最近公表された米小売大手の第4四半期決算はまちまちな結果であった。好調な結果であった企業は、アマゾンと対抗するためのオンライン戦略が功を奏している一方で、サービスと製品をうまく組み合わせて顧客を実店舗へ誘導している。低調な結果であった企業は、米国民の変化についていけていないのだ。
以下が小売業者の決算報告で、注目すべき好調な2社と低調な1社である。
勝者:アバクロンビー&フィッチの経営改革
アバクロンビー&フィッチ(NYSE:ANF)は、3月6日発表の第4四半期決算で予想を上回った。四半期決算から同社の経営改革が功を奏していることが窺える。
同社の昨日の終値は26.64ドルで、決算を発表してから約20%高、前年比で約19.5%高となっている。
ホリスターを所有する同社は、EPSがアナリスト予想を20セント上回り1.35ドルとなっている。米国で少なくとも1年間以上営業している店舗での売上高は、前年比3%増でアナリスト予想の2倍となった。
また、同社のオンライン売上高は、第4四半期で36%増となり、年間10億ドルを突破した。
同社は店舗規模の縮小、オンライン販売の促進、ロイヤリティープログラムなどのマーケティング戦略の転換を通じて、経営改革を行っている。同社のFran HorowitzCEOは「我々の改革は勢いを増している」と述べていた。
2019年の業績見通しでは、同社は堅調な結果を見込んでいる。2018年の売上高、利益率、営業レバレッジの拡大は続くとみられている。
同社は昨年の67店舗に対し、85店舗の改装を今年計画している。一方、主に米国内で40店舗までの閉鎖を計画している。
テクニカル的には、同株は200日移動平均線を先週末に上回った。今週はさらに上昇することを示しているのかもしれない。
勝者:ベストバイはそれほど凋落していない
ベストバイ(NYSE:BBY)は2月27日、予想を上回る四半期決算や好調な2019年業績見通しを発表し、株価は上昇している。その日、同社株は14%程上昇した。
しかし、同社の昨日の終値は68.72ドルで、前年比約7%安となっている。
同社は「フォートナイト」の熱狂的な人気をゲーム機器の売上増の要因として挙げ、11%の四半期配当増と30億ドルの自社株買いを表明した。
オンライン販売への投資は実を結びつつある。同社の国内オンライン売上高は、第4四半期で9.3%増の29.6億ドルとなった。
同社は顧客サービスに注力することで実店舗、オンライン売上を促進し、アマゾン(NASDAQ:AMZN)と渡り合っている。5月に開始した年会費199ドルの「Total Tech Support」に、年末までで約100万人が加入したことを同社は発表した。
「顧客は家の中や店舗において我々と関わる中で、我々が提供するすばらしい顧客体験に気づきつつある」と同社のHubert JolyCEOは述べた。同氏は業績の一部はテクノロジーの革新に起因しており、「顧客の需要を喚起する」可能性があると述べている。
テクニカル的には、決算報告の後、11月ぶりに68.96ドルに接近して200日移動平均線を上回ったが、結局下回った。同株は買い手が主導権を握っていることを示すために、短期間で200日移動平均線を上回らなくてはならない。
敗者:クロ―ガーのオンライン売上は競合に後れを取る
3月7日に予想を下回る第4四半期決算を発表したクロ―ガー(NYSE:KR)の言い訳を、投資家は聞く気にもなれなかっただろう。同社はアマゾンやウォルマート(NYSE:WMT)などの競合との競争に苦戦している。
同社の昨日の終値は24.67ドルで、決算報告に反応して約10%も下落している。前年比では2.4%高となっている。
第4四半期における同社の利益と売上高は予想を下回った。また、同社は競争の激化するオンラインに多額の投資をするので、2019年の業績が予想以上に悪化することを警告した。
同社は2019年の業績見通しで2.15ドルから2.25ドルのEPSを発表し、アナリスト予想である2.26ドルを下回った。
店舗の改装や「Restock Kroger」と呼ばれているオンラインへの投資によって、同社の利益は下押しされると予想されている。1年以上前に開始された「Restock Kroger」では、昨年の30億ドルに対して、2019年に32億ドルの投資が計画されている。
2017年のアマゾンはホールフーズを買収して以来、食料品店はアマゾンとの競合に備えてテクノロジーへ投資しなくてはならなくなった。第4四半期のオンライン売上高が58%増だとしても、アナリストはクロ―ガーが競合に追従できるかどうかについては不安視するだろう。 Pivotal Researchのクロ―ガーについてのレポートでは、「2018年度はオムニチャネルへ投資し、オンライン販売の拡大は素晴らしいものであったが、これまでのところ利益はそれほど伸びていない」と述べられている。