前回のあらすじ:大衆の心理をつかみ、ときに極端な発言で「市民の代弁者」となり、庶民の心をとらえてきたトランプ氏。
親友・ニュート・ギングリッチ氏は、このたび書き上げた、トランプ氏の「解説本」となる「UnderstandingTrump(トランプを知る)」のなかで、庶民感覚をとらえるのに長けている理由は、両親はトランプ氏を軍師学校へ学ばせるなど、世の厳しさを教えていたからだという。
本文は、弊コラムニスト・呉芬湘の書評。
■無知を認め、必要な時に学ぶ
トランプ大統領を多面的にとらえてみると、建築業者としては、コストをカットし工期を短縮できるならば、建築現場の作業者だろうがエンジニアだろうが、あらゆる人の意見に耳を傾けるという、柔軟で気さくな一面も持っている。
経営者として見ると、トランプ氏と、ウォールストリートの金融マンやワシントンの政治家との間に大きな違いがあることが分かる。
トランプ氏は、ビルを一棟建設して販売するという「現物取引」を習慣にしているが、後者は分厚い書類にたくさんの公式や理論を並べてプロジェクト完成後これだけの利益が得られるという「紙上の空論」に満足する。
政治家としては、外交や内政のかじ取りをするうえで、トランプ大統領は知識を単なる問題解決のための道具としか考えていない。
知識をひけらかし、虚栄心を満たそうとは思っていないことが見て取れる。
例えば、大統領選の最中に、あるテレビ局のキャスターがトランプ氏に中東の過激集団のリーダーの名前を質問した時のことだ。
普通の候補者なら適当にお茶を濁すか話題を変えるところだが、トランプ氏は率直に「知りません」と答えた上で、このように続けた。
「彼らに会ったこともないからね。
もし(当選以降も)彼らがまだ健在だったら、彼らのことについては(知識のある)あなたよりも詳しくなるだろうね」「時期が来たら、あなたより私の方が詳しくなりますよ。
それには大した時間はかからないはずです」
仮にも大統領候補者がここまで率直に無知を公言するなど、エリートには到底理解できない。
高等教育を受けた弁護士や著名人、ジャーナリストたちが、誇りに思っているのは、役にも立たない知識をたくさん持っていることだ。
トランプ氏は彼らと全く逆だ。
大統領はおそらく、華麗に高論を垂れるために必要な知識は持ち合わせていないだろう。
だが、その知識がひとたび必要になれば、それを吸収して身に着けることのできる人物だ。
そのため米国の有権者の多くは、トランプ氏が一部の公務細則や外交政策に疎いことを気にしていない。
■トランプ大統領を目の敵にするエリート層
一般市民はトランプ大統領を理解できるが、エリートたちには分からない。
そのため、エリートたちは今でもトランプ大統領の「無知」と「粗野」にこだわり続けている。
左派のエリート層は、大統領選でトランプ勝利が決定した時、普段の冷静さをかなぐり捨て一様に怒りをあらわにした。
その様子は、さながらトランプ氏個人にうらみでもあるかのようだった。
筆者自身はトランプ氏と会ったことはなく、私の見方はこの1年半に及ぶトランプ氏の選挙運動と最低限の常識で判断した主観にすぎない。
人の考えはあいまいで移ろいやすく、偽りがあることも承知している。
これらは全ての人間の持つ欠点だ。
完璧な人間などどこにもいないが、政治家は通常、言動を慎み、醜悪な考えなどおくびにも出さない。
それと対照的に、トランプ氏の欠点はぺらぺらとしゃべりすぎることだ。
思ったことをすべて口に出さないと気が済まない上、それを今度は、メディアが限りなく誇張する。
選挙期間中にもトランプ氏は、非常に頻繁に発言し、毎日の演説や取材に対応しながら、真夜中でもスマホを片手にツイートしていた。
トランプ氏の口から出た言葉が一字一句間違いのないものだと期待できるだろうか。
大統領選の最中にトランプ氏の過去のわいせつ発言が録音されたテープが公開されたが、めったに謝罪しないことで知られるトランプ大統領も、以前の自分のこういう発言は不適切だと事実を認め、より善良な人間になりたいと表明している。
私は、これがトランプ大統領の本心だと信じている。
大統領という高い地位にある人間の品格は、実業家のそれよりも高くあるべきだからだ。
私は、トランプ大統領が大統領選に出馬すると決定したその日に、その準備ができていたと思っている。
またトランプ大統領がかつて性犯罪を犯したという噂があるが、青年時代からメディアの注目を集めてきたトランプ氏に本当にこうした事実があれば、メディアが総攻撃を仕掛けて一挙手一投足を追い続け、とっくにつるし上げられているはずだと考えている。
トランプ大統領にこれあれの欠点があることは確かだ。
だが、ギングリッチ氏が今年1月、ワシントンのシンクタンク「ヘリテージ・ファウンデーション」での「トランプ主義」に関する講演会で指摘したように、トランプ大統領はそもそも、豪邸に住んで民衆からかけ離れた特権階級のような生活を享受できる立場にあったにもかかわらず、自ら政界という畑違いな場に足を踏み入れた。
メディアが悪辣な攻撃を仕掛けてくることも分かっていたはずだが、トランプ氏はそれらを、米国市民が復興への道をたどるために支払われるべき代償だと思っている。
ギングリッチ氏は、「トランプ大統領は典型的な米国の伝統を体現している。
ワシントン、ジェファーソン、セオドア・ルーズベルト、フランクリン・ルーズベルト、レーガンといった歴代大統領は全て、米国市民を信じ、励まし、米国人を率いて強大で根強い利益集団を通り越して勝利を手にしてきた」と語り、今後への期待を表明している。
(翻訳編集・島津彰浩)
【ニュース提供・大紀元】
親友・ニュート・ギングリッチ氏は、このたび書き上げた、トランプ氏の「解説本」となる「UnderstandingTrump(トランプを知る)」のなかで、庶民感覚をとらえるのに長けている理由は、両親はトランプ氏を軍師学校へ学ばせるなど、世の厳しさを教えていたからだという。
本文は、弊コラムニスト・呉芬湘の書評。
■無知を認め、必要な時に学ぶ
トランプ大統領を多面的にとらえてみると、建築業者としては、コストをカットし工期を短縮できるならば、建築現場の作業者だろうがエンジニアだろうが、あらゆる人の意見に耳を傾けるという、柔軟で気さくな一面も持っている。
経営者として見ると、トランプ氏と、ウォールストリートの金融マンやワシントンの政治家との間に大きな違いがあることが分かる。
トランプ氏は、ビルを一棟建設して販売するという「現物取引」を習慣にしているが、後者は分厚い書類にたくさんの公式や理論を並べてプロジェクト完成後これだけの利益が得られるという「紙上の空論」に満足する。
政治家としては、外交や内政のかじ取りをするうえで、トランプ大統領は知識を単なる問題解決のための道具としか考えていない。
知識をひけらかし、虚栄心を満たそうとは思っていないことが見て取れる。
例えば、大統領選の最中に、あるテレビ局のキャスターがトランプ氏に中東の過激集団のリーダーの名前を質問した時のことだ。
普通の候補者なら適当にお茶を濁すか話題を変えるところだが、トランプ氏は率直に「知りません」と答えた上で、このように続けた。
「彼らに会ったこともないからね。
もし(当選以降も)彼らがまだ健在だったら、彼らのことについては(知識のある)あなたよりも詳しくなるだろうね」「時期が来たら、あなたより私の方が詳しくなりますよ。
それには大した時間はかからないはずです」
仮にも大統領候補者がここまで率直に無知を公言するなど、エリートには到底理解できない。
高等教育を受けた弁護士や著名人、ジャーナリストたちが、誇りに思っているのは、役にも立たない知識をたくさん持っていることだ。
トランプ氏は彼らと全く逆だ。
大統領はおそらく、華麗に高論を垂れるために必要な知識は持ち合わせていないだろう。
だが、その知識がひとたび必要になれば、それを吸収して身に着けることのできる人物だ。
そのため米国の有権者の多くは、トランプ氏が一部の公務細則や外交政策に疎いことを気にしていない。
■トランプ大統領を目の敵にするエリート層
一般市民はトランプ大統領を理解できるが、エリートたちには分からない。
そのため、エリートたちは今でもトランプ大統領の「無知」と「粗野」にこだわり続けている。
左派のエリート層は、大統領選でトランプ勝利が決定した時、普段の冷静さをかなぐり捨て一様に怒りをあらわにした。
その様子は、さながらトランプ氏個人にうらみでもあるかのようだった。
筆者自身はトランプ氏と会ったことはなく、私の見方はこの1年半に及ぶトランプ氏の選挙運動と最低限の常識で判断した主観にすぎない。
人の考えはあいまいで移ろいやすく、偽りがあることも承知している。
これらは全ての人間の持つ欠点だ。
完璧な人間などどこにもいないが、政治家は通常、言動を慎み、醜悪な考えなどおくびにも出さない。
それと対照的に、トランプ氏の欠点はぺらぺらとしゃべりすぎることだ。
思ったことをすべて口に出さないと気が済まない上、それを今度は、メディアが限りなく誇張する。
選挙期間中にもトランプ氏は、非常に頻繁に発言し、毎日の演説や取材に対応しながら、真夜中でもスマホを片手にツイートしていた。
トランプ氏の口から出た言葉が一字一句間違いのないものだと期待できるだろうか。
大統領選の最中にトランプ氏の過去のわいせつ発言が録音されたテープが公開されたが、めったに謝罪しないことで知られるトランプ大統領も、以前の自分のこういう発言は不適切だと事実を認め、より善良な人間になりたいと表明している。
私は、これがトランプ大統領の本心だと信じている。
大統領という高い地位にある人間の品格は、実業家のそれよりも高くあるべきだからだ。
私は、トランプ大統領が大統領選に出馬すると決定したその日に、その準備ができていたと思っている。
またトランプ大統領がかつて性犯罪を犯したという噂があるが、青年時代からメディアの注目を集めてきたトランプ氏に本当にこうした事実があれば、メディアが総攻撃を仕掛けて一挙手一投足を追い続け、とっくにつるし上げられているはずだと考えている。
トランプ大統領にこれあれの欠点があることは確かだ。
だが、ギングリッチ氏が今年1月、ワシントンのシンクタンク「ヘリテージ・ファウンデーション」での「トランプ主義」に関する講演会で指摘したように、トランプ大統領はそもそも、豪邸に住んで民衆からかけ離れた特権階級のような生活を享受できる立場にあったにもかかわらず、自ら政界という畑違いな場に足を踏み入れた。
メディアが悪辣な攻撃を仕掛けてくることも分かっていたはずだが、トランプ氏はそれらを、米国市民が復興への道をたどるために支払われるべき代償だと思っている。
ギングリッチ氏は、「トランプ大統領は典型的な米国の伝統を体現している。
ワシントン、ジェファーソン、セオドア・ルーズベルト、フランクリン・ルーズベルト、レーガンといった歴代大統領は全て、米国市民を信じ、励まし、米国人を率いて強大で根強い利益集団を通り越して勝利を手にしてきた」と語り、今後への期待を表明している。
(翻訳編集・島津彰浩)
【ニュース提供・大紀元】