前回に引き続き、【後編】では www9945氏の日常から投資手法や銘柄選びの極意を紹介していく。投資家に必要なスキルや難しい局面を乗り越えるためのテクニックなど、より深いテーマについても聞いた。
●www9945氏の投資手法と銘柄選び
・投資手法について教えてください
現在は、外国株を含めて120銘柄ほどを保有しています。ただ上位の約10銘柄に資金の7〜8割を集中させて信用取引を行っています。残りの110銘柄は安定した収入を確保するための高配当銘柄や優待狙いとかの現物になります。
信用取引は半年間とかで期日がありますから、そこで一回、現引きするとか、売るとかして、また半年後に現引きすることを繰り返して土台を作るピラミッティングをしていきます。それぐらいの期間が経過すると株価が上昇している銘柄が結構あるので、徐々に利確していきます。それで得たお金は、高配当の外国株とか日本の高配当の株に回すみたいな形で配当収入を増やすこともしています。
・信用取引で勝負する銘柄はどのように選んでいますか?
普段の生活や仕事場など実生活の中からヒントを得て、四季報という株の知識と結びつけることで、今後成長が見込まれる銘柄を選んでいます。現在主力としている業務スーパーの神戸物産(3038)や人工関節の日本エム・ディ・エム(7600)もそうですね。最近だと、流行りのタピオカ関連とか、あとハイボールと何かというコンセプトのお店も増えてますね。例えばハイボールとたこ焼きとか。この前セミナー帰りに、「肉汁餃子製造所 ダンダダン酒場」というお店にものすごい人が並んでて、ハイボールと餃子って感じなんですが。これをスマホで「肉汁餃子製作所 株価」で調べれば、NATTY SWANKY(7674)っていう銘柄が出てくるんですよ。最近上場したばかりで、チャートはぐずぐずですが、これが結構業績いいんですね。こんな感じで、街角ウォッチしながら得た体感と四季報など株の知識を結びつけた上で、上昇が期待できる銘柄を選んでいます。
もう一つは、漁師みたいにセクターに網をかけて銘柄を選定してます。最近は、資産バリュー系が上がるんじゃないかと思って、「株探(かぶたん)」を使い、「含み資産」で検索して、週足で見て横か上に行っている銘柄を100株、200株単位で 7 銘柄試し買いしました。その後、弱い下向きな銘柄を切って、強い銘柄に100株でも200株でもいいから移動させていく絞り込み作業をしています。私が毎日する売買は、このような「入れ替え」なんですけどね。本当は大きく動かしたいですが、リスクを最小限にするためにもチョビチョビ動かしているわけです。
・日々の取引では、どのようなツールを使いますか?
普段はSBIのアプリを使ってます。見ているのは、「出来高」とモメンタム系の「スローストキャスティクス」と「MACD」です。ロウソク足のメインは月足、次が週足、最後に日足の順番で見てます。
アプリには、オフ会とか四季報とか街角ウォッチとかで気になった銘柄を入れといて、足取りを見てます。私はもともとテクニカル出身なので、暇さえあればチャートを見てます。特にじわじわ上がっているのが大好きですね。理由はいつ入ってもいいから。あと、順張りのピラミッティングがしやすいから。
●投資家に必要なのは「想像力」と「常識力」 仮想通貨は時期を待て
・投資家にとって重要だと思うスキルは何ですか?
お仕事だと現在の事象に対して過去から事例をアウトプットしますよね。ただ株は違うんですよ。株は過去のことを踏まえなくちゃいけないですが、現在から未来に対してシナリオを描く「想像力」、そして、なんかおかしいという「常識力」が必要なんです。
例えば、オリンピックが決まったことで晴海とか豊洲の土地が上がるかもしれないとか誰だってわかると思います。あと、人口動態をふまえて、高齢者関連銘柄が上がるとか。あと、10月に消費税が上がるからデフレ銘柄がきそうとか、そういうことは容易に想像できるわけですね。
あと、ビットコイン暴騰したじゃないですか。あれは、正常ではないと思います。値上がり率は1600年代オランダであったチューリップバブル以上で投機で歴史的に上がった。常識で考えたらおかしいですよね。それが去年あたりダウントレンド入ってて買っちゃいけないんですよ。いくら素晴らしいシステムだとしても、それと値動きは全く違いますから。あと、税金面であまりにも不利すぎる。FXが総合課税から申告分離課税で20%になったように、そこを待っても遅くない。だから様子見でいいですよ、とは初心者の方に言ったりしますね。
・おすすめの本、もしくは愛読書などありましたら教えてください。
私が好んで読んでいるのは、「勝負」に関する本が多いです。例えば、将棋の羽生善治さん、プロゲーマーの梅原大吾さん、プロ麻雀士の桜井章一さん。あと、サイバーエージェントの藤田晋さん。この人もすごいギャンブラーなんですよね。勝負の世界に生きている方々が、自分のフィールドの言葉で勝負について咀嚼してくれるので、ああそうだよなっていう共感を得られることが多いです。負けた時、スランプの時には、同じスタイルを貫いていくと、なんかきっかけがあって、そこで反転して、やっと凌げたみたいなことが書いてあるんです。私は最初の10年鳴かず飛ばずだったけど、やめていたら今はなかったと思えますね。なので、こういった人たちの書いた本は、読まざるを得ないなと言うか、読みたくなりますよね。
●専業投資家www9945氏の日常
・一日のトレードの様子について教えてください。
普段は午前中に株価の値動きをよく見ています。後場に30分ぐらい見て13時からは池袋とか、アキバとか赤羽あたりの喫茶店で電子書籍を見ながら、株を見てますね。ずっと家の中にいると運動しないし、決算シーズンだとそのまま決算見てしまうので。それで、外に出る習慣にするために都バスと電車の定期を買っているんですよね。
・取引をしない休日はどんなことをしていますか?
休日は家にいることが多いんですけど、私は国内旅行が好きで、特にレンタカーで海岸線沿いを走るのが好きですね。最近は月に2回ぐらい行ってます。この前は、屋久島と種子島に行ってきましたけど。地方にある好きな遺跡とか古墳とか博物館とか、滝を見にいきますね。
●優待だけでは不十分、厳しい局面を乗り越える打開策
・投資初心者の方に向けて、うまくいかない時の打開策などのアドバイスがありましたらお願いします。
最近、初心者の方で自分の好きな銘柄を主要銘柄として買って塩漬けしている人が多い気がします。優待銘柄をロングホールドして、含み損は目をつぶって、10年ぐらい経ってやっと優待と配当金をもらってチャラになるぐらい含み損を抱えているような感じです。でも、それだけではちょっとまずいかなと感じています。
例えば、「損切りクロス」と言って、保有銘柄をいったん売って、同じ日に信用買いし、翌日に現物買いして損を出して自分の銘柄の買い単価をフラットにするべきですね。含み損という形で証券口座を見ると取引が嫌になるし、塩漬けにすると資金が回転しないので。もしくは現金化して、また違った、例えば自分が得意な分野、もしくは仕事に関連する銘柄などに投資するのがいいと思います。今、個別銘柄はじわじわ下がっているか横ばいが9割以上ですが、週刊ゴールデンチャートなどを見ると、残りの5〜10%ぐらいは、じわじわ上がっているんです。
そして頭に入れておいて欲しいのは、株価の構成要因が4つあることです。まずは、セクター、テクニカル、あと地合い。最後にやっと個別銘柄の情報なんです。だから、通常1/4しかない個別銘柄の株価構成要因に対して、あとの75%を考慮しないとやはり負けてしまいます。このようなアプローチは、チャートを見たり、四季報を読み解いたりと、単に優待を買って持っておくアプローチとは真逆ですが、やはり長い時間かけてやっていく必要はあると思います。
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