お笑い芸人を目指したが断念し、その後サラリーマンを経験したのち投資家へ転身したむらやん氏。
インタビュー最終回となる今回は、使用する情報収集ツールやおすすめ書籍、またはこれから投資を始める方へのアドバイスなど、より実践的なテーマについて聞いた。
●情報取集でTwitterを活用する事の利点や、取引時間以外の過ごし方
―トレードをされる際の情報収集はどのようなツールを使ったり、見たり読んだりしていますか?
多いのはTwitterが多いですね。株をやっている人は凄くTwitterを利用する率が高いんですよ。様々な経済メディアがありますけど、それを一つずつアクセスするのは凄く手間なのですが、注目すべき記事をTwitter上で皆さんシェアしてくれるんですよね。Aさんはこの記事が気になるからこれ、Bさんはこれ、Cさんはこれみたいに、様々なメディアの注目記事がTwitterを見れば並んでいる利点があるんです。
Twitterの中にはトレードが凄く上手な投資家が多いので、この人はこの銘柄に注目しているみたいなのも学べます。一つの経済メディアに10個記事が並んでいても、上手い人がシェアする記事などを見て、「ああ、あの人はこの記事をピックアップするんだ」っていう観点でも勉強になります。その他、普通のニュースメディアや証券会社の今日のニュース一覧も見ますが、やはりTwitterが多いですね。
後は日経新聞社で東証の適時開示をランキング形式で公開しているページがあるんですよ。どれが一番読まれているか、この3時間で読まれたランキングが出ているので投資家がどの開示を気にしているかというランキングをは見たりとかはしています。
―取引をされている時間以外はどのような過ごし方をされていますか?
一生懸命頑張っていた時もあったんですが…(笑)。その時はずっとチャートを見ていました。3時を回った後はちょっと休憩してご飯食べて、寝るまでの間に銘柄を見たりニュースを見たり、これは明日動きそうだとか、これ近々上方修正出そうだなとか、いっぱい考えて予想していました。最近は何もしていないです(笑)。これはダメですね、絶対やった方がいいんですけど、純粋にサボってます(笑)。だから反面教師にしてほしいですね。
株って結局、自分が体験したバックデータの積み重ねの期待値に高い方にかけるっていう、ゲームという表現を使うと変かもしれませんけど、そういうものだと思っています。「株を教えて下さい」みたいなことをよく言われるんですけど、体験したデータはその方はゼロじゃないですか。体験したデータがないと絶対に伝わらないんですよ。
例えば、僕がミシュランの星付きレストランのシェフに「最強の魚料理を今日中に作りたいんです」って言っても「いやちょっと無理やわ」ってなるじゃないですか。魚を切ったこともないのに、そのプロフェッショナルな方から聞いていきなりできるわけがない。トレードの時間以外に自分の経験を積み重ねていく為にも、チャートを毎日見てこの銘柄はこういうのがあって、こういう材料があるから今日はこう動いたんだっていうのをどんどん詰め込んでいって、できたらメモ取ったりするのが一番いいんじゃないでしょうか。
やっぱり経験を積まないと安定して投資はできるようにならないと思います。Twitterで株の煽り屋みたいな集団がいるんですけど、「何々という銘柄最強だし、こういう材料があるみたいな話を信じてしまって買う人とかはいます。そういう話を信じて買ってしまう人は言いなりになってしまっているので、勝てないですね。やっぱり自分で経験して積み重ねないと厳しいかなと思ってます。だから、今の僕を反面教師にしていただきつつ、空いた時間は自分の努力に当てて充てていただければと思います。
●これから投資投資を始める方はまず「日経レバレッジETF」で練習を
―これから投資を始める方々に対してアドバイスがあるとしたらどんな事をお伝えしたいですか?
最近僕がオススメしているのは、日経レバレッジETFっていうETFがあるんですが、日経平均株価が上がれば連動して上昇して、下がれば連動して下落するというシンプルにいえば株みたいなものがあるんですよ。1株から、それも2万円程度から買えるんですが、まず初めに株取引を始めてみたいなと思った時は日経平均株価を予想してみて、連動する日経レバレッジETFを買ったり売ったりするところから始めてみることをオススメします。
1株分であれば1日どれだけ動いても500円、1000円なので、まずは株っていうのはこういうものなんだなとか、注文の方法に慣れたり、値動きで自分の予想と当たる当たらないを確認してみるたりするとか。とにかくリスクが少ないやり方で慣れるのが大事です。バーチャル取引をすればいいという人もいますが、やっぱりバーチャル取引はあんまり見なくなったり、やらなくなったりします。
でも自分のお金でやれば、たった100円や200円の上下だったとしても、自分の予想した動きは当たったかなってスマートフォンで確認するようになる。そうやって練習する中で、自分の予想が当たってたり、慣れてたりしてくれば、個別株に移って、個別株の値上がりランキング上位にあるような20%上昇みたいな銘柄を当てれば大きく儲かるみたいな感じがいいですね。いきなり個別株を始めると危ないのでまずは日経レバレッジETFを1株から始めて、実際に自分の予想が当たる、外れる、さらに注文方法の練習等で経験を積んでいくのがいいのではないかなと思います。
―オススメの書籍等はありますか?
「ゾーンー相場心理学入門(著:マーク・ダグラス)」と「デイトレード(著:オリバー・ペレス)」です。どちらも古い本なんですが、心理について書かれているので今読んでも参考になります。
どういう気持ちで投資をしていますか、なぜこの株は上がって下がるのか、裏側までちゃんと知っていますか、実際これだけ下がった時にあなただったら損切りするか放置するかみたいな話が載っています。相場というのは自分一人ではなく、世界中のあらゆる人が集まって取引をしているので、株は買われたら上がる、売られたら下がりますが、実際にはどちらが多いのかみたいなことにも触れられていて、大変参考になる投資の心理の本です。
●投資家に必要なのは柔軟な考え方。完璧主義は禁物
―投資家に向いている人はどういう人だと思いますか?
完璧主義じゃない人、柔軟な人ですね。僕がよく説明しているのは、1+1って普通2じゃないですか。でも相場の世界は1+1=5なんですよ。ちょっと意味わからないじゃないですか(笑)。株を知らない人に同じ事を言っても「何言ってるのかな?」って思われるでしょうけど、相場ってこの努力とこの努力をしても2にならない。
僕がサラリーマンしていた時、結果を出すまでのプロセスが全てパッケージ化しされていたので、やる事をシンプルにやっていれば1+1は2のようになりますが、相場は違う。相場の世界では1+1は5っていう結果がずっと過去に出ているから、だから相場の公式は1+1は5なんですよ。通常の世界では1+1は2。でも相場の世界では1+1は5。「理解できない、納得いかない」という人は向いてないと思います。
昔のデータを見れば、こんな時にこんな事でこうなるみたいな事なんですよね。トランプが就任すれば円高になるなんて言われていたのに、でも円安になっている。そういった1+1は5みたいな事が起きているので、もしかしたら7かもしれないし、1かもしれないし、データを見て予測して取引する。この先の相場に答えなんてないし、誰も知らない。だから完璧主義で、自分の考えに固執してしまう方っていうのは相場の負のスパイラルに陥りやすいかもしれない。「俺は今まで勉強でいつも100点だし、スポーツ万能、会社に入って役職一気に上がって人望も厚い」なんて言っても、それはそっちの世界の話であって、そっちで結果出ていてもそれは全然関係ない。成功体験にしがみついて、それを変えられない人はあんまり向いていない。
僕自身も、最初結構苦労しました。「なんでかな」みたいな理不尽な事ばかり起きる。「1+1は5」とみんな言っているなら「じゃあ5でいいか」みたいなノリがいい人が向いているかもしれません(笑)。答えのない世界を楽しめる人が向いていると思います。
―柔軟な人。損切りができる人はそういう人なのでしょうね。
そうですね。買って絶対上がると思ったけれども、次の日株価を見たら「うーん違う、やっぱり売り」とかって短期の個人投資家は普通にします。
例えば、完璧主義の方の例を挙げるとして、一つの会社を調べ上げて、業績が凄く良くて、来期も儲かる会社で、今のPERとかPBRで考えて色々な計算をすると安すぎると思って買ったとします。でも株って全体の相場の雰囲気に流されたりもするので、だらだら下がり続けたりする。「でも俺はあれだけ調べた、絶対に間違いない、絶対いつかどうにかなる」って思っていても、業績がいきなり変化して、更にズドンと落ちたりする。そんな例もあったりするので、自分に過信しすぎるのは良くないと思います。
●相場を始めてた良かった事―「株を通じて得た出会い」
―相場をやってきて良かった事や、相場から学んだ事ってありますか?
まずは生活できている事がありがたい、当然いい時もあれば悪い時もあるので、負けすぎて辛い時もあるのですが(笑)。それ以外には巡り会う方がめちゃくちゃ面白い人が多いんですよ。僕は外に出て様々な人と出会って、話を聞いたりするのが好きなので、老若男女、年齢関係なく皆さんと仲良く喋れるのが面白い。株のテーマ一つさえあれば、何喋ればいいか困る事はない。「あの時の相場で凄く損してさ」って語っているおじいちゃんに「僕もあの時やられたんですよ」なんて言えばもうマブダチみたいなもの。
投資家は凄く人間ができている方も多いですね。自分のお金の管理を自己責任でずっとやっているので、優しくて人間ができている人が多い。そういう方とどんどん友達になったり繋がったりできたのは僕の財産だと思っています。例えば同じ業界の会社の社長さんが4、5人集まれば仲がいいけどライバル。でも相場の世界はマーケットが大きすぎてそういうパイの取り合いじゃないんですよね。「あれ上がると思った」、「下がると思った」っていうのをゆとりを持って喋られるので、利害関係が無いから付き合いやすい。
変わった人、優秀な人も多くて、様々な体験をされたから株を始めた方もいます。格闘ゲームで日本1位になったとか、某有名ゲームで世界上位になったとか、そういう特殊な人もいたり、弁護士やお医者さんまで。そういう投資家の人たちもいれば、株をやった事なくても興味を持っている人はたくさんいるんですよね。僕が好きなアーティストさんや芸人さんとか仲良くさせてもらっているんですけど、株をきっかけに繋がったんですよね。「どうやってやるのか教えてほしい」って。銘柄言って損したら悪いので、ある程度までは教えたりしていますが…(笑)。ですから、株の世界って本当にいい世界だと思います。
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