代替刺激策の欠点:
金融市場が統合されているため、金融の世界は、代替可能な比較的容易な資本移動を伴った状態へと移行している。量的緩和のかたちにおける金融刺激策は、資金供給と流動性を増やし、各国中央銀行による独自の行動を世界的な事象に変える。たとえば、貸付オペの期間を延長するなどの方法で金融政策をさらに緩和する意向はないとした日銀の決定は、日経株価指数の4%以上に及ぶ急激な下落を招く一方で、円高を招き、2011年の地震と津波以来、対USDでの最大の上げ幅を記録した。しかし、追加の代替刺激策がないということから、世界中の株価に影響を与え、FRBによる量的緩和からの後退の可能性という点で、株価の上昇を促進するアクセルから足を放させることになるため、米国の指数は1%を喪失した。月間資産買い取り額を100億ドルから200ドル程度削減するという米国の最初の引締め見通しが、レバレッジの解消が始まると予想される。これは、このアクションの影響が指標金利の25bpの上昇に相当し、昨日最も打撃を受けた金利敏感株に影響を与えるためである。今のところ市場は方向感を見失っており、1年ぶりの高水準に近いJPモルガンG7ボラティリティー指数は昨日2.8%上昇し、VIXが11%上昇するなど、ボラティリティーによって変動しつつあり、米国の株価オプションも特有のボラティリティーを示している。
本日は、ドイツの憲法裁判所が下す、ECBによる国債買取制度(OMT=Outright Monetary Transactions)の合法性に対する判断の結果が注目される。市場が方向感を見失っているため、このニュースは材料になるとみられ、ECBの訴えが意外にも避難されれば、EUR安を招く可能性が最も高く、EUR/USDにおけるレジスタンスからの下方突破を招くだろう。
英国の5月の雇用統計の発表によって、GBPが再びトレーダーの注目を集めるだろう。ILO失業率は7.8%で変わらず、失業給付要求者は4月の7300人を下回る5千人の減少が予想されるが、7ヵ月連続での給付要求者の減少となるだろう。
本日のユーロ圏のデータは、4月の調整後労働日数と、季節調整済み鉱工業生産指数で、いずれも縮小することが予想される。前年比の数値を示す前者は、-1.7%から-1.2%へと景気収縮のペースダウンが予想され、前月比の数値を示す後者は、3月に1%の拡大となったが、今回は0.2%の収縮となり、景気収縮領域に逆戻りすると予想される。
オーバーナイトでは、重要なデータが発表される。ニュージーランド準備銀行が金利決定を行うとみられ、15人のエコノミスト調査では、指標金利が現在の2.5%から変更されると予想する者はいない。その上、日本の財務省は、外国資金流出入に関する週間データを発表するが、JPY、日経株価指数、日本国債における最近の変動を考えれば、市場では、通常、同データが発表される際に見られる動きよりも大きな動きを招く可能性がある。日銀の政策決定委員の白井さゆり氏も、財界リーダーとの会合で演説を行うと予想され、JPYに関する議論を行う機会として機能するとみられ、日銀が将来の刺激策への意図を否定したことに伴って生じた市場の反応を若干覆す可能性がある。
マーケット
EUR/USD
• ギリシャがMSCIによって新興国に格下げされたにも拘わらず、このことは、先に発表されたラッセル・インベストメンツによるギリシャの格下げによってかなり織り込み済みであったため、昨日、EUR/USDは、上昇した。
• 同ペアは現在、1.3300 – 1.3320の重要な領域にあり、2012年7月~2013年2月のラリーの23.6%リトレースメント水準である後者の水準でレジスタンスを見出している。しかし、重要なレジスタンスは、2月~3月の下落の61.8%リトレースメント水準であり、トレンドライン・レジスタンスとボリンジャーバンド・レジスタンスと一致する1.3340にもある。その後のより弱いレジスタンスは、1.3370と1.3425に現れるだろう。サポートは1.3300、1.3230、1.3200に見られる。
USD/JPY
• 日本の機械受注指数が、4月の円安に対するこのかたちにおける企業投資が前月比8.8%減少したことを示し、予想よりも悪かったことから、USD/JPYの反発が生じた。
• レジスタンスは、96.40と97.05、11月~5月のラリーの23.6%リトレースメント水準である97.90に現れる可能性が高い。サポートは、95.90に現れ、昨日見られたスパイク・サポートは95.60にある。次のサポート水準は95.30と94.90にある。
GBP/USD
• 英国の4月の鉱工業生産指数と製造業指数が予想よりも良かったことから、GBP/USDは押し上げられ、大半の通貨に対してUSDに対する下方圧力が生じていたことから、この動きはさらに助長された。
• 昨日、レジスタンスは、3月から5月に維持された右肩上がりのチャネルのかつてのサポートラインである1.5650に現れた。次に現れる非常に強力なレジスタンスは、2012年下半期に見られたラリーの61.8%リトレースメント水準であり、200日移動平均と一致している1.5690に現れる。重要なサポートは1.5610に見られ、次のサポートは、1.5550-1.5570領域に現れるだろう。
金
• USD指数が昨日朝以来0.70%低下したが、金はこのUSD安を利用することができなかった。
• レジスタンスは、かつての取引レンジである1378ドル~1387ドルに見られ、次のレジスタンスは1400ドルに見られる。サポートは、再び1363ドルと1348ドル前後に現れる。
原油
• 昨日、WTIは、サポートを94.05ドルで見出した後、反発して、現在は94.45ドルのサポートを試しつつある。本日、原油備蓄量が発表されるため、コモディティーに対するトレーダーからの注目が拡大するだろう。
• レジスタンスは、2つのフィボナッチ・リトレースメント水準が見られる95.50 – 95.70領域に現れる。強力なトレンドライン・レジスタンスは96.35ドルと97.00ドルに現れる。サポートは、94.45ドル、94.05ドル、50日移動平均である93.50ドルで見出される。
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