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Bristol-Myers Squibbが最近発表した第4四半期決算は、予想EPSを僅差ながら上回る
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過去12ヶ月間、株価は不安定な状況を継続
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今後12ヶ月間の市場コンセンサス見通しはまちまち
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(オプション価格を用いて算出した)市場予想は、2022年半ばまでやや強気、通期ではやや弱気
2月4日、製薬大手Bristol-Myers Squibb (NYSE:BMY)の第4四半期決算が発表された。同社の業績は堅調で、今期は免疫腫瘍薬「Eliquis」やメラノーマ治療薬「Opdivo」の使用量増加などが利益を牽引したが、長期的な成長の見通しには懸念がある。
今後3年から5年の1株あたり利益(EPS)成長率のコンセンサスは年率4.05%だ。ただし、いくつかの高収益医薬品の特許切れによる影響が予想されるため、潜在的な成長率は限定的である。
TTM(過去4回の実績)株価収益率(PER)(20.8倍)と収益予想に基づく推定PER(8.3倍)の間には大きな差異があるが、これは現在の評価がいかに収益見通しに対して敏感であるかを示している。
BMY株は過去1年間変動が激しく、8月には69ドルを2回上回り、11月末には53.60ドルまで下落した。
出所:Investing.com
BMYの最近の株価急騰や過去3ヶ月間のトータル・リターンである10.6%の上昇は注目に値するが、過去1年、3年、5年、10年の株価パフォーマンスは業界平均に比べて軟調だ。
出所:Morningstar
BMYは、2021年第1四半期を除く過去4年間、すべての四半期でアナリストの予想を上回り、一貫した収益成長を実現している。利益成長の安定性は、株価の大幅な変動とは顕著な対照をなしており、その変動が長期見通しの不安定さに起因していることを示している。
出所:E-Trade. 緑(赤)の値はEPSが想定地を上回ったか(下回ったか)を占める。
BMYは15年連続で増配しており、現在の配当性向は26.8%と緩やかな水準にある。3年後、5年後の配当成長率はそれぞれ7.7%、5.6%である。現在の配当利回り3.47%とともに、BMYはインカム志向の投資家から注目される存在となりそうだ。Gordon Growth Modelでは、現在の利回りと配当成長率からトータル・リターンを9~11%と予測しているが、このように利益が変動しやすい企業にこのモデルが適用できるかどうかは議論の余地がある。しかし、過去の実績に照らせば、この範囲の期待リターンは妥当と思われる。
前回、BMYについて書いたのは9月16日で、その時は中立(ニュートラル)/保有継続の評価をつけた。その後 (ほぼ) 5ヶ月間、BMYは上昇し、同期間の S&P 500 のトータル・リターンが 1.1% であるのに対し、11% のリターンを記録している。
BMYのバリュエーションは9月時点では妥当なものにみえ、市場コンセンサスの評価は強気で、12ヶ月の目標株価は当時の株価を約24.5%上回っていた。ただし、オプション市場からのコンセンサス・アウトルックは、強気ではない見方を示していたため、私はBMYの中立のレーティングを維持した。
株式オプションの価格は、現在からオプションの満期までの間に、株価が特定の水準(オプションの権利行使価格)よりも上昇(コール・オプション)または下降(プット・オプション)する確率についての市場のコンセンサス推定を反映したものである。同じ権利行使価格のコール・オプションとプット・オプションの価格を分析することで、オプションの価格を調整した確率的な価格予測を算出することができる。これは、マーケット・インプライド・アウトルックと呼ばれ、オプションの買い手と売り手のコンセンサスとなるものである。
BMYについては、前回の投稿から5ヶ月近くが経過し、最近の好業績もあって、再度分析を行っているところだ。
BMY株の市場コンセンサス見通し
E-Tradeでは、過去90日間にレーティングと目標株価を発表した8名のランク付けされたアナリストの見解を組み合わせることで、BMYのウォール・ストリート・コンセンサス見通しを算出している。コンセンサス・レーティングは強気だが、12ヶ月のコンセンサス目標株価は現在の株価を2.8%上回っているに過ぎない。
出所:E-Trade
Investing.comでは、21名のアナリストの見解からウォール・ストリート・コンセンサスを算出している。コンセンサスは強気であり、12ヶ月の目標株価は現在の株価より9.2%高くなっている。
出所:Investing.com
E-TradeとInvesting.comが算出した市場コンセンサスは強気だが、個々の12ヶ月目標株価の違いや、2つのコンセンサス算出の間でも、アナリスト各人の意見にかなり幅があることを示している。2つのコンセンサス目標株価を平均すると、12ヶ月の予想株価リターンは6%、予想トータル・リターンは9.5%となり、BMYの10年末の年率トータル・リターンに非常に近い数字となる。
BMY株のマーケット・インプライド・アウトルック
BMYの2022年半ば(2022年6月17日満期のオプションを使用)と2023年初め(2023年1月20日満期のオプションを使用)までのマーケット・インプライド・アウトルックを計算したところ、以下のようになった。この2つの満期日を選んだのは、6月と1月に満期を迎えるオプションは特に流動性が高い傾向にあるためだ。BMYのオプションの建玉量は、この2つの満期日において高い水準にある。
市場が示唆する見通しは、縦軸を確率、横軸をリターンとする価格リターンの確率分布という形で表現されるのが標準的である。
出所:E-Tradeによるオプション価格を用いて執筆者が算出。
2022年6月17日までのマーケット・インプライド・アウトルックは概ね対称的であり、同程度の確率でプラスとマイナスのリターンが発生することが予想される。分布の中心はゼロ・リターン付近である。この分布から計算される年率変動率は23%であり、個別銘柄としてはかなり低い。
プラス・リターンとマイナス。リターンの確率を直接比較しやすくするために、分布のマイナス・リターン側を縦軸に回転させると下図のようになる。
分布のマイナス・リターン側を縦軸に回転させたもの。E-Tradeによるオプション価格を用いて執筆者が算出。
この見方では、同じ大きさのリターンがプラスになる確率とマイナスになる確率が非常に似ている(青の実線と赤の破線がぴったりと重なる)ことがわかる。理論的には、投資家は全体としてリスク回避的であり、ダウンサイド・プロテクションのために適正価値よりも高い金額を支払う傾向があるため、市場が示唆する見通しはネガティブに偏ることが予想される。そのため、この市場予想見通しはやや強気と解釈される。
今後11.4ヶ月間(現在から2023年1月20日まで)のマーケット・インプライド・アウトルックをみると、マイナスの価格リターンが優勢だ。同程度のプラスのリターンよりもマイナスのリターンの確率が一貫して高い(赤の破線は一貫して青の実線を上回っている)。この見通しはやや弱気と解釈できる。この見通しから算出される年率換算のボラティリティは26%だ。
分布のマイナス・リターン側を縦軸に回転させたもの。E-Tradeによるオプション価格を用いて執筆者が算出。
BMYは最近の好調な業績を受けて、ある程度のポジティブなモメンタムを有している。6月17日までのマーケット・インプライド・アウトルックは、当面の間、ポジティブなトレンドの継続予想と一致する。しかし通期の市場予想は、収益成長に対する長期的な懸念を反映し、やや弱気となっている。ボラティリティについては、通期では上期より若干高くなる見通しだ。
結論
BMYはここ数ヶ月で上昇しているが、この上昇は主に2021年後半の大幅な下落からの回復を表している。過去3ヶ月で10.6%上昇するも、BMYは過去1年の医薬品製造業のリターン平均に大幅に遅れをとっている。
市場アナリストのコンセンサス評価は強気だが、個々のアナリストの見通しにはかなりの差があり、コンセンサスの予想間でも差がある。E-TradeとInvesting.comの12ヶ月目標株価コンセンサスの平均は、12ヶ月トータル・リターンが9.5%であることを意味している。
買い推奨の経験則として、12ヶ月の予想リターンが予想(年率)ボラティリティの少なくとも半分であることを確認したい。マーケット・インプライド・アウトルックによるボラティリティ予想を用いると、BMYはこの閾値に達しない。2022年半ばまでのマーケット・インプライド・アウトルックはやや強気だが、通期見通しはやや弱気だ。
BMYの総合的な評価は引き続き中立(ニュートラル)とする。