6日のロンドンとNY外為市場はドル買い優勢地合いとなった。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は理事会後の記者会見で、域内の景気と物価の下振れリスクを指摘。その上で必要とあれば追加措置に講じる姿勢を示した。この発言を受けユーロドルは1.2364レベルまでドル高が進行。ユーロドルの動向は他のドルストレートにも波及し、資源国&新興国通貨も対ドルで軟調な地合いとなった。
また、ドラギ発言はユーロドルの下落とともに主要な欧米株式市場での株高要因ともなったことで、ドル円はNYタイムに再び115円乗せに成功。115.22レベルまで上昇後は上値が抑えられるも、115円台を維持したまま本日の東京時間を迎えている。
ユーロ圏のインフレ率は2012年後半に頭打ちとなり、2013年春以降からは目標値である2.0%を割り込む状況が続いている。そして直近の消費者物価指数(HICP)は前年同月比でわずか0.4%にとどまっている。ドイツ経済の失速と南欧諸国の景気低迷といった内憂に加え、中国の景気減速懸念や東欧の地政学リスクといった外憂も鑑みるに、昨日のドラギ発言は、近い将来において量的緩和(QE)に踏み切るシグナルを送ってきたと考えられる。
この点に関する次の焦点は、12月のECB理事会となろう。ECBサイドから最新の経済予測が公表されるタイミングで量的緩和導入を決定する可能性があろう。年内の導入を見送ったとしても、来年はじめの導入に向けたシグナルを発信してくる可能性もある。どちらにせよ、ECBによる緩和強化観測は今後も外為市場で意識され、ユーロ相場の圧迫要因となり続けよう。特に米欧の金融政策のコントラスト(方向性の違い)が今後鮮明になっていくことを想定するならば、ユーロドルは引き続きベアトレントを想定したい。テクニカル面では、下図チャートの長期サポートラインをトライする可能性が高まったと考える。
ユーロ円も12月の理事会に向け上値の重い展開が想定される。ただ、ドル円の上昇や株高が維持されれば、ユーロ売り圧力が相殺されることで、目先のサポートポイント週足の一目/雲の下限(今日現在135.32レベル)は維持すると想定する。
< Today’s Outlook -強い雇用統計となれば「株高+米金利上昇+ドル高」に>
本日最大の焦点は、日本時間22時30分に発表される米雇用統計(10月)だろう。雇用増&失業率の低下だけでなく賃金の上昇も確認されれば、将来のインフレ上昇と金融引き締めが意識され、米金利への低下圧力はさらに後退しよう。外為市場ではドル高がさらに加速しよう。
問題は米国株式の動向だろう。このレポートで何度か指摘してきたが、強い米経済指標は早期引き締め「懸念」を台頭させるリスクがある。しかし、今回の雇用統計が強い内容となっても、その「懸念」が台頭するリスクは低いだろう。日銀が追加緩和に踏み切り、ECBがそれに追随する可能性が高まっているためだ。新たな緩和マネー供給源出現によって、株式市場における緩和中毒症状は抑え込まれよう。このタイミングでの強い雇用統計は、株高をも誘発するリスク選好要因と捉えたい。
【Technical analysis highlights】
ドル円
レジスタンス
116.50:レジスタンスポイント
116.00:レジスタンスポイント
サポート
115.00:サポートポイント
114.50:サポートポイント
米雇用統計が強い内容となれば、リスク選好(株高+米金利上昇)を背景に116円台乗せを想定したい。116円台への攻防へとシフトした場合は、厚いビッドとオプションバリアが観測されている116.50レベルが次の焦点として浮上しよう。尚、116.00レベルにも厚いビッドとオプションバリアの観測がある。
一方、下値は115円台の維持が焦点となろう。114円台の攻防となった場合は、114.50レベルでの攻防に注目したい。
ユーロドル
レジスタンス
1.2577:11月4日高値
1.2500:レジスタンスポイント
サポート
1.2350:サポートポイント
1.2300:サポートポイント
1.23台の維持が焦点。上述の通り米雇用統計が強い内容となれば、1.23割れを想定しておきたい。一方、上値は1.2500がレジスタンスとして意識される可能性があろう。
尚、朝方のオーダー状況だが1.2350にはビッド、1.2300にはビッドの他オプションバリアが観測されている。オファーは1.2550レベルに観測されている。