動画ストリーミング大手のネットフリックス(Netflix) (NASDAQ:NFLX)は好調である。同社株は他社のテック企業と比較して、2019年で最もパフォーマンスが良い。
同社株が2019年に35%上昇し、株価が361.21ドルとなったことで、フェイスブック(NASDAQ:NASDAQ:FB)、アップル(NASDAQ:NASDAQ:AAPL)、アマゾン(NASDAQ:NASDAQ:AMZN)といったテクノロジー企業の中で最も高い上昇幅となっている。
こういった好調ぶりにもかかわらず、今年度はネットフリックスにとって最も困難な年になるだろう。従来のメディア企業の参入によって、同社は消費者へのコンテンツを変更している。同社のコンテンツは強く、自社のテクノロジーによって加入者数を世界中で爆発的に伸ばしているが、今年度はその勢いを失速させ、今後の増加数を低迷させ得るリスクが複数存在している。
まず、1月に発表した値上げによる影響によって加入者数の伸びに影響が出ていないのかどうかである。同社は月の購読料を13-18%値上げし、過去最大の値上げ幅となった。最も安い「ベーシックプラン」は月額9ドルと、以前の8ドルから引き上げられた。最も人気な「HDスタンダードプラン」は11ドルから13ドルに、「4Kプレミアムプラン」は14ドルから16ドルに引き上げられた。
同社が値上げを行うのはストリーミングサービスを開始して以来4度目であるが、今回の値上げが最も大きい値上げ幅であった。「バードボックス」や「Tidying Up With Marie Kondo」といった新コンテンツが好調であったため、今回の値上げはタイミングが良かったが、値上げによる加入者数の伸びへの影響はどのくらい出るのか、予想が難しい。
加入者数に関する同社の最新の予想によると、値上げによる影響はある程度出るだろう。第4四半期に加入者数は884万人増となり同社の予想を上回った。同社は今四半期の新規加入者数を890万人と予想し、2期連続の増加を見込んでいる。
競争環境の激化
ネットフリックスへの脅威として間近に迫っていることは、世界最大手のメディア企業の新規参入である。直近の参入ではウォルト・ディズニー(NYSE:NYSE:DIS)やAT&T Inc (NYSE:NYSE:T)傘下のワーナーメディアがある。両社は今年度末の自社ストリーミングサービスの開始に向けて準備を進めている。
我々は、資金力やコンテンツの強さを有するディズニーがネットフリックスの最大の脅威となると考えている。ディズニーのボブ・アイガーCEOは自社の成長戦略の中核として動画ストリーミングサービスを挙げている。
同氏は役員報酬の削減を行うとともに、新サービスへの投資のために事業成長を犠牲にすることもいとわない。同氏は、動画ストリーミングサービスを「アバター」や「ズートピア」のようなディズニーブランドを担うものになると発言している。
ディズニーはオンラインサービスへの取り込みを目的とした、21世紀フォックス (NASDAQ:FOX)のエンターテイメント事業の買収をもうまもなく締結するだろう。
オンラインストリーミング市場の競争環境は激しくなっているため、我々はネットフリックスに降りかかる次の試練は、多くのアナリストが懸念しているキャッシュバーン(現金燃焼)の管理だと考えている。
2018年に同社はコンテンツ開発に120億4000万ドルを投資したが、26億8000万ドルの赤字キャッシュフローとなった。今年度には30億ドルのキャッシュバーンや、負債比率がさらに増加する可能性がある。
同社の加入者が増加している限り、投資家は同社の巨額支出について懸念する必要はほとんどない。しかし、加入者の伸びが鈍化した場合、キャッシュバーンの増大は同社株の下落要因となり得るだろう。
要点
ネットフリックス株は、高成長株を求める投資家にとっては最適な投資先である。加入者数の規模やコンテンツ戦略の好調ぶり、テクノロジーの優位性を考慮すると、ネットフリックス株を嫌いになることは難しいだろう。しかし、本記事で取り上げたようなネットフリックスの潜在的リスクがあることは、気に留めておこう。