12日の欧米株式市場は、高値警戒感やロシア・ウクライナ情勢を受け総じて上値の重い展開となった。ただ、ファンダメンタルズ改善期待を背景に米国株式は取引後半に下げ幅を埋める展開(ナスダック総合は前日比+14.58ドル高で終了)となったことで、米金利も反発。米株&金利の動向は米ドルの買戻しを誘発しドル円はNY時間に115.74レベル、ユーロドルは1.2419レベルまでドル買いが進行した。
また、ポンド売りも昨日のドル買戻しを支援した。この日公表された英四半期インフレ報告では、欧州経済の先行き不透明感や低い賃金上昇率を理由に経済成長とインフレ見通しが下方修正された。これによりイングランド中央銀行(BOE)による早期利上げ観測が後退。ポンドドルは1.5940レベルから1.5775レベルへと急落した。また、対円&ユーロでもポンド安の展開となった。
ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁12日、現行の緩和政策が期待された効果を発揮しなければ、「非伝統的措置を含む他の措置を打ち出す可能性がある」と指摘。最新の経済予測が公表される12月理事会で、ECBが緩和強化に乗り出すための布石とも取れる直近の言動は、今後もユーロ相場を圧迫しよう。また、英インフレ報告でBOEによる早期利上げ観測もここにきて急速に後退。
欧州通貨売りがドル相場を支援する構図が、今後鮮明となろう。ただ、株高トレンドが崩れない限り、ユーロ円やポンド円の下落幅は対ドルと比較し限定的となろう。
【比較チャート】
・2014年5月:100
・赤ライン:ポンドドル
・青ライン:ユーロドル
このチャートが示唆するところは、2014年以降の外為市場におけるメインテーマが、金融政策であるということ。
5月以降、両ラインが下落トレンドを辿っていることは、米金融引き締めが意識されドルロングを構築しようとする動きが加速している事を示唆。
一方、赤ラインと青ラインの「かい離」は、英国と欧州の金融政策のコントラストを示している。
昨日の英四半期インフレ報告でBOEの利上げ時期は2015年後半になることが高まったが、ECBとは違い緩和の「出口」に近いポジションにいることに変わりはない。