再び原油市場が、注目の的となった。国連のシリアに対する査察団が、予想よりも早く出立するとのニュースを受けて、何等かの重要な事実が見出されたのではないかとの憶測が浮上したことから、米国の日中に原油は上昇した。しかし、後に、国際エネルギー機関(IEA)が、世界の石油市場への供給は潤沢であり、緊急時の備蓄解放は必要ないとした上、大きな混乱が生じた場合には緊急向け備蓄を解放することにより対応する「用意がある」との見解を発表した。このコメントにより、原油価格は急激に下落した。しかし、大半の新興市場通貨が下落し続けたことから、新興市場の大敗は一時的なリスク回避によるものではないことが伺える。USDはG10通貨すべてに対して上昇した。
欧州の昨日の経済ニュースの大半は無視され、米国の経済ニュースが市場を動かした。フランスとイタリアの景況指数および企業信頼感指数が予想よりも良かった(ただし、ドイツのCPIは予想を若干下回り、失業率は、低下することなく上昇した)ことを受けて、EUR/USDは、欧州時間の日中、上昇してもよい状況にあったが、実際には何の反応も見られなかった。その上、ECBのノボトニー氏は、将来的な政策指針が永久に有効というわけではないと語った。一方、米国のGDPの修正値が予想よりも良いことが明らかとなった時点で、EUR/USDは押し下げられた。これは、市場が、FRBが動く能力を保持する一方、ECBがほぼ保留状態にあるとの市場の認識を示唆しており、焦点は、欧州のデータよりも米国のデータにあると考えられる。日本に関しては、総合インフレ率が前年比+0.2%から+0.7%に上昇する(予想どおり)など、月末で大量のデータが発表されたにも拘わらず、USD/JPYには事実上何の反応もなかった。全ての注目は、FRBと米国のデータに集中しており、取引を行うに際してはこの点を念頭に置く必要があるだろう。
データに関しては、本日、ユーロ圏のデータがいくつか発表される。7月の失業率は引き続き12.1%で変わらずと予想され、8月の景況指数は、92.5から93.8への上昇が予想され、8月のCPIインフレ率は前年比1.6%から1.4%に鈍化すると予想される。ドイツの小売売上高は、前月比で、6月が修正後-0.8%であったのに対し、7月は前月比0.6%の上昇を示すと予想される。通常こうしたニュースは、EURに対する支持材料となるが、既に概説した通り、それほど反応はないとみられる。カナダの第2四半期のGDPは、前四半期比で、第1四半期の2.5%から1.6%に鈍化したと予想され、USD/CADに対して一層の上昇圧力となる可能性がある。米国では、個人所得と個人支出の両方が、7月には鈍化したとみられる。所得は+0.3%から+0.2%に、支出は+0.5%から+0.2%に鈍化した。これにより、USDの過熱がいくらか抑えられる可能性がある。一方、8月のミシガン大学消費者信頼感指数は、速報値が80.0であったのに対し、80.5へと若干上方修正されると予想される。しかし、全般的に、為替市場にとって、本日の指標よりも原油市場がより重要であると考えられる。
マーケット
EUR/USD
• EUR/USDは、昨日下落し、心理的水準である1.3300(R1)を下方突破した。現在同ペアは、1.3231(S1)のサポート水準を試しつつあり、弱気筋が引き続き彼らのモメンタムを続ければ、この水準を割り込み、1.3152(S2)を目指すと予想される。一方、価格がこのサポート水準で反発すれば、再び1.3300(R1)水準を試す可能性もある。しかし、MACDオシレーターがゼロとトリガーラインを下回っていることから、当社の分析では弱気サイドが優勢であると考えられる。
• サポート:サポートは、1.3231(S1)の心理的水準に見出され、1.3152(S2)と1.3077(S3)がこれに続くだろう。
• レジスタンス:レジスタンス水準は、1.3300(R1)に存在し、1.3400(R2)と1.3448(R3)がこれに続くだろう。
USD/JPY
• USD/JPYは上昇し、98.09(S1)水準を上方突破した。現在、レートは、この水準の近くで推移しており、買い圧力によってこの水準が押し上げられれば、99.13(R1)のレジスタンスを試すだろう。その上、同ペアは、青色で記入された右肩上がりのチャネル内で推移しており、MACDは、まさにゼロを上回る強気な領域に突っ込んだばかりである点が、プラス材料となっている。
• サポート:サポート水準は、98.09(S1)に存在し、心理的水準である97.00(S2)と95.77(S3)がこれに続くだろう。
• レジスタンス:レジスタンス水準は、99.13(R1)に存在し、切りの良い数字である100.00(R2)と100.84(R3)がこれに続くだろう。
EUR/GBP
• EUR/GBPは、昨日の動きにおいて、急激に下落し、0.8577(R2)と0.8545(R1)水準を割り込んだ。現在の動きは、価格が、従来の動きの50%フィボナッチ・リトレースメント水準(0.8634)への調整の後に、下落トレンドに回帰したことを示唆している。弱気筋が引き続き圧力を掛け続ければ、0.8503(S1)のサポート水準を試すこととなり、この水準を下方突破して、0.8480(S2)水準に向けての攻防を後押しするだろう。その上、MACDオシレーターの数値がゼロを下回っており、弱気な趨勢を示唆している。
• サポート:サポート水準は、0.8503(S1)、0.8480(S2)、0.8437(S3)に存在する(日足チャート)。
• レジスタンス:レジスタンスは、0.8545(R1)に認められ、0.8577(R2)と0.8604(R3)がこれに続くだろう。
金
• 金は、横ばい推移となり、1394(S1)のサポート水準と1422(R1)のレジスタンス水準の間に留まった。価格は依然として20期間移動平均とこれを下回るクロス近くにあり、1394(S1)のサポート水準が、短期的な調整局面の始まりを示唆するだろう。その上、MACDオシレーターは依然としてゼロを上回る強気な領域にあるが、このトリガーラインを下回ってクロスしている点が、金の現在の弱気な趨勢を裏付けている。
• サポート:サポート水準は、1394(S1)に存在し、1376(S2)と1347(S3)がこれに続くだろう。
• レジスタンス:レジスタンスは、1422(R1)に認められ、1440(R2)と1485(R3)がこれに続くとみられ、いずれも日足チャートに見出される。
原油
• WTIは、引き続き取引レンジを上回って推移し、売り圧力が昨日の攻防に勝利を収めたため、見慣れた領域へと回帰した。現在、原油は、107.53(S1)のサポート水準を試しつつあり、これを下方突破すれば、105.50(S2)のサポート水準を目指す展開となるだろう。しかし、取引の方向性を見出すことができない以上、トレンドに乗る前に、横ばい推移の上下限から脱出するのを確認する必要があるだろう。
• サポート:サポート水準は、107.53(S1)、105.50(S2)、103.44(S3)に存在する。
• レジスタンス:レジスタンス水準は、108.85(R1)に存在し、112.14(R2)と114.21(R3)がこれに続くとみられ、これらは週足チャートに見出される。
通貨レートベンチマーク - 今日の勝者と敗者
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