意外なことに、FRBは量的緩和の縮小を行わないと決定:FRBが毎月の資産買取プログラムにおける850億ドルという金額を据え置いたため、USDはG10各国通貨に対して急激に下落した。FRBは、毎月の債券買取プログラムを50億ドルから100億ドル削減すると広く予想されていたため、市場はこのFRBの決定に驚いた。FRBは、量的緩和の縮小を実施する前に、景気回復の兆候をさらに見極めたいとし、失業率が6.5%を超えている限り、金利を歴史的な低水準である0%~0.25%の現在の水準に据え置くとの考えを示した。FRBの経済成長予測は、直近のレポート以来、低下している。これには、労働市場における限定的な回復と財政状態の逼迫に対する懸念が影響している。
年初来、FRBは、経済成長率予測を3回引き下げている。FRBは現在、米国経済は2013年中におよそ2.0%~2.3%の成長を示すとみているが、これは、2.3%~2.8%という当初の予想を下回っている。次の4年間に関しては、インフレ率は、この期間全体を通してFRBの目標値を下回ると予想されている。より正確には、FRBは、2013年のインフレ率は1.2%を下回る水準にとどまり、2016年までには1.7%~2%まで上昇すると予想している。
向こう数年は、失業率は低下すると予想されている。年末には、失業率が7.2%~7.3%になり、2014年には6.5%~6.8%に、2015年には5.8%~6.2%に、2016年には5.4%~5.9%になると予想されている。10月9日には、議事録が公開されるだろう。FRBの次の会議は、10月29日~30日に開催される。
USD/JPYが98.00を下回ったと発表された直後に、USDは急激に下落し、EUR/USDとGBP/USDは終日上昇した。コモディティー通貨は、新興市場通貨と共に、対USDで上昇した。もう一つの大きな変化は金に関するもので、金は1オンスあたり65ドル上昇して1368ドルを付け、先週の下落幅を取り戻した。
本日午後には、スイス国立銀行とノルウェー銀行が金融政策会議を開催する。両国ともに、金利を据え置くと予想されている。ノルウェーに関しては、ノルウェー銀行が金利の行く末に対してどのような調整を行うかという点についてある程度の不透明感がある。英国では、7月に前月比1.1%と異例の力強い上昇を遂げた自動車を除く小売売上高は、8月に関しては前月と変わらずと予想されている。しかし、それでも8月の前年比は、3.1%から3.2%まで上昇し、消費者における持続的な回復力を示すと予想される。小売売上高は、英国経済における明るい側面の一つであることから、この指標は注意深く観察される可能性が高い。米国の8月の中古住宅販売が発表される。その直後に、8月のフィラデルフィア連銀景況指数とコンファレンス・ボード先行指標が発表される。
マーケット
EUR/USD
• EUR/USDは、FRBが債券買取プログラムを850億ドルで据え置くと決定したことを受けて、急騰し、続けて3つのレジスタンス水準を突破した。欧州の午前中に、同ペアは、1.3517(S1)のサポート水準を若干上回って推移し、ロング保持者による巻き返しがあれば、2月の高値である1.3706(R2)に向けた動きにつながるだろう。別のシナリオでは、レートが上昇トレンドラインから遠く離れて推移しているため、その水準に向けた調整が生じる可能性はある。
• サポートは、1.3517(S1)水準に見出され、1.3448 (S2)と1.3400 (S3)がこれに続くだろう。
• レジスタンス水準は、1.3580 (R1)の水準にあり、1.3706 (R2)と1.3846 (R3)がこれに続くだろう。最後の2つは日足チャートに見出される。
EUR/JPY
• EUR/JPYは、オーバーナイトセッション中に上昇し、132.63の水準(昨日のレジスタンス)を上方突破した。現在、同ペアは、この水準と133.34(R1)のレジスタンス水準との間で推移している。買い圧力が価格を押し上げ続ければ、強気筋が133.34(R1)水準を試すと予想され、これを明らかに上方突破すれば、133.74(R2)と134.23(R3)水準に向けてさらに推移するきっかけとなるだろう。その上、レートは、右肩上がりのチャネルに突入しており、20期間移動平均と200期間移動平均のいずれをも上回って推移しているため、さらなる上昇の動きの可能性が高まっている。
• サポート水準は、132.63 (S1)にあり、131.70 (S2)と130.96 (S3)がこれに続くだろう。
• レジスタンスは、133.34 (R1)に認められ、133.74 (R2)と134.23 (R3)がこれに続くだろう。最後の2つは日足チャートに見出される。
EUR/GBP
• EUR/GBPは再度下落し、0.8355(S1)のサポート水準を再び試した後、回復した。現在、同ペアは、0.8423(R1)水準に向けて推移しており、この水準を明らかに上方突破すれば、新たな上方への調整の最初のシグナルになる可能性がある。調整局面の始まりの公算が高まる場合には、この水準の突破と共にMACDが強気な領域に入ることになるだろう。
• サポート水準は、0.8355 (S1)に認められ、0.8323 (S2)と0.8260 (S3)がこれに続くだろう。最後の二つは、日足チャートに見出される。
• レジスタンスは、0.8423 (R1)、0.8453 (R2)、0.8503 (R3)に見出される。
金
• 金は上昇して1368(R1)水準を試し、2つのレジスタンス水準を連続して突破した。現在、価格は、下落方向に動いており、これまでのところ、前述のレジスタンスの上方突破に失敗していることから、金の次のトレンドのある局面に関して何等かの予想を行うには、ボラティリティーが低下するのを待つ必要があると考えられる。
• サポート水準は、1337(S1)に存在し、1305 (S2)と1271 (S3)がこれに続くだろう。
• レジスタンスは、1368 (R1)水準に認められ、1394 (R2)と1415 (R3)がこれに続くだろう。
原油
• WTIも、FRBの決定を受けて上昇し、最近の下落から一転して回復した。本原稿執筆現在において、価格は108.85(R1)の強力なハードルでレジスタンスを見出しつつあり、この水準を明らかに上方突破すれば、110.58(R1)水準を目指すだろう。しかし、高値も安値も低下し始めていることから、WTIは、下落トレンドにあるとみられる。その他の指標からは、何ら方向性のある動きを確認することはできないため、この状勢が完成されるのを待つ必要があるだろう。
• サポート水準は、106.71 (S1)、105.23 (S2)、103.44 (S3)に存在する。
• レジスタンス水準は、108.85 (R1)にあり、110.58 (R2)と112.14 (R3)がこれに続くだろう。
通貨レートベンチマーク - 今日の勝者と敗者
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