであったが、フィッチ・レーティング社は、年2.6%ずつ増加し、2027年においては2980万トンになると予想されている。
チリの11月の記録的な生産高があったが、2018年は24万7000トンの供給不足が予想されていた。そして今後の予想も、2021年にかけて供給不足になると考えられている。
銅の需要の伸びの予想は、電気自動車(EV)の生産高と世界経済の回復の見通しによってなされている。1台の電気バスには300kgの銅が使われるという。
フィッチ・レーティングス社による分析によると、銅の需要は生産高を超え、今後数年かけて供給不足になるという。フィッチ・レーティングス社は特に、2021年にかけて供給不足が続くという。
2021年過ぎると、供給が再び上昇
フィッチ・レーティング社は、2021年を過ぎると世界の供給不足は縮小し、過剰供給も収まると考えられている。中国は世界の銅の生産成長の要因であり、2018年の880万トンの生産から2027年には1140万トンに増産となり、年3.1%の成長が予想されている。チリも同様、今後2年間の銅価格の上昇による好機を逃したくはないだろう。
ヴェダンタ・リソーシーズ社のスターライトの製錬所が環境上の理由で閉鎖されるにもかかわらず、インドは世界に銅生産国として名乗りを上げると予想される。フィッチ・レーティングス社は、2018年92万5000トンから、平均7.3%の成長で2027年には180万トンと予想されている。
フィッチ・レーティングス社によると、トランプ大統領によるインフラ構築の計画は市場予想に達さず、米国の需要は弱いという。